ギルドランドの文化
「あそこに見える建物が頭領のいつもいる場所だぜ。」
男が指を差す。
「毎回王に会うまではスムーズなんだがな……。」
「そうですね。ここまで簡単にどの国でも王に会えるとは思いませんでしたね」
「シルビアもそう思うか?」
「ええ。普通会えないと思いますが……」
その時だった。
「止まりたまえ、君達。」
突然話しかけてきた金髪の長身男。
「ん?なんだ?」
「失礼、男性である貴殿に用は無い。」
そういうとフューゼから目線を外す男。
視線の先にはシルビアとアリス。
なんだこいつ……。めんどくさそうだな……。
「我が名はホルホ・ヘッツ。ここで傭兵稼業を生業としている紳士だ。以後お見知りおきを。」
深く礼をするホルホ。
「……何の用ですか?」
睨むシルビア。
「いえ、そちらのお嬢さんに質問があるのだが。」
アリスに視線を向けるホルホ。
「私?何かな?」
「貴女はサキュバス族とお見受けしたが正しいかな?」
「……そうだけど…どうかしたのかな?」
「貴女にはなんの恨みも無いがここで決闘して頂こうか。」
そう言うとかなり細身の剣を取り出したホルホ。
「え!?ちょ、ちょっと待ってよ!何で!?」
慌てるアリス。
「何勝手なことを言っているんだ?決闘だと?」
ホルホを睨むフューゼ。
「我が師は百戦錬磨の男だったが、ある日を境に廃人と化してしまった。今ではうわ言のようにサキュバス…サキュバスと繰り返すのみ。何があったのかは知らんが敵討ちという訳だ。」
アリスに説明するホルホ。
「そして君、この国ギルドランドは初めてか?」
目を細めフューゼに話しかけるホルホ。
「あ、あぁ。」
「では教えてやろう。ギルドランドでは決闘が合法化されている。そして決闘を申し込まれた場合拒否する事は出来ない。拒否すればそれは決闘の敗北を表し相手の要望を飲むことになる。」
「何?そうなのか?」
道を教えてくれていた男に振り向くフューゼ。
「間違いないぞ。知らなかったのか? 」
「くっ……!」
奇襲は警戒してたが避けられない個別の戦闘なんて
想像してなかった……!!
アリスは戦えるのか……?
それよりも敗北時の相手の要望は何だ?
上半身裸の男を3秒ほど見たあとに視線を戻すホルホ。
「敗北時にはサキュバス族の全てについて研究させてもらう。さぁ、どうする?」
「う……」
視線が落ち着かないアリス。
「待ちなさい。私が相手をします」
ずいと前に出るシルビア。
「シルビー……!!」
「お嬢さん、僕と触れ合いたいのはわかるが、今はサキュバス属に用があるのだよ。」
「気持ち悪い。反吐が出ます。私は元エンプーサ。サキュバスについても詳しいですよ」
「気持ち悪い……だと?口に気をつけなさい。エンプーサにも恨みがあるから後で相手をして上げよう。……まずは君だ。」
アリスに剣を向け直すホルホ。
「弱そうな相手にしか挑めないのですか?それとも私に負けるのが怖いんですか?腰抜け」
「腰抜け……?」
剣をアリスからシルビアに向け直すホルホ。
「この僕が腰抜けだと?その身を持って貴女の愚かしさを教えて差し上げましょう。」
「では私と決闘をする……との事でいいんですかね?」
「もちろん。どちらにしても倒す予定だったさ。君が負けたらエンプーサについて全て吐いてもらうよ。」
「シルビア!!いざとなったら俺が……!」
「いえ、ヴァンドラ様。この国でのルールに従った方がこの先有利に進めます」
「だけど……!」
決闘の文化なんて知らなかったぞ……!!
皆を守るのが俺の務めだろう!
「ヴァンドラ様、私を信じて下さい。私は足でまといでは無いと仰って頂きましたよね?」
強くフューゼを見つめるシルビア。
……っ!!シルビア本気だな。
そうだ、仲間を信じる事も王の務めだ……。
口だけじゃなく信じるんだ!!
「……わかった!信じるからなシルビア。」
「お任せ下さい」
「シルビー…私が……!」
「大丈夫。あんたはもっと得意な分野がある。私じゃ出来ない事。こういう事は任せなさい」
そういうとシルビアはナイフを取り出し構えをとった。