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ロマン砲主義者のオーバーキル  作者: TEN KEY
問2 全てを注ぎ込む方法を示せ
19/92

答2-4

挿絵(By みてみん)




 俺は訳も分からず連れて来られた「会場」に到着した。

 ロビーの端に設置された「グループルーム」と呼ばれる扉のある空間だ。

 グループルームは普段はディスカッションや仲間内の雑談に使われる場所で、入る人数により部屋が自動的に大きくなる機能があるらしい。

 パーティを組んでいるプレイヤーたちの相談の場としてだったり、不特定多数に見られたくない集まりなんかでは丁度良いらしいが、俺はもっぱら開放感を求めてロビーでくつろぐ事が多いので利用したことはなかった。

 空間としてはかなり装飾が少なく、純白の壁はある種の圧迫感もあり、重役が集まる会議室のような雰囲気を醸し出していた。

 扉の奥には一段高い場所に長机が設置されていて、その机に沿って丸椅子が数脚。

 丸椅子の対面側ーー会場全体は、長椅子が整然と並んでいた。


 なんかこの光景、見覚えがあるぞ?


「りょーちんはこっち」


 俺はその一段高い場所に、みずちに引っ張られて登る。

 後ろからついて来た見知らぬ集団の皆様は、ぞろぞろと長椅子に着席していった。しかも椅子が足りず立っているプレイヤーも多い。

 なんだこの人数は。50人以上はいるぞ?


 俺は渋々丸椅子に腰掛けると、ちゃっかり素知らぬ顔で隣に座ったミューミューに小声で話しかけた。


「あのさ、ナニ、コレ?」

「私もまだあんまり状況の理解が出来てる訳では無いんですけど……まぁ、そうですね。いわゆる『会見』じゃないですか?」


 あぁそうだ。見覚えがあると思った。

 俺が座ってるここ、テレビなんかで報道陣に向かって議員や有名人が座るような場所だ。

 でも、


「何の?」

「私と、シトラスさんの」


 はて、何をおっしゃっているのかこの娘は。

 何を会見する必要があるんだ。俺もこの娘も、ただの一般人では?

 一般人は会見などしない。

 俺は何を見落としてるんだ? 考えろ。

 まず俺は100%純正の一般プレイヤーだ。これは間違いない。

 となれば、ここにいるもう一人、対戦相手のミューミューその人に原因があるということになる。

 なるほど、そうなると大体繋がる。おかしいとは思ったんだ。

 火香に憧れていると言っていた割に、間違いなく実力はみずちよりも上。いや、上どころか、アバターコントロール、カードプレイ、冷静な判断と大胆な攻撃、全てが高レベル過ぎた。

 アレがただの一般人である訳が無い。なぜそれを失念していたんだ。

 みずちでさえランク9位なんだから、もっと上、もしかすると片手(5位内)ランカーか?


「あー、ごほん。マイクテス、マイクテス。本日は晴天ナリ!」


 俺の右側に立つみずちが、マイクも無いのにアホなマネをしている。ボイスを「拡声モード」にして会場全体に響くように変更していた。


「お待たせしました! ここにお集まりの皆様方は、ほとんどが先程の中継をシアターで見ていた方々だと思います。そう! 気になりますよね? 彼のこと」


 会場がやんややんやと湧く。ノリは良いようだ。


「ではご紹介しましょう! 今回の主役、シングルランク2位、ほぼ無敗の『玻璃猫』ことミューミューちゃんを見事に撃破したラッキーボーイ『シトラス』でーす!」


 会場の照明がほとんど消え、パッと俺のところに大きなスポットライトが当たった。

 

 ――なんだこの茶番は。俺にどうしろと言うのだ。

 みずちが横から小声で「あいさつ! 自己紹介して!」とつついてくる。


 そうか、なるほど。

 俺は俺の役割とやるべきことを理解した。

 ここまで来たら乗るしかない、この大波(ビッグウェーブ)に。

 俺はすっくと立ち上がった。


「どうも、初めまして。埋もれた才能、野に潜んだ無名の精鋭。自らこう名乗るのはいささか不躾だとは思いますが、私の力はもう皆さんご存知かと思います」


 会場が騒ついた。


「普段は火香のランク戦を影からバックアップする隠れたサポーターでしたが、今回ついに表の世界に出る事となりました、シトラスと申します。以後お見知り置きを」


 パチパチと散発的な拍手が起こる。

 どうだ? このつかみ。臭かった?


 ノリノリじゃん、とみずちに茶々を入れられた。

 まぁな。俺は期待を裏切らない男だ。

 ただ、後からこのノリを思い返してちょっと身悶えするかも知れないが、今その事を考えるのはよそう。

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