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西の魔女とロリッ子戦士11

白と黒の光が消え、戦いの音が止んだ。

 閃光と音の中心だった場所には二匹の子猫が倒れ、黒い塊が炎を昇らせながら横になって置かれている。

 二匹の猫は戦闘で負った傷と疲労で倒れ、黒い塊はブリージンガメンの誘いによって永遠の眠りに就いていた。

「成功したようですわね」

「生きているようには見えない状態だけど、これで死んでないのよね?」

「こんな状態であっても、この男がそれを望まない限り、死ぬ事はありませんわよ。そんな日が来るのかどうかは、甚だ疑問ですけれど」

 ブリージンガメンが見せるのは、当人が望む理想郷。

 理想の世界で死を望む者など存在しない為、ナナシが永遠に生き続ける事は既に確定していた。ナナシの欲は常に寿命すら、超越してしまっているからだ。

「・・・目を凝らして見ると、確かに死んではいなさそう。寧ろ回復してる感じがする」

「精神の高揚が、肉体に見事なまでに表れている感じですわね。レヴァーティンの炎に焼かれながら全快する日も、そう遠くはなさそうですわね」

 レヴァーティンの神炎を立ち昇らせ、倒れているソレは、生きているとは思えない状態であるものの、死んでいない事は一目瞭然だった。寧ろ喜びに打ち震えているようにさえ見える。実際、ナナシの傷は燃えながらにして、回復の兆しを見せていた。

つくづくバケモノである。

「ここから、どうするのコレ?」

「設定を生かしつつ、こちらに都合が良いよう形を変えれば良いだけですわ。何をした所で、コレの中身が目覚める事は二度とありませんもの」

「つまりまた、フレの宝が見られるわけね」

「この短期間にここまでの宝を披露したのは、生まれた初めての事ですわ。この男には、これから先、相応の対価を支払って貰わないといけませんわね」

フレイヤは黒い塊を、ゴミを見るような目で見た後、キビシスの袋から、細かな繊維で編み込まれた一枚の布を取り出した。

布の名は変化のマント。悪魔が天使を欺く為に用いた魔具であり、効力は名の通りモノを変化させる事にある。悪魔が創ったとは思えない程、繊細で美しい布はミスリルと呼ばれる金属と、世界樹の繊維が編み込まれており、悪魔という野蛮な存在を隠す以上、あらゆる魔法効果を包み込む能力も備えていた。

レヴァーティンの炎はスルトの鞘を使わない限り消す事は出来ないが、変化のマントで覆ったなら、レヴァーティンの炎もブリージンガメンの夢も内に内包した状態で、外皮を変化させる事が可能だった。

フレイヤは変化のマントを、炎を昇らせるナナシの体に被せた。

時間にして一秒程だろうか、フレイヤが変化のマントを外すと、ナナシという戦士はその場から姿を消し、代わりに、見た目七歳位の幼女が姿を現した。

まるで手品の早変わりを見ているようで、どうにも現実味が無かった。

「ただの別物ね」

「悪魔が神を誑かす為に使った魔具ですもの。醜いオッサンが可愛い幼女に変わる事位寧ろ普通の事ですわ」

「幼女にした理由は?」

「オッサンはわたくしの趣味ではありませんし、少年にしてしまうとオッタルがヤキモチを焼いてしまいますもの。ブリージンガメンによって、中身は夢の中ですから、中身のないアホの子になる事も確定しています。であれば、幼女の姿が一番無難ですわ。アホの子はアホであっても可愛いですもの」

「つまり結局は、フレの趣味って事ね」

「アホなオッサンがレーフェの趣味なのであれば、もう一度変えて差し上げますわよ?そのかわり、世話はレーフェが行って下さいましね」

「いえ、幼女のままでいいわ。寧ろ幼女が私もいいと思う」

 レーフェスはフレイヤの案を否定し、フレイヤの意見に深く賛同した。

中身のないオッサンなど、存在する価値もないにも関わらず、それの世話をするなど考えただけでゾッとする。

世話をするのであれば、どれ程手間が掛かったとしても、オッサンよりも幼女の方が遥かにマシだった。





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