漫才:空き巣
ボケ「聞いてくれ」
ツッコミ「どうしたん」
ボケ「昨日、家に空き巣が入ったんや」
ツッコミ「え!大変やんけ」
ボケ「だから、何を盗られてたでしょうクイズしよか」
ツッコミ「ポジティブな被害者」
ボケ「ほら、どんどん言っていって」
ツッコミ「えー、じゃあ財布」
ボケ「ぶっぶー。残念、ハズレや」
ツッコミ「通帳と印鑑」
ボケ「全然、ちゃう。かすりもせえへん」
ツッコミ「分からへん。教えて」
ボケ「正解は、お母さんや」
ツッコミ「え、お母さん……?」
ボケ「そや、お母さんや」
ツッコミ「どういうことや。全然分からへん」
ボケ「だから、空き巣にお母さんを盗まれたんや」
ツッコミ「いやいやいや、おかしい。おかしいところが二つある」
ボケ「ないよ。だって事実やもん」
ツッコミ「いや、聞け。まず、お母さんが盗まれたってことは家にお前のおかんが居たってことやろ」
ボケ「そうや」
ツッコミ「もうそれ、空き巣やないねん」
ボケ「どういうことや」
ツッコミ「あほか。家に人が居るんやったらそれは空き巣やなくて、ただの泥棒やろ」
ボケ「あほはお前や」
ツッコミ「なんでやねん」
ボケ「ええか、よく聴けよ。僕はお母さんを盗まれたんやぞ」
ツッコミ「おう」
ボケ「可哀想やろ?」
ツッコミ「うん、とても可哀想やけどもやな。それと空き巣であるかは全く関係ないやんけ」
ボケ「(泣き口調で)お前、想像力ないんか?人の気持ちが分からへんのか!ぼく、お母さん盗まれてんねんで。こんな辛いのに、お客さんの前で漫才をする僕の気持ちが君に分かるんか?」
ツッコミ「うん、いや、それは申し訳ないけどやな。そこはプロ意識で何とか乗り越えていこうぜ。俺ら、お客さんを笑わせにきたんやし」
ボケ「ぐす……そやな。俺ら漫才師やもんな。よし、がんばろ!それで、二つ目はなんや?」
ツッコミ「ん?」
ボケ「いや君が言うてたがな。二つおかしいところがあるって」
ツッコミ「ああ、それか。ほなら言うけど、びっくりせんとってや」
ボケ「大丈夫や、こっちはお母さんを空き巣に盗まれてんねん。これ以上驚くことはもうこの世にないやろ」
ツッコミ「まあ、まさに”そこ”なんやけども」
ボケ「どういうこと?」
ツッコミ「お母さんってさ……人やん?」
ボケ「うん、絶対人や。君、会ったことあるやんか」
ツッコミ「ある、あれは人やったね。そいでやな。ええか、よく聞けよ」
ボケ「おう、なんや」
ツッコミ「お母さんは盗めへん」
ボケ「ええ!何を言うてんの!」
ツッコミ「特に君のお母さん、不細工やし」
ボケ「ひどいこと言うな!目と目の間が異様に離れてるだけや!」
ツッコミ「それを不細工って言うねん!」
ボケ「それに盗まれてへんねんたら、うちのお母さんどこ行った言うんや」
ツッコミ「知らん!家出したんちゃうか!実家にでも帰ったんやろ!」
ボケ「そんなわけあるか。昨日お婆ちゃんに電話したら、私の娘なら居るって言うとったわ」
ツッコミ「お婆ちゃんの娘……それが、お前のおかんやろ!」
ボケ「わっ!巧妙なトリックにひっかかってもうた!」
ツッコミ「ええかげんにせえ。もうええわ」
終わり