冒険の始まり
「安心せぃ、貴様は名持ち。さらに“ヴァンドラ”じゃぞ?」
ネイヴァー?また新しい言葉だな…。
「なんじゃ?貴様も転生前はモエブチとかいう名があったじゃろ?どのような力が使えた?」
「え?いや俺のいた世界で名前自体には力とか関係なくて…個人を表すものだったので……。何か名前があると出来るものなのですか?こちらでは」
「魔力は無く名の概念はあるが大した意味を持たん……。難儀な世界におったんじゃのう。儂等のこの世界では名は大きな意味を持つ」
「名前が……?」
「そうじゃ。この世界には強大な力を持つ“王”が何人かおる。だいたいは自分の国を持つのじゃが、名というのは王に認められた者が授けられるものでな、スキルという何か特筆した能力を持っていたり戦闘力が高かったりとするんじゃ。そして名がある者を名持ちと呼ぶんじゃ。逆に名前を持たぬ者を名無しと呼ぶ」
なるほど……。
簡単にいえばすごい奴らしか
名前を持ってないのか。
スキルってのは“ヴァンドラ”にもあるのか?
聞いてみるか。
「ヴァンドラのスキルは何かあるんですか?」
「ククッ。何かじゃと?まずは夜王として“名付け”、儂はこの城自体にも付与しとったが“魔力防壁”、後は“眷属契約”、“夜王解析”、まぁこんなところかの?何故か貴様は“詠唱破棄”を最初から持ってたようじゃが」
結構あるようだけどよくわからないぞ?
とりあえず能力はいっぱいあるという事か?
ん……?
ちょっと待って“ヴァンドラ”って
夜王なの?え?王?
「おっと、もう質問は受け付けんぞ。儂ももう疲れた。後は道中にアリスにでも質問しろ」
道中に…ってことは一人旅じゃなかった!!
それなら頑張れる気がする。
しかもアリスだし!
まぁこの世界についてやヴァンドラについて
質問しないといけないな。
「貴様らに命令じゃ。今すぐ支度しこの世を掌握せよ」
ーアリスの部屋ー
「いきなり世界征服してこいなんてヘルシャフトさんはすごいな!」
笑いながら話しかけるが気に食わない表情のアリス。
「あ、ごめんね?急に大変な旅に付き合わせることになって。」
「それはいいんだけど……」
うーん……何に怒ってるんだろうか。
考えてもわからないし……聞いてみるしかないか。
「アリス、何か俺は嫌な事しちゃったかな?」
「そんな事ないよ……。でも名前……」
名前……?
あぁそういうことか!
「好きに呼んでくれて大丈夫だよ?けんぞくんだっけ?何だか可愛く思えてきたし!」
「ダメ……。ヴァンドラ様のスキルで決定された名前を知りながらほかの名前で呼ぶ力なんて私にはないよ」
そうなのか。
かなり名前の力って強いんだな。
その名前を知っていると
別の名前で呼ぶ事すら出来ないのか。
「あれ?でもアリスも俺に名前つけようとしたってことは王ってやつなの?」
「違うよ!眷属の契約召喚で呼ばれた眷属には召喚者が名前を付けられるの。だから3日くらい考えたのに……」
なんだかかわいそうだな……。
何とかしてあげたいけど…。
そうだ!
「ニックネームならどうかな?」
「ニックネーム?」
「例えばヴァンドラをヴァンみたいに呼びやすくするのは?それもできないかな?」
「たしかに既にある名を短縮したりして呼ぶことはできるよ」
「じゃあそれで!なにか呼びやすい呼び方考えてよ!アリスだけのさ!」
「私だけの呼び名……ありがとうヴァンドラ様!出発までに考えるね!」
さっきまでほとんど何もしてなかったのに
すごい勢いでバックに色々いれだしたな……。
まぁ元気になってくれてよかっ
「いくよ!!」
「え!?はやいな!」
「もう考えついたの!頑張ろうね!フュゼ様!」
フューゼを略してフュゼか。
単純すぎるがアリスらしい。
「さぁ行こうか」
俺はアリスに連れられ城の出口へ向かうことにした。