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ヒーローズロワイヤル  作者: ガトリングレックス
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第8話 歩き出す不安定な者達

ジュンが起き上がった時には、日が落ち、真っ暗になっていた。


「おー、随分と寝坊さんだねぇ」


「すまん、で状況は?」


「何人か来たから追い返しておいた。ジュンは悪い奴以外を殺したら俺を殺すだろ」


セイギの言動にジュンは疑いの目を向けながら、玄関から外に出る。


「さてジュン、俺達はどこへ行くのかな?」


「セイギ、地図もないのにどこに行くもないだろう?」


「あっ、そうか。ならとりあえず、この住宅地を出よう」


まともなことを言っている。そう思ったジュンは思わず目を丸くする。


「そんな目で見ないでくれ、俺がバカに見えるだろ」


確かにセイギの言葉は正しい。

だがジュンにとって気にくわないのは変身ベルトとの会話だ。

寝ていた時にも聞こえた残酷な言葉。

正義なのか、悪なのか、ハッキリしないところがある。

さすがはダークヒーローと言ったところか。


「悪かったよ。そう言えば良いのか。あの子を探さなくて?」


歩みを進めるセイギは、後ろを振り返らず先を急ぐ。


ジュンもセイギに着いて行き、左に並び歩く。


「良いんだ。分かったんだよ。俺達と居たらあの子は戦いに巻き込まれる。だったら誤解させたままでいた方がいい、そう思ったんだよ」


「そうか」


表面上では納得したジュンは、セイギと共に、ダークヒーローへの憎しみを燃え上がらせながら、住宅地を出た。



「戦え、最後の1人になるまで」


そのヒーローは戦いが映し出されている画面を観ながら、玉座に座っている。

ゲームマスターである彼がすべてのヒーローワールドの管理者。


「うん?」


画面を切り替えていると、白髪の少女が家の中で寝ているのが観えた。


「民間人が1人紛れ混んでしまったようだな」


ゲームマスターは少女のところへ瞬間移動、少女をおんぶし、安全な自分のいた空間に再び瞬間移動する。


少女を玉座に座らせ、ヒーロー達の争いを映像で見つめる。


「ウッ、ウーン」


目覚めた少女はゲームマスターを見て、恐怖で体が震えたのだった。



数時間、途方もなくアスファルトの道を歩き続けるジュンとセイギ。


「そういえば、腹が空かないんだよな」


ジュンの質問にセイギは呆れたように肩を上げる。


「なにを今更。でも確かにまったく空腹感がないのは、不思議な気分だよね」


空腹感に関して謎は残るが、今は敵に警戒することが重要だ。

そう思いながら歩みを進めていると、耳障りな金属音が聞こえ、足を止める。

もしそれをセイギが聞けば、真っ先に殺しにかかるだろう。


「うん? どうしたのジュン」


ジュンにとってヒーローと戦うことは絶対にしたくないことである。


だから。


「いや、なんでもない」


戦いに背を向け、到着したのは廃墟と化した町。


電気は通っているようで、信号機や、ビルの灯が点いている。


(戦いで生き残るのはただ1人、そんなことは誰でも分かることだ。ただ死んでいくヒーローの姿を見たくない、逃げてるんだろうな。どうせ1人はやられるのに…………)


人を利用し、それでいて戦いに逃げている最低な自分が憎い。

歯をくいしばり、自分に対しての怒りをセイギやトランスフォームに見破られないように歩き続ける。


「なあ、セイギ」


「なんだい」


「もし生き残ったとして、お前は俺を殺すのか?」


セイギはその質問に対して、「ふふ」と笑う。


「殺さないよ。 理由は色々あるけど、君が死ぬことはつまり俺にとってのバッドエンディングだから。それが1つの理由だと言っておくよ」


(こいつは確かに壊れてる。だけど自分の正義を貫いてる。殺人鬼としての闇は底なしだ。認めたくない、ダークヒーローと共闘している自分の心の弱さが)


惨めに思えるこの瞬間、聞こえてくる爆発音。

しかも位置はとても近く、頭に響く。

おそらくセイギにも、トランスフォームにも聞こえただろう。


「ヒーローが近くにいるな。どうするマスター?」


そのトランスフォームの口振りで思惑が理解できた。

セイギにヒーローを殺させるつもりだと。


「待てセイギ、まずダークヒーローか確認させてくれ」


「そんなことしてたらダークヒーローを取り逃がしちゃうよ。先に行ってるから変身しておきなよ」


「スピード!」


トランスフォームの掛け声で青の姿に変貌し、走り出すセイギに、焦りを感じるジュン。

このままではセイギによる正義執行(身勝手な殺人)が始まってしまう。


ジュンは顔を両手で覆い、変身の構えをとる。


「変身………」


X字に腕を交差させ、右サイドボタンを押す。

体が光に包まれ、変身を完了する。


耳をすまし、戦っている場所へ急ぐ。


なんとかセイギに追いつくと、ヒーローとの戦闘が始まってしまっていた。


その姿は赤きドラゴンを思わせ、炎の様なディテールが彫り込まれている。

変身ベルトには開いた本の様な変身アイテムが真ん中部分に映し出されている。

銀色のソードガンを右手に装備しており、セイギを殺す気満々だ。


「世界のためだ。ここで消えてもらうぜ」


「ごめんね。俺はヒーローを倒すなって仲間に言われてるんだよ」


「問答無用!」


ヒーローは手持ちの変身アイテムを手動で開き、ソードガンに装填する。


『ミノタウロス・マジック』


男性の機械音と共に、ソードガンにミノタウロスのオーラが包み込まれる。


「くらえー!」


横に振られるソードガン。

襲いかかる赤き斬撃。


「やめろー!」


ジュンはセイギの前に立ち、斬撃をまともにくらうのだった。


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