要塞アストラと四天王ルンファ3
北の都ペンドラゴは、標高8000メートルの山に築かれた魔術都市であり、神ルアラを信仰している宗教国家でもある。ペンドラゴの住人は閉鎖的であり、ルアラ信者でない限り足を踏み入れる事は出来ず、ルアラの洗礼を受けていないワタル達が向かっても、意味がない場所だった。
一方、中心要塞アストラは世界の中心にある孤島の上に存在する。実際は上というよりも、孤島すべてに、要塞都市としての機能が存在しているらしく、アストラは孤島であり、要塞であり、船でもあった。中心要塞の名前から、ペンドラゴ同様中に入る事が難しそうな印象があるが、アストラはペンドラゴのように閉鎖的ではなく、工場見学などの観光産業にも力を入れている位、オープンな場所だった。
現在ワタル達がいるルクレツァアの港からは、アストラ行きの船も飛行船も出ており、航路、空路共に道が開かれていた。
「得た情報から考えますと、行先はアストラで決まりですわね」
「うん。問題は、航路と空路のどっちにするかだけだね」
「こうりょとくうりょとはなんじゃ?」
「海を進むのが航路。空を進むのが空路。簡単に言うと、魚に変身するか鳥に変身するかって感じかな」
「おぉ、ワタルはイノシシ以外にも変身できるのか。凄いのじゃ」
「ナナは魚と鳥だとどっちがいい?」
変身できるのか?と問われたなら、答えは勿論ノーなのだが、フレイヤ次第では恐らく何にでもなれる為、ワタルはナナの言葉を否定する事はせず、代わりに質問した。
アストラに行く事は決定したが、行き方は決まっていない。であれば行き方はナナに決めて貰おうとワタルは考えた。
「空は剣を回せば飛べるし、ナナは魚になってみたいのじゃ」
「そっか。なら航路だな」
剣を回すだけでは普通飛ぶ事なんて出来ないが、飛行姿を目撃した事もあるワタルはいちいちそんな野暮ったい事は言わずに、ナナの意見を採用した。




