ヴェグルの異変
「さぁー!進め進めー!」
フューゼに肩車され上機嫌のリヴィア。
「お、おいあんまり暴れるな!」
「案内してやるんだから文句言うんじゃないヴァンドラ!」
「……モナもしたい」
「ダメじゃダメじゃ!モナのためにヴェグル洞窟に向かってるんじゃから我慢しろ」
フューゼの頭にしがみつくリヴィア。
「むぅ……。わかった」
「そうじゃ、それでいい」
嬉しそうに足を動かすリヴィア。
「リヴィア、ここからどのくらいかかるんだ?」
「問題が起きなければ30分もすれば着くじゃろ」
「なら入口に着いてからシルビア召喚するか。」
「それがいいと思うぞ。……ん?」
「どうした?」
上を向くフューゼ。
「奴等がこんな所にいるのは珍しいな」
リヴィアが指を差す。
「奴ら?」
フューゼがその先を見ると
淡い黄色のぷるぷるした生き物が大量にいた。
「……なんだあれ?」
「スライムじゃ。ただあいつらはヴェグル洞窟にしか生息してないギルドスライムという種類だ」
「ギルドスライム……?」
「ヴェグル洞窟の入口付近に群れる生物でな、あまり強くない割に珍味として重宝されているギルドランドの名産品じゃな。しかし本来ここまでギルドランドの近くには来ないはずじゃが……」
「珍味……。シルビー喜ぶかな?」
「まぁ食が好きな奴なら喜ぶだろうな。他の国で買うと高いらしいからな。私様はいらんが」
少し考え込むリヴィア。
「ちびモナ、いい機会だから技の練習にでも使うといい。倒した奴をあとで小娘に渡してやれば喜ぶかもしれんぞ?」
「……!!練習もできて…シルビアも喜ぶなら…する…!」
意気揚々とギルドスライムに向かっていくモナ。
「頑張れー!モナちゃーん!」
それを追いかけるアリス。
「……ヴァンドラ、少しいいか?」
「ん?どうした?」
「ギルドスライムはな、あんな色をしているが陽の光を嫌う。そんな奴らがここまで来ている……。その意味が分かるか?」
「え……?ごめん、わからないな。」
「何か洞窟であったのかもしれん。ギルドスライムはそれから逃げてきたのかもしれない」
「何かから逃げてきた……?」
「まぁあくまで憶測じゃがな。ただ、万が一に備えてモナのウォーミングアップは済ませておいた方がいい。そして、モナが危険になればすぐにでも助けられるように準備しておくべきだと忠告しておくぞ」
「なるほどな……。ありがとうリヴィア。」
「褒美は今夜、魔力を私様に注いでくれればそれでいいぞ?」
にやりと笑うリヴィア。
「や、やめろよリヴィア。」
「くくっ!初心じゃな!……期待はしておくぞ?」
軽く頭に抱きつくリヴィア。
……リヴィアとずっと一緒にいるとまずいな……。
積極的過ぎて我慢がキツいぞ……!!
「何黙って赤くなっとるんじゃヴァンドラ。私様しか考えられないのは嬉しいが今はモナにも気を配ってやれ」
「な、あ、あか、赤くないから!!……取り敢えずありがとな。モナをいざという時に助けられるよう気を張っておくよ。」
フューゼとリヴィアがそんな会話をしてる中
モナは大量の焼きギルドスライムを生産していた。




