表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロマン砲主義者のオーバーキル  作者: TEN KEY
問7 溢れ出す限界までの容量を計算せよ
91/92

答7-7

「あっぶね……」


 光線は間違いなくクルーエルからの攻撃だったのだろうが、ミューミューのサポートで直撃した割には削れられずに済んだ。

 しかしサポートをしてくれるはずの味方から手痛い攻撃を受けたレミングスは大きくライフを減らしていた。


 好機(チャンス)だ。

 今クルーエルは大技を放ったばかり。そしてこっちは2人揃っている。

 彼はその状況の不利を分かって、味方にダメージを与えてでも既にライフを減らしている俺への攻撃を優先させたのだ。

 だがそれは失敗した。逆に俺たちに大きく天秤は傾いたのだ。


 俺は振り返り、カードを切るべく手札から1枚のカードをアクティブ化させる。

 彼女はおそらく既に逃げ始めているだろうから、それを逃さぬべく打とうと思った俺の目線の先には、体をくの字に曲げて宙を舞うレミングスの姿だった。


「は?」


 彼女の影になる場所で、大きく蹴り上げた右足とそれを支える左足で直立しているのは、もちろん心強い味方のミューミューだ。


 俺が攻撃から立ち直るとっくの前から動き始めなければこんなことにはならない。

 早い。いつもよりさらに早いぞ。


 彼女は無表情のままコンボをスタートさせた。

 空中への追撃に特化した通称「昇竜」と言われる上空へのアッパー攻撃を一発。

 さらに高く跳ね上げられたレミングスは、体を捻って体制を立て直そうとするが、ミューミューが連続して放った水流によって阻害される。

 ダメージももちろん入り、苦々しげな顔をするレミングスが苦し紛れに撃った攻撃はひらりと回避していた。

 そこからまた怒涛の攻撃。反撃も無くなり、レミングスは木の葉のように空を何度も舞っていた。


 なんだか鬼気迫る迫力を感じる……。

 おっと、俺も見ている場合じゃない。このまままとめてクルーエルの攻撃を食らったら面倒だ。どんどん追撃しよう。


 もう数体だけになっていた人形が襲ってきたので、それらを踏み台にして無理やりジャンプ。さっきまでのデッキだったら、ここでレミングスにハンマーでも一発ぶちかますパターンになるだろうが……。


 俺は空中でショットカード【独楽割(こまわ)り】をアクティブ化させながら、体をフィギュアスケートのジャンプのようにぐるりと回す。

 そのアクションに呼応し、自分の体にまとわりつくように疾風が渦を巻いた。触れたものを切り裂くその風は、複数に囲まれた先程のような状況でこそ輝くカードなのだが、あえて今まで我慢していた。

 なぜなら……。


「ミューミューさんよろしく!」

「行きます!」


 彼女が再度放った水流による攻撃が、()()()()()()()()

 クルーエルのように味方ごとダメージを与えるために撃ったわけではない。

 その攻撃が俺に――いや、俺の周囲の風に触れると、そのコマのような回転に従い周囲に放射状に水を散らした。それはただの愚鈍な通常の水流攻撃ではなく、急激に勢いが加った鋭い斬撃へと変わり、逃げ場の無い空中のレミングスを切り裂いた。


「っしゃあ!!」


 やった。当たった。


 名付けてウォーターカッター。ダイヤモンドをカットするには同じダイヤモンドを使うか、高速で撃ち出される水を使うそうだ。つまり鋭く射出された水は超切れる!

 ゲーム的にこの行動が意味があるかを検証した結果、驚くことに1.8倍ほどのダメージ量になっていた。わざわざ味方へ攻撃を撃たなければならない分、なんらかの補正(ボーナス)が入ってくれるのかも知れない。


 画面上ではこれによってレミングスのライフは大きく減ったのが見える。後少し。しかし流石に邪魔が入るタイミングだ。


 着地の硬直を狙われるかと思ったのでミューミューにカバーに入ってもらいつつ警戒したが、攻撃は無かった。

 ランダムに左右に動き、遠方からの攻撃を回避する動きもしつつ、レミングスに最後の攻撃を仕掛ける。

 いや、待て。


 このタイミングで攻撃が無いということは、既に遠方からの精密射撃(スナイピング)はやめたか? それとも撃てないのか?


 今更だが、彼らの作戦はおそらく「長距離攻撃特化の主砲による攻撃」と「近接戦闘と奇襲による足止め」だろう。

 立ち回りの上手いレミングスが俺たちを翻弄し、そっちに気を取られている間に視認できない距離からの大技を狙うという手はずだったはずだ。

 しかしそれはかなりのリスクを伴う。だからこそ俺しか見えない状況でも先手を取って奇襲を仕掛けて来たのだろうし、その作戦を無理やり突破された今、レミングスは手痛いしっぺ返しでピンチという訳だ。


 つまり、今クルーエルは焦っている。ここでレミングスが撃破されれば、すぐに追撃の手は自分に迫り、2対1でしかも長距離特化では一瞬でお終いだ。

 俺たちの能力を知っていてもそれはどうしようもない。だからこそ、彼は「あえて」動かないのだ。


 千載一遇のチャンスを狙うならどこだ?


 それはもちろん、レミングスへと止めを刺そうとした瞬間だ。

 不味い。ミューミューは殺る気だ。俺が止める間も無く、ショットカードのアクションで大きく振りかぶっている。

 俺は叫んだ。


「ストーーーーーッップ!!!!」


 びくっ、とミューミューの動きが止まり、瞬時に跳ね避けた。

 直後、彼女が立っていた位置に無音で大きな穴が空いた。

 【虚空穿(こくうせん)】だ。危なかった。

 あれは威力も高く予測しづらいが、本来は長距離の攻撃ではなく中距離用のショットカードだ。距離延長が入っているのか?


 ステップを踏みながらミューミューがレミングスを挟み込むように俺の正面側へと回った。

 その間にゆっくりとレミングスが立ち上がり、俺達を()めつけながら口を開いた。


「あーあ、今のを避けるのか。さすがだねぇ」


 彼女のライフは後少し。俺もさほど変わらない、ギリギリ。

 しかしミューミューとクルーエルのライフにはまだ余裕がある。


 つまり、俺とレミングス、どちらが先に落ちるかで勝負が決まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ