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ヒーローズロワイヤル  作者: ガトリングレックス
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第17話 ご都合主義

タナカジュン、27歳、独身、サラリーマンとして働き、そこそこの給料をもらっている。

いつも変わらない毎日を少しでも変えるため、夜はレンタルした特撮ヒーローのDVDを観る。

子どもに戻ったような感覚に戻れ、楽しい感覚を残したまま眠りにつく。

これがずっと続くと思っていた。


だが………


ある日の事、会社帰りに上司に飲みに付き合わされ、焼酎を飲んでいた時、外で叫び声が聞こえた。

最初は酔っていたので幻聴でも聞こえたと思ったのもつかの間、怪人が現れ、毒ガスを吐き始める。

ジュンはとっさにハンカチで口を押さえ、上司を連れてその場を逃げ出した。


「…………!」


叫びを上げ、2人を追う怪人。

毒ガスを吸った者達はその場に倒れ、死亡した。


ひたすら、ひたすら走る。

酔いが一気に覚めた2人は全速力で走る。

怪人がいるからと言ってヒーローがいるなんて思えない。

いたとしても助けてもらえるのはほんのひと握り。

そんなことは特撮を見ていたジュンには分かる。


「…………!」


奇声を上げる怪人。


後ろを振り返る余裕なんてない。

逃げ惑うジュンと上司。


「変身!」


その声に反応し、怪人が足を止める。


「ザーガ!」


ヒーローの名を叫び、バッタの様な戦士に襲いかかる。

拳で怪人を吹き飛ばし、こちらを振り返るヒーロー。


「逃げてください」


「はっ、はい」


ジュンはヒーローが実在することを知った。

だがそれがなんだ。

また怪人に襲われた時に必ずヒーローが助けてくれるとは限らない。

きっとこれは最初で最後のヒーローとの出会い。


(運を使い果たしたな、俺)


そう思いながら上司と別れ、警察に言っても信じてはくれないと諦め、アパートに帰るのだった。



過去の記憶を今更思い出したところで何にもならない。

理解はしているはずなのに、頭に過ぎるあの記憶。

悟られないよう、冷静さを保っているが、これ以上ウソを吐くことは果たして許されるのだろうか?

信頼している仲間に偽りの自分を見せ続けて良いものか?

それとも本当の自分を見せて失望させてしまうだろうか?

そんなことをジュンは思っていると、なにやら2人以外の足音と泣き声が聞こえる。


「警戒しろ。敵だ」


変身を解除していた3人は、速やかに変身し、戦闘体勢に入る。

現れたのは、泣き声を上げる白い髪の少女をお姫様抱っこしているヒーローだった。


黄金の目立つアーマーと2本角、ボロボロの黒いマント、誰をも威圧する赤い複眼で3人を見下している。


「貴様ら、そこを退け、戦う必要性がないのでなぁ」


そのヒーローを見た途端、カミーユは仲間全員に連絡し始める。


「こちらカミーユ、ゲームマスターを東の森エリアで発見しました」


『分かった。すぐに向かう』


『GPSでカミーユ兵の位置を特定しました!』


『よし、これよりゲームマスターを撃破する。一斉に迎え!』


高速で移動して来る兵士達。


その行動にゲームマスターはため息を吐くと、「お前達もか?」と問いかける。

それに対し、カミーユはマシンガンの銃口をゲームマスターに向けた。


「私達はすべて世界を救う。あなたがこんな戦いを仕向けなければ、こんなことにはならなかった!」


「それはお前達がでっち上げたウソだ。よくも2人のヒーロー達を騙し、この戦いを歪ませてくれた」


「どう言う意味ですか?」


カミーユの質問にゲームマスターはこの戦いのすべてを語ることにした。


「特撮と言う物は様々な会社が作り、子どもを楽しませていた。しかし今はどうだ。特撮を作る人間は数が少なくなり、放映しているのは権力がある者ばかりだ」


「だからって戦わせる理由には…………」


カミーユがその続きを言おうした時ゲームマスターがその言葉を遮る。


「消えていくのだよ。人達の記憶から私達がいたことがなぁ」


「それがどう関係するんだ?」


ジュンの質問にゲームマスターは一瞬動揺する。

話の内容が分からなかったからと言う単純なことではない。


「貴様、なぜ生きている?」


質問を質問で返され、苛立ちながらジュンは回答する。


「そりゃー。生きて帰りたい、だから必死に頑張った。それだけの話だ」


それに対しゲームマスターは鼻で笑い、納得した様に頷く。


「なるほど、やられ役だった貴様がここまで生き残れたのは、神のいたずらかぁ」


「ふん、それはどう言う意味だ」


「カッコつけるな一般人。貴様は私が呼び出したやられ役の1人なのだよ」


意味が分からない3人はキョトンとしているので、ゲームマスターは再びため息を吐く。


「いいか、ここはテレビに流れている特撮番組に過ぎない。番組を面白くするためにはやられ役が必要。だから貴様を呼んだ。番組を盛り上げる最初の犠牲者にするために。だがそれが間違いだった」


泣き叫ぶ少女の表情を見つめ、あやそうとする。

しかし「怪物嫌いーーーーーー!!」と言われ、殴られる。

首をブルブルと振り、ゲームマスターは話の続きを喋り始める。


「貴様はさっき言った権力者の作品に出てくるヒーローに助けられたサラリーマン。おそらく黒い者達の協力者の中に貴様を生み出した人間がいたのだろう。喜べ、それほど好かれたキャラクターとして描かれていたことを」


(俺が、やられ役?)


ジュンは思った。

ここまで生き残れたのは自分の力ではない。

誰とも知らない人間に利用されただけ。

この戦いにおいて自分は所詮、勝負に勝つための駒に過ぎない。

それに気づいた時には、複眼から涙が流れていたのだった。

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