表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリン飯  作者: ブランケット少佐
第三章
55/66

53話 郷愁(きょうしゅう)

「う、うぅ……うま、うま……」

「……チロ」

「キュアァ……」


 ヒナとキングはチロから距離を取り、遠巻きにその行動を見守っていた。


 チロは今、呪われているとしか思えないほど不気味な植物である『ムンクさん』から流れ出た黒い液体を、指先につけては舐め、指先につけては舐めを繰り返している。


 しかも、涙を流して「うま、うま……」と呟きながらだ。


「どうしよう、キング……チロが、おかしくなっちゃった…………」


 その異様な姿に、ヒナはキングを抱きしめたまま泣きそうな声を上げた。

 

 本当は、今すぐにでもチロをムンクさんから引き剥がし、黒い液体を舐めるのをやめさせたほうがいいかもしれない。


 だが、ヒナにはそれが正しいことなのか分からず、またそれを行う勇気もなかった。


 もし、強引に引き剥がしたせいでチロが壊れてしまい、「う、うま…………ヒャァアアアアッ! ウマッ、ウッマァァアアアアアッ!」とか叫び出したりでもしたら、取り返しがつかないうえに怖すぎるからだ。

 

「どうしよう、キング……わたしは、どうすればいいの?」

「…………」

 

 ヒナの問いかけに、キングは目を閉じて考えるような仕草をした。


 そして数秒後にカッと目を見開くと、「キュアッ」と一度短く鳴き声を上げ、顔を洞窟の入口の方向に向けた。


 一瞬、キングがなにを言おうとしているのか分からなかったヒナだったが、


「……そうか、お父さんなら、なんとかしてくれるかもしれない!」


 すぐにその意図を察し、希望を見出した表情を浮かべると、洞窟の入口に向かって走り出した。


 だが、途中で一度足を止めて振り返り、


「まっててね、チロ…………すぐにお父さんを連れて、帰ってくるから…………」


 未だに「うま、うま……」と呟きながら黒い液体を舐め続けるチロに声をかけると、今度はもう振り返ることなく、父親のいるゴブリン集落へと走り去っていくのだった。

 








 


 ────それから、数十分後。


 ヒナに連れられてきたゴーダに拳骨(げんこつ)を落とされたことにより、チロは正気を取り戻した。


 しかし、チロから事情の説明を受けたゴーダもまた、郷愁の念を抑えられなくなって黒い液体を舐めてしまい、涙を流しながら「うま、うま…………」としばらくトリップすることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ