スキルの知識
そうしてイアスは実体化させた弓を構え、さらに矢を実体化させる。
そしてその矢を引いて、正面に放った。
その矢の放たれた先には、猪がいて、その猪に見事矢は命中する。
そしてイアスは「あれ今日の晩飯な」と言って、説明を再開した。
「この弓は神造兵器って言ってな。実はかなりすごい奴だ。その名の通り、神が作った武器、武器の一線を超えて、もはや兵器とまで呼ばれる様になったもんだ」
それを聞いて彰人は、やっぱりこの人めっちゃ凄い人だった...と確信を持った。
そしてイアスは話を続ける。
「この世界には神造兵器が14個存在する。そのうちの一つがこいつだ。その14個の神造兵器はそれぞれ特別な効果を持っていてな。こいつの効果は保有者のマナ消費を大幅に軽減するって効果だ。そうだな俺のマナが100とするとそのマナは10000にまで膨れ上がる。そのレベルの代物だ。」
と口にし、イアスは猪を担いで、弓はまたその場から消えて行った。
「それじゃあもう少しで獣道だそこに入ったら薪を集めて野宿だ」
と言って歩きながら再び説明を始めた。
「そのおかげで、本来ならレアスキルじゃ絶対できないことを、できてるってわけだ。」
と一旦締めた。そして彰人がそこでまた質問を口にする。
「俺でもその神造兵器を獲得することは可能か?」
と聞いて、イアスはそれに対し、
「この世界にはまだ誰の手にも渡っていない神造兵器が3個ある。一つの国につきひとつだからな。その中で善政力のものは1つ。そこの国で一定条件を満たして、そこの神に認められればゲットってわけだ。」
彰人はそれを聞いて、内心、ああ、こりゃ無理だな。と思ったのだった。
そしてイアスは説明を続けた。
「最後にレジェンドスキルについてだ。俺のレジェンドスキルは炎と氷を自在に操れる。まぁそれだけの能力だやろうとすれば剣と剣がぶつかってできた火花で大爆発ってのもできる。まぁレジェンドスキルなんてのはそんなもんだ。その分野の頂点に位置するスキルだからな」
これには彰人も質問もなく納得だった。はじめ実験で手の甲を切った時にその凄さはわかっていたからだった。
そしてイアスはしばらく黙って歩き続けて、
「今度は質問なしか?」と彰人に逆に質問したのだった。
それを聞いて秋とは微笑し、
「質問あったら喋るだろ?」と返した。
それを聞いてイアスは、まぁそうかという顔をして、
「そろそろ今日は一旦休憩で野宿だな」
と言って少し獣道になってきたあたりで、道の横の森の中に荷物と猪を下ろした。
そして彰人に「こいつ捌いとくから薪3本でいいから持って来い」
と言って、手に矢を実体化させ、猪の腹部に矛先を当てた。
彰人は、それを見て少し目をそらし、森の中に薪を取りに入って行った。
そして彰人が薪を取って戻ってくる頃には、猪は丁寧に切り分けられていた。
そしてイアスは彰人が戻ってきたことに気づき、薪の一本をこちらに投げるように指示したので、彰人は薪をひとつイアスに投げた。そしてイアスは薪を地面に丁寧に置いて、何もないところに火をつけ、丁寧に切り分けられた猪の肉を、実体化させた矢に串刺しにし、火の周りに突き立てた。
そしてイアスは、「焼き上がるまでの間でお前のスキル見てやるよ。」
と言って彰人の背中に手を当てた。そして数秒火が燃えるパチパチという音だけが聞こえ、そこで数秒後、イアスが「炎だな。俺と違って戦闘に使うには少し難しいかもしれねぇな。そもそもスキルの使い方もわからねぇんじゃ話になんねぇもんな...」と言ってしばらく考えた。
そして肉が食べごろになる時にイアスが、
「よし、これからカイニスのとこに着くまで毎日俺が使い方教えてやるよ。」
と言って、そのあとなぜか少し照れくさそうに、「ほら、食えよ」
と言って矢に刺さった肉をこちらに差し出した。
そしてその肉を全て食べ終わった頃に、イアスが、
「手始めに、だ。この火、消してみろ。前世のお前がどうかはさておき、今のお前の体にはマナの通り道、マナロードってのがあるはずだ。お前の体はそれを一回も使ってなかったからな。まぁ要は麻痺してる状態だ。」
その話を聞いて彰人は、「じゃあ何回か使えば自在に使えるようになるってことか?」
という相槌を打ち、イアスは「その通り。」と言ってコツのようなものを教えてもらった。
そしていざ、彰人は火を消そうと、目を瞑って、手を火の方に向け、腕を力ませた。
そして彰人はそのままの状態をしばらくキープし、突然、彰人の脳裏に稲妻のようなものが走った。
すると、炎は消えこそしないものの、目で見て明確にわかるほどまで弱まった。
それを見てイアスは、少し驚いた顔で、
「やるじゃねぇかこの分にゃこの程度の火は一週間くらい練習すれば消せるな、お前筋あるぜ。」
と言って、嬉しそうに彰人の肩をポンポンと叩いた。
そしてイアスは、明日の朝は早いから、今のうちに寝とくんだな。
と言って、弱まった火を完全に消して、あたりは真っ暗になったのだった。
そして彰人は特にやることもないので、寝ようと思い、ショルダーバッグを枕がわりにし、仰向けに寝転がった。
するとそこには、息を飲むような絶景が広がっていた。彰人はそのあまりの美しさに、思わず。
「あかりがないだけでこんなに...」と呟いていたのだった。
彰人が見ていたのは、星空だった。澄み渡った紺色に、無数の星が煌めいていた。
彰人はその日眠るまで、その空をずっと眺めていたのだった。