第16話 残酷なトリガー
ジュンがネクロールに手をかざすと、全身が燃え上がり、爆裂、大きく吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられるが、笑いながら立ち上がり、龍の剣をセイギに投げつける。
「ディフェンス!」
トランスフォームの叫びと共に、セイギは緑の姿になる。
剣を右手で防ぎ、拾い上げると、「パワー!」トランスフォームが叫び、今度は赤の姿に変化する。
「落とし物だよ!」
逆手に持った剣をネクロールに向かって投げ飛ばす。
その勢いは凄まじい物だが、キマリオンがその硬い装甲で守られた。
咆哮を上げる5体の融合獣から放たれる火炎弾。
「スピード!」
トランスフォームの叫びと共にセイギは青き姿に変貌し、火炎弾を走りながら躱す。
カミーユもこの状況にしびれを切らし、マシンガンをキマリオン5体に向けて連射する。
分身は消滅していき、本体に命中すると、悲鳴に近い咆哮を上げ、爆散した。
「ほう、お前なかなかやるじゃないか。だがまさかあいつを倒しただけで終わると思ってはいないよなぁ」
「分かっています。確かにあなたはダークヒーローです。しかし自分が死んだら同じ顔の人間が死ぬ。その意味、あなたなら分かるはずです」
「パラレルワールドの話か? そんなことは俺には関係ない。さっさと取り込まれろ」
そのネクロールの言葉にセイギの中でなにかが壊れた。
「今の発言が俺を怒らせた。殺してあげるよ。今すぐ!」
「そんなことがお前にできるのか?」
挑発にも取れるその言葉に、トランスフォームは「バランス!」と叫び、セイギは黒の姿になる。
怒りを爆発させ、走り出すと、高く飛び上がり、ドロップキックの体勢に入った。
セイギは高校生の頃、悪魔に悪人を殺させていた。
それに罪悪感などなかった。
なぜなら彼はその行為を正義の行動だと思っていたから。
誰がなんと言おうとも正義なのだ。
考えを正されず生きてきた結果、本物の執行人によって銃弾を頭に撃たれて死亡した。
認めてくれたのは悪魔だけ、なんとも悲しい人生だった。
だが今は違う。
2人の仲間が自分を認めてくれた。
だからこそ…………
(俺は戦う!)
(こいつはバカなのか? この武器で貫いてやる)
ネクロールはビームサーベルをセイギに向け振り下ろそうとすると、ジュンが後ろに回り込み、取り押さえる。
「いつの間に!?」
「お前は今の現状を分かっていない、3対1という不利な状況をな」
セイギの渾身のドロップキックがネクロールの心臓部に命中。
ジュンが拘束したことによって力は分散せず、激痛が走る。
「グッ」
さらにジュンによるジャイアントスイングで投げ飛ばされ、着地したセイギにラッシュをくらう。
2分で500回以上。
だがトドメを刺すにはまだ足りない。
「ジュン! 2人で行くよ!」
「分かった!」
ジュンとセイギは高く飛び上がり、挟み撃ちの状態でドロップキックの体勢に入る。
しかし、その行動に対してネクロールは高笑いを上げ、闇のオーラで2人を吹き飛ばす。
「「グワッ!?」」
地面に叩きつけられ、体勢を崩した2人。
「これで終わりにしてやる! この森ごと吹き飛べー!」
ネクロールの体が光り出す。
その姿にジュンはトラウマが蘇る。
ウォーズが繰り出したあの技。
あれをくらえば自分とカミーユは耐えられるが、セイギはおそらくあまりの破壊力に消滅するだろう。
「やめろー!?」
「もう遅い! 起爆する!」
もうダメだと思った次の瞬間、銃声が鳴り響くと、ネクロールの体から血液が流れ、風穴が開く。
「ばっ、バカな!?」
その場に倒れるネクロールに、冷たい視線を向けるカミーユ。
あんなにも平和主義を貫いていたあの女がなぜ?
なぜ自分を殺そうとしているのか?
それが理解できない。
動揺で目が泳ぎ、カミーユにもそれを悟られた。
「確かに私はあなたを殺そうとはしなかった。しかし大勢の人を殺そうとするその行為。あなたの俳優さんには悪いですが。小さな犠牲になってもらいます」
マシンガンの銃口を死神の頭に向け、発砲する。
撃ち抜かれた死神の体はピクリとも動かなくなり、死亡が確認された。
この事について報告をするため、カミーユは仲間のチームCに連絡する。
「こちらカミーユ、チームC、応答願います」
『こちらチームC、どうかされましたか?』
「実は、大勢の死者が出ると感じ、ダークヒーローを1人射殺しました」
『そうですか。で、あなたはどこにいるんです?』
変身を解除し、胸ポケットから紙の地図を取り出すと、自分の位置を確認する。
「私は今、東の森エリアにいます」
『分かりました。ゲームマスターの位置はその近くだと思われるので警戒してください』
「はい、ではここで失礼します」
通話を切り、ジュンとセイギの方へ、心配そうに近づく。
立ち上がる執行人2人に「大丈夫ですか!」と呼びかける。
「あぁ、この程度なんともないよ」
「同じく」
ホッとした表情を向けるカミーユに、ジュンはあまりのネクロールに対しての冷たい言葉とのギャップのある可愛らしい表情で、顔を真っ赤にし、唾を飲む。
幸い変身しているため表情はバレずに済んだ。
(こいつ、ホントに軍人なのか?)
そう疑いたいほど、彼女の仲間に対しての表情の豊かさはジュンにとって異常だった。




