最終回 ヒーローに祝福を
絶望感がジュンを襲う。
今まで戦っていたのは自分の意思だった。
違う、ゲームマスターを倒すために可変された人生。
パワーアップできたのはベルトのおかげ。
違う、すべて作者の都合による進化。
カミーユとセイギの出会いは偶然。
違う、すべては作者によるシナリオ通り。
それを知った時、セイギとカミーユを失望させたんではないか?
その考えが複眼から涙を流させる。
(俺はただの操り人形…………あぁそうか…………ヒーローって言うのは必ずシナリオがあるんだ…………それだけ分かれば…………俺は…………)
なにかに掻き立てられるかの様に、全身を爆裂させ、ゲームマスターに突っ込んで行く。
「ジュン! 早まらないで!」
「無駄なことを」
ゲームマスターは時を止め、少女を浮かせたまま、ゆっくりとジュンに近づく。
だが、カミーユは動き出し、マシンガンを連射する。
ゲームマスターの体は風穴が開くが、すぐに塞がる。
「そんな」
「所詮貴様らでは私には勝てん」
そう言って、右足に黒きオーラを纏い、ジュンに向かって強烈な回転蹴りを繰り出す。
その後浮いている少女を抱き直し、「ジ・エンド」と口にした。
時が動き出し、ジュンは激痛に悶え、爆散する。
「ジュン!」
ジュンに駆け寄るセイギ。
変身が解除され、傷だらけの戦友を抱き抱え、何度も「ジュン!」と叫ぶ。
「うるさいぞ…………セイギ…………俺はヒーローなんかじゃない…………ごめんな…………騙してるみたいで…………」
「そんなことないよ! 君はヒーローだ! 戦友だ! だから死なないでよ!」
「だから…………うるさいんだよ…………せっかくヒーローになれたんだ…………最後はカッコよく死なせて…………くれ…………よ…………」
ジュンの目が閉じ、力が抜けていき、死亡したジュンに、セイギはゲームマスターに対して怒りを爆発させた。
「許さないよ! 君は俺の仲間を殺した! 殺してやる! 絶対に!」
「所詮はダークヒーローのなり損ないか。いいだろう、すぐに貴様も世界に忘れさせてやる!」
時を止めようとしたその瞬間、少女に異変が。
「ウッグ!」
苦しそうに息を荒くし、暴れ出す。
「どうした? どこか痛いのか?」
ゲームマスターが心配そうに少女を見つめると、腹に次元の裂け目ができ、黒き怪物がライトノベルを持って出て来た。
白い2本の角、頭の真ん中にイナズマの様な白い傷、すべての者を威圧する白い複眼。胸下に埋め込められている白き宝石、背中にはカブトムシを思わせる羽、腕から放出する白いビームカッター、足と一体化しているギアが搭載された白く鋭いレッグトリガー。
「久しぶりだな、セイギ」
「「ストロンギスト!」」
セイギとトランスフォームの言った黒き怪物の名前。
「誰だ貴様は?」
「俺の名はストロンギスト。最強の暗示だ」
「最強だと、ふざけるな、最強はこの私だ!」
時を止めようとするが、止まらない。
「今、お前からすべての力を破壊した」
「なに、そんなバカな!?」
「ストロンギストは誰にも負けない、なぜならデビルの力をほぼ使えるからねぇ」
「お前の計画もここまでだ。いくぞセイギ、トランスフォーム。復讐の時間だ!」
ストロンギストはレッグトリガーのリミッターを解除、トランスフォームは「パワー」と叫び、セイギを赤き戦士へと変化させる。
ゲームマスターは死を悟り、少女をカミーユに投げ渡す。
慌ててカミーユはマシンガンを地面に落とし、キャッチした。
「これで、すべての特撮が終わる! すべてなぁ!」
ダブルドロップキックを繰り出すセイギとストロンギスト。
ゲームマスターの心臓部に命中し、爆散させた。
「安心しろ。今『特撮が終わる』を破壊した。そしてセイギ、『ヒーロー達の死』を破壊した。これで、みんな無事に帰れる。俺達以外はな」
「ありがとうストロンギスト。じゃあね、ジュン、カミーユ、今までありがとう、さようならー」
こうして特撮ヒーロー達の世界はすべて救われた。
3人のダークヒーローによって。
その後、現実世界に戻ったカミーユは知ることになる。
白い髪の少女は、とある小説に出てくる悪魔、通称デビルと言われている存在、ストロンギストを召喚するために描かれたキャラ、つまり我々が勝利するためだけに生み出された存在だったのだと。
基地に帰ってきて、カミーユが1番最初にやったこと。
それは…………
ジュンとセイギ、そして自分が笑顔で笑って立っている絵を描くことだった。




