気付かぬうちの既成事実
「様々な属性を……ヴァンドラ、貴様が操れるとは到底思いもしなかった……」
「普通は色々な属性使えないらしいからな。」
「そうじゃ。おかしいぞ貴様」
「ヴァンドラ様にそのような口をきかないでください」
真顔のままシルビアがリヴィアの腕を固める。
「いだだだだっ!!ヴァンドラ!貴様!!この女を何とかしろ!」
「……シルビアー。離してやれ。」
「ヴァンドラ様!しかし……」
「シルビア。」
シルビアを見つめるフューゼ。
「……わかりました」
シルビアがリヴィアを離す。
「全く……馬鹿力だし重いんじゃ!」
リヴィアがそう言った途端シルビアが
拳骨を落としゴンと鈍い音が響いた。
「いっだあぁぃ!!ヴァンドラ!!貴様の手下は私様を何だと思っとるんじゃ!!」
「さぁ、俺にはわからないけどリヴィア、立てるか?」
「無理じゃ。まだ小娘の重みが残ってるからな」
「……今なんとおっしゃいましたか?」
「おい、2人ともその辺にしとけ。リヴィア、立てるな?」
「冗談などではなく今は立てない。貴様のせいだぞ、ヴァンドラ」
そういうと目を逸らすリヴィア。
「なに?攻撃は特に当ててないし俺がなにかしたか?魔力でも切れて力が入らないのか?」
「くくっ!あんなことをしておいてしらばっくれるのか?ヴァンドラよ」
顔を赤らめながらにやりとするリヴィア。
「あんなこと……?」
ギロりと睨むシルビア。
「ちょ、ちょっと待て!何のことだ!?」
「見るからにそこの小娘はヴァンドラの事を好いておるようじゃから今はやめておくか。くくっ!」
「……ヴァンドラ様?どういう事ですか?」
フューゼに詰め寄るシルビア。
「ちょっと待て!俺には何のことだか……!!」
「照れる気持ちはわかるが既成事実は覆すことは出来んぞ?ヴァンドラ」
「……既成事実って?何があったの?フュゼ様」
アリスもフューゼに詰め寄る。
オロオロするモナ。
「待て待て!!どういうつもりだリヴィア!」
「どういうつもりも何も私様は事実を述べているだけじゃ」
「フュゼ様、あの炎の中で何があったの?」
「いや、何も無いぞ!?リヴィアの魔法を邪魔したりしてたくらいだぞ!?」
「リヴィア。本当ですか?」
リヴィアを睨むシルビア。
「……小娘に呼び捨てにされるのは納得いかんが本当だぞ」
「その後はフュゼ様が水に捕らわれてたと思ったら何か中で空間作っててそこに居たよね?あれは何してたの?」
……何だかアリスも怖いぞ…。
「あれは風魔法で空間を作っていただけだが…。」
「それでその風魔法の空間を破裂させて脱出したの?」
「いや、違うぞ?水魔法に対して水の魔力を注いで水流を作った。そしてその水流に風魔法の空間をのせて脱出したんだ。」
「ちょちょっ、ちょっと待て下さいヴァンドラ様。今なんとおっしゃいましたか?」
「え?いやだから風魔法の空間を水流にのせてだな……。」
「…………その水流はどのように作ったのですか?風魔法で?」
「いや、俺の水魔法だと思う。水をイメージしてそれを流し込む……みたいな。」
フューゼがそういった途端シルビアとアリスが
固まった。
「あれだけ照れていたのに自分から言うとはやはりヴァンドラ、貴様は面白いな」
満足気なリヴィア。
「ちょっと待ってくれ……どういう事だ?」
はぁっ。と露骨に深いため息を吐くシルビア。
「ヴァンドラ様、簡単に話します。各属性魔法には様々な特色があります。その中でも水魔法は魔力同士が混ざりあいやすいという特徴があります。」
「あ、あぁ。」
「その特徴から発展した文化で水魔法使い同士はその……魔力を混ぜ合うという文化があるのですが……」
「そ、それがどうしたんだ?」
「つ、つまりですねその文化の意味合いとしては親しい仲を表す……といいますか…」
なんだこの空気は……俺は何をやらかしたんだ……。
「結論からいうと異性間での、さらに水中を主にする種族での魔力混合は他種族でいうところのプ、プロポーズであったり前戯……及び、その、性交……に等しい意味を持ちます」
「は……?え…………?」
プ、プロポーズ?前戯?せ、性交?
何言ってるんだ……?
そんなことしてないし……したこともないぞ……!?
「ヴァンドラ、本当に殺そうと、贄にしてやろうと思っていたが貴様の魔力が流れてきた時に私様は感じたよ。あぁ、私様は貴様の物になるのか。とな」
顔を真っ赤にするリヴィア。
シルビアの方に振り返るフューゼ。
「マ、マジ……?」
「マジです……」




