第13話 真似する鬼
奪牙を倒してから30分ほど、全員変身した状態で町を出て、道路をひたすらに歩く3人。
『こちらチームB、カミーユ応答しろ』
カミーユの左耳に取り付けてある通信機から流れてくる男性の声。
それはカミーユの部隊の声だった。
「こちらカミーユ、現在ゲームマスターのいる目的地に移動中です」
『そのことなんだが、基地に到着したところ。ゲームマスターは逃走した』
「なんですって!?」
あまりの大声に、ジュンの耳に響き、カミーユの方へ機嫌悪そうに振り向く。
「カミーユ、俺の前で声を荒げるのはやめてくれ。変身してから耳が敏感になってだなぁ、響くんだよ、その声が」
『うん? カミーユ、誰かいるのか?』
部隊の1人の声に返答するため、ジュンを無視する。
「はい、2人のヒーローがこの作戦に参加してくださいました」
「おい、無視すんな」
そこでセイギは察した。
「今電話中なんだから、静かにしないと。ねっ」
威圧感がすごいセイギに、ジュンはため息を吐くと、自分の進化に着目する。
肉体の強化はもちろんの事、今まで疲労に苦しめられていたのがウソの様に軽い。
これがベルトの力、自分の力ではない。
(俺はただダークヒーローを潰したいだけだ。そのためにはいろんな物をこのベルトに吸収させなきゃならない。結局、変身アイテムに頼らなきゃ戦えない。どのヒーローも同じ状況なんだろうが、誰もが自分の力だと勘違いしてる。そう、あいつらみたいに…………)
ウォーズ、奪牙、ファンタジー、誰もが自分の力だと勘違いしている。
変身アイテムがなければただの人間。
なのになぜあんなにも自身満々に戦いを続けるのだろうか?
あいつらの気持ちは良く分かる。
(奴らは変身アイテムの力に溺れても、最終的には世界を救うか、やられるかどっちかだ。俺はどっちの道を行くだろうな?)
そんなことを考えつつ、歩みを進めていると、古びた家を発見する。
そこには50代ほどの白髪の男性が、畳の上で鼻ちょうちんを作りながら寝ていた。
その風貌はまさしく平安時代の田舎者。
ツギハギの服を着ている彼の間抜けな顔。
その姿を見てジュンとセイギ、カミーユは無視して先へ進む。
だが鼻ちょうちんが割れ、男性は目を覚ます。
その場で立ち上がると、カツカツと下駄の音を鳴らし、出窓からこちらへ近づいて来る。
「うん? お主ら、どこへ行くのだ?」
「あなたもヒーローなんでしょうが、私達は戦うつもりはありません」
「愚かな。この戦いにおいて戦闘を放棄することは自分の世界の死を意味する。生き残りをかけ争う、1つの世界しか救えないのだ。それが分からんのか?」
「ゲームマスターを倒せばすべての世界は救えます。あなたの世界だって…………」
カミーユがその続きを言おうとした瞬間、男性から湯気が立ち込める。
「世界を救える? バカなことを言うな!」
あまりの大声にジュンの耳に響く。
「管理者のゲームマスターが倒される。つまりは我々の世界がすべて消滅する。それを理解していてウソをついているのか! お前達の様な実に愚かな者は死をくれてやるわ! 正体、判明!」
変身の掛け声と共に男性の肉体が筋肉質になり、まるで鬼の様なヒーローの姿となる。
「すべてを真似する鬼と書いて真似鬼。いざ参らん!」
真似鬼と名乗ったヒーローは、口をクラッシャーオープンし、鬼火をため息の様に放出しながらセイギに向けて駆け出す。
「スピード!」
だがその程度のスピードではセイギの青き姿には勝てず、加速され、後ろからパンチのラッシュを浴びせられる。
その回数1分で100回以上。
「これでフィニッシュだよ」
最後の1発を放ち、大きく吹き飛ばす。
地面に叩きつけられるが、すぐ様立ち上がると、真似鬼は不敵に笑う。
「覚えたぞ」
意味深な発言に警戒しながら、ジュンは真似鬼に向かって加速して行く。
(あいつの能力は未知だ。しかも相手はダークヒーローじゃない。気絶させて安全なところに運んでやる。俺達が勝てたらの話だけどな)
自信なさげに拳を突き出すと、聞き覚えがある言葉を真似鬼が言い放つ。
「勝負だ」
「あれは! 俺がシゲルさんのカウンター攻撃をした時の!」
「なぜ前マスターの技をあいつが!」
セイギとトランスフォームが驚くのも無理もない。
あの動き、あの癖、どう見てもセイギのカウンター攻撃だ!
そもそもこの技はトランスフォームの前マスターであるシゲルが使っていた物をセイギがトランスフォームから学び、習得した物。
それを使いこなす者が他にもいるとは………
繰り出される真似鬼のカウンターパンチが、胸にクリティカルヒット。
「ウガ…………」
さらに高速で放たれる拳、その回数1分で100回以上。
大きく吹き飛ばされ、ジュンは家の出窓を突き破った。
「ケッケッケッ、若僧、仲間の攻撃をくらった気持ちはどうだ?」
「な………に?」
「ワシの能力は相手の戦闘スタイルを真似る事。お主らに攻撃を受けた瞬間、すべての動き、癖を知り、使いこなすことができる。さて、お主らはどこまで教えてくれるかな?」
余裕の口振りで挑発する真似鬼。
それに対してセイギは拳を強く握りしめるのだった。




