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ロマン砲主義者のオーバーキル  作者: TEN KEY
問5 面の表裏を同時に照らせ
65/92

答5-7

「あ、あぁ、すいません」


 俺は頭を左右に振った。疲れているだけだ。なんでも無いはず。彼はただの腹黒だ。


「その質問、どういう意味ですか?」

「どういう、とは? 言葉どおりの意味です。あなたは、今まで玻璃猫様の周囲にいなかったプレイヤーですよね。それがどうしてこんな状況になっているんですか? とお聞きしたいだけです」


 なんだ、それだけか。さっきのどえらいプレッシャーをかけられる程の質問じゃなかろう。


「俺とミューミューさんが出会ったのは本当につい昨日ですから。それもただの偶然です。たまたま火香と俺の野良試合のリプレイを見た彼女が、どうしてか興味を持ってくれて声をかけて来たんです」

「ほう……?」

「そこから何故か試合をする運びになって、あとは会見に。彼女とのペアなんか場に流されてしまっただけかも知れませんが……」


 きらり、とリーダーの目が鋭くなる。そうだよなぁ。やっぱよく分かるはずだ、目さえ見れれば。


「でも、状況には流されましたが、俺の意思までただ流されてきた訳じゃあありません。自分で決めたんです。やるとなったら、徹底的にやりますよ。本気でね」

「…………そうですか。それなら全て把握しています」


 ぎし、とリーダーは椅子を鳴らした。


「私が心配していたのは、玻璃猫様が選び取った今の状況自体ではありません。あなたという存在は今、世間でも、私達のグループの中でも不確定です」


 リーダーはぱっ、と何かのデータを二人の間に表示させた。

 よく見ると、それは俺の今日のランク戦の戦績データだ。手を回すのが早い。


「早速ですが、観戦させてもらいました。凄いですね。まだ下位ランクとは言え、驚異的な結果です。あなたは強い」

「……ありがとうございます。褒めてくれるだけですか?」

「ははは、面白い返しですね。違いますよ。私がさっき戦おうとした理由に繋がります」

「理由……?」


 てっきり俺は、ミューミューとのペアを認めるかどうか戦闘で試そうとでもしたのかと思っていたのだが。


「私は誰かとゲームで戦ってその人の本質を知れるような洞察力も慧眼もありません。それに私じゃあなたには多分、勝てません。それくらいなら流石に分かります。……ですから、さっきのあれはただのポーズですよ」

「……なるほど。俺と戦って、わざと負けてグループに認めさせるんですね?」

「まさか、違いますよ」


 ありゃ、これで3敗だ。俺の脳細胞は腐ってる疑惑が浮上する。


「私ごとき、37人の四天王ブフォッ!」


 自分で作った設定で吹き出すなよ。


「……すいません。彼らの中で最弱と言われているプレイヤーより弱いですから。そんな雑魚が戦ったところで誰も何も認めませんよ」

「じゃあさっきの『暴走モード』って?」

「いや、お恥ずかしい……私はこと戦闘となると見境がなくなるので、しばしばご迷惑をおかけしてしまうんです……」

「へぇ……」


 深く聞くのはよそう。


「ポーズというのは、あなたがどういう時にどういう選択をするのか、見せて欲しかったんです。あなたと言うプレイヤーのデータは、昨日の会見とこの戦闘データと……後はさっき孤狼丸くんから色々とうちの者が聞き出しをしたと思いますが、まだそれだけです」

「つまり、俺自身に興味があるということですか?」

「ええ、それはもちろん。ずっと私達が『管理』してきた玻璃猫様に、初めて出来たご友人ですから」


 げぇ……めちゃくちゃ嫌なキーワードが出てきてしまった。さっきのプレッシャーも彼のドス黒さも、これが原因じゃなかろうか。


「私達のグループのメンバーは、すべからく玻璃猫様を愛しています。人によって表現方法も、愛情の深さも違いますが」

「ああ、さっき教えてくれた派閥ですか?」

「そうです。ですが、派閥を超えて共有される意思があります」


 彼が表情を消して、俺にぐっ、と顔を寄せる。


「彼女を傷付けたり、貶める事は――」


 リーダーの目が、俺の瞳を覗き込む。それはまた深い闇の色をしていた。


「――許しません」


 俺は彼に触れないように小さく頷いた。


「もちろん、それには俺も同意です。まだたった1日ですけど、彼女はすごく面白い人だ。傷つけようなんて微塵も思いませんよ」

「……なら良かった」


 すぅ、とリーダーは元の位置に腰を下ろした。

 そういえば今の台詞、チョッキも似たような事を言っていた気がする。

 ニコニコとまた害の無い顔にもどったリーダーは、話は終わったとばかりに優雅にイミテーション紅茶を傾けている。やたらと形に拘る人だ。


「ところで、昨日の会見なんて、あんなのよくスルーしてくれましたね」

「当然皆で配信は見ていました。あれは最後の発表だけが予想外でしたから、まさかこんな急に大きく彼女が動くとは私達も思いませんでしたよ……」

「やっぱり急でしたよね。今になって思えば、ここのメンバーのぴょん吉が手伝ってくれてるんだから、公認みたいなものでしたか?」

「あの子はグループの中でも私の直属ということになってますが、ちょっと特殊なんです。会見を手伝ったのも彼女の独断で……。まぁ、コントロール出来るタイプの子ではありませんから」


 はぁ、とため息を吐いた彼の姿は、さっきとは違ってやけに小さく見える。

 普段から蹴り上げられてたりするんだろうか。


「……あ」


 俺は会見の事に頭を巡らせ、ふと一つの出来事を思い出した。


「会見で、ミューミューさんに誰が聞いてもアレな質問をした人、いましたよね?」

「あぁ、彼ですか」


 そう呟くように言うと、リーダーはゆっくり立ち上がりながら夕日に沈む橙色の海を背景に口を開いた。


「もう、いないんじゃないですかね? ()()()()


 そうにっこりと微笑む玻璃猫組のリーダーは、とても澄んだ瞳をしていた。


 やっぱ怖ぁ……。

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