41話 話し合いの前に
ヒナと剛田を連れて洞窟に戻ったチロは、ようやく麻痺から回復したゴルジらの縄をほどいて解放した。
ゴルジは今にもチロに飛びかからんばかりだったが、剛田がチロのことを「俺の弟分だ」と説明すると急に大人しくなり、チロに対して敬意を持って接するようになった。
剛田の威光、おそるべしである。
「お前ら、俺とヒナはちょっとこいつと話してから帰る。先に戻ってろ」
剛田が、ゴルジたちに先に帰るよう指示を出す。
これからチロと話し合う際には前世のことなども話題に出さざるを得ないため、ゴルジたちがいては余計な混乱を招くと思ったからだ。
ヒナについてはどうするべきか迷ったが、チロから離れようとしないし、なにより剛田の一人娘でもある。
秘密にしておくべきではないと思い、一緒に話を聞いてもらうことにした。
「へい、ボス。……お嬢、チロの叔父貴、オレらはこれで失礼いたしやす」
「ばいばい」
「いやあのゴルジさん? 俺のことは別にチロって呼び捨てにしてくれていいですから。その叔父貴っていうのはちょっと……」
百八十度態度の変わったゴルジの『叔父貴』呼びに、チロが異を唱える。
「ははは、何をおっしゃいます、チロの叔父貴。ボスはオレらの親父みたいなもんですから、その弟分ということは、オレらにとってチロさんは間違いなく叔父貴でしょうよ」
だがゴルジは、まるで意に介さずそう返してきた。
「いや、でもたぶん、俺のほうがゴルジさんたちより年下だと思いますし…………」
それでもチロが食い下がると、ゴルジはなにか考えるような仕草をした。
そして、
「……なるほど、確かに自分より歳食ったヤロウどもから叔父貴呼ばわりされちゃあ、チロさんも気分が悪ぃでしょう。分かりやした、では、チロの兄貴と呼ばせていただきやす。いいなオメェら! これからチロさんのことは兄貴って呼ぶんだぞ! 叔父貴なんてぬかすヤツぁ、オレがぶっ飛ばすからな!」
「「へいっ、よろしくお願いいたしやす! チロの兄貴!」」
「…………あ、はい、どうも」
結局、チロの意図が正確に伝わることはなかった。
「気のいい奴らだろ?」
去っていくゴルジたちを見送りながら、剛田が言う。
チロは「そうですね……」と苦笑いでそれに答え、
「さて、それじゃあまず、先輩の話を聞かせてもらう前に…………腹が減ったので、なにか食うものでも作りましょうか」
空腹が限界に達したのか、チロの頭をガシガシと齧るキングを引き剥がしながら、そう言った。
軽い話の息抜きに、重い短編を書いてみました。
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『それゆけ信徒ちゃん』
※暴力的な表現や鬱要素があります。苦手な方は読まないほうがよいです。




