表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリン飯  作者: ブランケット少佐
第四章
66/66

63話 過去からの贈り物

 ────その日、ゴーダは以前にチロたちと訪れた湖に足を運び、ひとり黄昏(たそがれ)ていた。


「レナ……」


 静かな湖面を見つめながら、ゴーダはポツリと呟く。


 その瞳に写っているのは、現実の光景ではない。

 

 それは、過ぎ去りし過去の幻影。


 かつて夫婦の(ちぎ)りを交わし、今もまだ心からの愛を捧げている、ひとりの女性の姿だ。


「はぁ……」


 ゴーダは野太いため息をひとつ吐くと、手元に転がっていたチロの頭ほどの大きさの小石(・・)を掴み、湖に向かって放り投げた。



 ドボンッ



 というそれなりに重い音とともに飛沫(しぶき)が上がり、湖面が波打つ。


 この湖で、ゴーダは妻であったエルフのレナと、よくデートをしたものだ。


 そしてふたりで水飛沫を上げながら、○○○や×××や□□□など、詳しくは描写できない色々なことをしたものである。


「ふぅ……」


 アンニュイなため息をもう一度吐き、ゴーダは湖に投げ込む手頃な石が転がっていないか、視線を彷徨(さまよ)わせた。


 しかし、目に付くのはゴーダと同じくらいに大きさな岩だけ……


 仕方なくゴーダは立ち上がると、その岩に向かって歩いていき、おもむろに殴りつけた。



 ドゴンッ!


 

 という轟音とともに、あっさりと岩が砕け散る。


 ゴーダはその砕けた岩の中から手頃な大きさのものを選ぶと、また湖のそばに座り込み、手に持った岩を投げこんだ。


 

 バッシャァンッ!


 

 今度のは先ほどの四倍くらいの大きさだったため、豪快な音とともに水柱が上がった。


 ゴーダの全身にも雨のように水飛沫が降り注ぎ、それと同時に────


 べちゃり、と何かが頭に張り付いてきた。


「……ん、こいつは」


 頭から引き剥がしたソレ(・・)を見たゴーダは、懐かしそうに目を細めた。


 そして、


「チロんとこに持ってって、コイツでなんか美味いもんでも作ってもらうか……」


 と、その凶悪な顔に笑みを浮かべた。


 レナはいなくなってしまったが、ゴーダには最愛の娘も、守るべき仲間も、そして懐かしくも新しい友人もいる。


 かつて生きていた場所から遠く離れたこの世界で、ゴーダは決して、ひとりではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ