弓兵との出会い
かくして確かに大冒険は始まったのだ。
しかし、始まったところで何をすればいいのかわからなかった。
当然と言えば当然なのだが、まぁ確かに時間は勿体無い。
そこで彰人は、まず例の能力は本当か、試してみることにした。
そしてそこらへんに落ちている木の枝の中から一本を拾い上げ、試しに手の甲を軽く切ってみた
すると驚くことに、その切れたはずの傷口は海の波の様に塞がっていく。
その光景を見て、思わず彰人は
「マジかよ...」と呟いてしまう。
まぁそれほど神秘的な光景だったのだ。
それでもすぐ我に帰った様に、森の中を歩き始めた。
そして木漏れ日が心地よかった大森林を抜けようと長らく散策するのだが....
「出口ぜってぇねぇよなこれ!?」
と彰人は叫んでしまった。そう、こう叫んだ頃にはあの神秘的な光景を見てから2回くらい夜が過ぎていたのだった。
それなのに人影は一向に現れない。そんなこんなで今日も森の散策か...
とため息混じりに彰人は意気込んだ。と言ってもやはり食料は必要だ。これまで2日はきのみやらなんだので運よく毒入りを引き当てずに済んだが、と言うか引き当てても気付いてないだけかもしれないが、まぁそれで我慢してきた。
しかしやはり、肉が食べたいのが人間の本望である。やはり動物は狩りたい。そんなことを考えている間に、どこからか「ぐぅぅ〜」と腹が鳴る音も聞こえた、彰人はその音にえ、人!?と期待に胸を弾ませたが、周りに人はいない、数秒の沈黙の後、彰人は自分のものだと気づく。そして、よし、やはり狩をしようと決め、まず耳をすます。
すると運がいいことに、右手の草原から、ゴソゴソと音がする。
そしてそれに即座に反応し、彰人は「獲った!」と叫びながらそこに背中の剣を抜き、振り下ろしたのだった。
そしてその直後、「ガキィィン!」と言う音と共に、彰人の剣は弾かれる。
そして、草原から、「危ねぇじゃねぇか!」
と言う荒っぽい叫び声が聞こえてきて、その声はかなり大きく、あたりの森に数秒間こだまし続けたのだった。
そしてその声が聞こえた直後、彰人は剣を構える。それは紛れもない剣道の構えだった。
そして草原から一人の男が現れる。
その男は彰人の構えを見て、
「ほぅ...珍しい構えじゃねぇか。」
とこの言葉を吐き捨て、手に持った弓を背中に収めた。
そして続けて男は、「物騒だからその剣下ろしな」
と一言。そしてその光景を見て彰人は手に持った剣を背中の鞘に収める。
そしてふと浮かんだ疑問を口にする。
「今の攻撃、その弓で防いだのか?」
と一言、そして男は少し惚けた様な表情で、
「は?当然じゃねぇか?俺がそれ以外になんか武器持ってたかよ?」
と答えた。その答えに確かに。と納得する彰人。そしてその後男は再び口を開く。
「お前よ、なんで俺のことを攻撃したんだ?理由によっちゃこの場で殺す」
その言動を聞いて、思い出した!と言った感じで彰人は申し訳なさそうな顔をした。
当然ではないが全くそうなのだ。弓であの攻撃を防がれたことに呆気にとられていたのだ。
そして彰人は「あの、お腹が空いてたから!てっきりケモノの類かと思って...」
とコメントした。
そのコメントに対し、男は、ああなるほどと言った表情で、
「それじゃあ仕方ねぇな許してやる」
そしてしばらく何かを考え、
「ついてきな。」
と言葉を吐き捨て、自分が来た方向、草原の方へ振り返り、歩き始めた。
そしてその言葉に従い、「ではお言葉に甘えて」
と言ってから黙って男について行った。
そして道中男は急に「お前、名前は?」
と問いを投げかける。
そしてその問いに対し、彰人は、
「俺は彰人。お前は?」
と問い返す。
すると男は、「イアスだ。それでお前、ここらじゃ絶対聞かねぇ名前だが?旅人か?」
と答えてからすぐに質問を投げかけた。
そして彰人は、「まぁそれと似た様なもんだよ。」
と答えた。
それを聞いてイアスは気に食わない様な表情で、
「はっきりしねぇな。まっ、そう言うことにしといてやるよ旅人のアキトさん」
と言ったのだった。
それを聞いて彰人は「あんた優しいな。」
と一言コメント。
そのコメントに照れ臭そうに首に手を当て、
「俺は優しくなんかねぇよ...それとあんたじゃねぇ名乗ったんだからイアスだ」
と2度も言わせんなと言う表情と、照れくさい表情が混ざってなんとも言えない表情で返した。
存外にイアスが照れるので、返しにくくなってしまったので
「はいはい。」と軽いコメントで返した。
そうこうしている間に思ってたより大きめな西洋風の壁に遭遇した、それに沿っていくと、果てしなく大きい門が、そびえ立つ、と言ってもその壁の方が当然果てしなく大きかった。
そしてその横の門番が一言。
「イアスさん。そのお方は。」
と問いかけた。
そしてイアスは「旅人のアキトだ。森の中を彷徨っていたから連れてきた。」
と彰人と話したときとは全く違う口調で話した。
そしてその光景を見て、彰人はイアスのことを「意外と頼れる人なのかな?」と口にこそしなかったが、頭の中で少し尊敬した。そして彰人はやっと冒険のスタートラインに立った気分になって、イアスと一緒に門の中に入って行ったのだった。