「君のことなんて、なんとも思っていないよ」
君のことなんて、なんとも思っていないよ。
夢の中でさえ嘘をつくのだから、どうしようもないね。
どうせ、夢なのだから、この気持ちを言葉にしてみてはどうだろうか。
ぽつりと落ちるしずくが、心に波紋を描く。
揺れる世界、鏡面の内で、あるいは外で意識が揺らぐ
この気持ちを複雑にしているものは何だろう。
君のそっけない態度、それとも素直になれない僕のせいかな。
様々な要因がそこにはあるんだろうね。
本当はもっと単純で簡単な気持ちのはずなのに。
部屋にはアルコールの匂いが充満している。
微睡む意識は泥に沈んでいく。
君はここにはいない。
でも、君はそこにいるんだ。
僕はすがるように、それに声をかける。
「愛している」
いままで口にすることのできなかったその言葉を、
慟哭を刻むように、何度も繰り返す。
全てが遅いとわかっていながら。




