キャラットとの別れ
フューゼは1人謁見の間に向かい歩いていた。
……ハウナズオには会いたくないなぁ……。
ヴァンドラに対してかなり警戒してたし
マリーがいない状態だと追い返されそうだ。
「フューゼ……さん?」
「うぉ!?」
不意に後ろから声がして驚くフューゼ。
振り向くとぽかんとしたキャラットが
立っていた。
「なんだキャラットか……ちょうどよか「こっちに来てください!!」」
うおお!?何だ!?
急に手を引きながら走るキャラット。
暫く走り建物の影に隠れる。
「ど、どうしたんだ?キャラット。」
「はぁ……はぁ…………フューゼさん……皆様無事ですか?」
「えっ?無事ですか……?べロウズの事がもう広まってるのか?」
「べ、べロウズ!?どういうことです!?」
動転するキャラット。
「お、おい待ってくれ!まずキャラットの話を聞かせてくれ!」
「す、すみません」
呼吸を整えるキャラット。
「実は、フューゼさん達が出たすぐあとのことです。マリーさんがフューゼさん達が無事に帰れば渡航許可を出してもいいけど無理だろうって話しをしてたんです」
「……それで?」
「あたしはどういうことですか?と質問しました。するとマリーさんがシレネは海神竜リヴィアの生贄を育てる土地。しかし最近生贄の儀を怠っていたのでリヴィアが暴れているだろうと。そしてフューゼさん達が勝てることは無いだろうって……」
「……マリーは俺達を間接的に潰す気だったのか。」
「それであたしは適当に話を合わせた後フューゼさん達が心配で外に出たんです。そして戻ろうとしていたらフューゼさんがいらっしゃった……これが事の顛末です」
「……スノーフィスにも要注意だな。」
「そうですね……。それでフューゼさん……何があったんですか?べロウズって……?」
「シレネにつくとべロウズが来たんだ。それで…本当にひどかった。何も出来ないうちにシレネは皆殺しされて誰もいなくなった。」
「べロウズ……!」
顔を歪ませるキャラット。
「そしてその後にリヴィアも出てきた。ただ贄が無かったから力を発揮出来なかったみたいでな。何とか勝利して今は船に乗ってる。」
「…………え?勝利して……?船に乗ってる……?」
「あ、あぁ。なんか懐かれてな。付いてくるらしい。」
「ちょっと待ってくださいね……。理解がすぐには出来ませんが…………。あの海神竜リヴィアが…えっとフューゼさんに懐いて付いてきたんですか?でもリヴィアってスノーフィスの守護神みたいなものですから契約があるのでは?」
「贄の契約が守られてないから破棄できたらしいぞ。俺にはよくわからんが。」
「……なるほど。それを今から報告に?」
「いやマリーには会うなってリヴィアが言ってるからキャラットに挨拶しに来たんだ。」
「お気持ちはありがたいですが……。マリーさんに報告されないなら急いで出航した方がいいと思います。」
「そうなのか?」
「リヴィアっていうのはフューゼさんが思っている以上に凄い存在なんです。リヴィアでスノーフィスは世界の海を牛耳りましたから。そんなリヴィアが居ないとなれば大パニックです。すべての環境が大きく変わると思います」
「そ、そんなにか!?」
「はい。ですがあたしやレベッカ、そしてグリーディアはフューゼさんの仲間です。支援します」
強く言い切るキャラット。
「リヴィアが仲間にいるということは海を自由に渡れます。すぐにでも出航して下さい」
フューゼを見つめるキャラット。
そして両手でフューゼの手を握る。
「御武運をお祈りしております。何かあれば何時でもグリーディアへお越し下さい。」
そして手の甲にキスをするとフューゼをぽんと押し
手を降り出した。
フューゼは顔を赤くしながらも走り出し
そして事の重大さに
ようやく気付き始めていた。