圧倒的魔力
「お前……グリーディアでは何も出来なかったのに今何をした?」
「答える気はありません」
「おっほほ!!けっこうけっこう!なら死ね。」
ベロウズが手を振るうと炎の弾が飛び出し
キャラットを襲う。
「っはぁ!!」
パァンと弾くキャラット。
「どうです…か?」
キャラットが前を向くとベロウズは姿を消していた。
「なるほど、魔力を弾き返してたんだねー。」
「!?」
キャラットの真後ろに
突如現れ耳元で囁くベロウズ。
反射的にキャラットが
拳を振るうが空を切った。
「あの日やけに魔法が当たらなかったのはおまけちゃんのせいだったんだね。納得納得!!」
「……そうです。あなたの魔法など全て弾き飛ばします」
「あ?ボクちん面白くない冗談嫌いだじょー?」
「冗談ではありません」
「おわっほほ!!なら弾き返してみなさい!ほらほらほらぁっ!!」
ベロウズが両手を広げくるりと回ると風狼のような魔法が3体現れた。
「やぁっっ!!」
順に魔法を撃墜するキャラット。
「おっほほ!!やりますねぇ!!もう1度落とせるかなぁ?」
大きく振りかぶるベロウズ。
構えるキャラット。
「……なーんて!嘘でしたー!」
ベロウズが下から上に手を挙げる。
するとキャラットの足元の土が足を囲み
動けなくなるキャラット。
「くっ!」
「ボクちんの黄金の右足をくらいなさーい!!」
右足に尖った岩をまとわりつかせ
キャラットに向かうベロウズ。
「……動けない!レベッカ……!!」
「おわっほほほほ!!壊れなさーい!!」
バギィッ!!
鈍い音が響く。
「……やれやれ。ボクちん他人に構ってあげるのは好きだけど干渉してくる構ってちゃんは嫌いなんですよねぇ。」
「……悪かったな。遊びたいなら俺にしろ。」
フューゼがベロウズの足を受け止めていた。
足を降ろすベロウズ。
キャラットは気を失ってしまっていた。
「ボクちんの魔法を素手で受け止めるなんて何者!?……なぁんて言いませーん。順番待ちも出来ないなんて躾がなってませんねぇー。」
「仲間を守るのが俺の信念だからな。」
「おわっほほ!!その割におまけちゃんのおててはまっかっかですけどねぇ!あひゃーひゃひゃ!」
「……うるさい。これ以上は手出しさせないぞ。」
「弱い犬ほどよく吠えますねぇ。ほら、ワンって言ってみなさいな!!ほはーははっ!!」
笑い続けるベロウズ。
「まぁそこまで言うなら試してあげましょーう!」
突如5mほど飛び上がるベロウズ。
「受けきれるかなぁー?」
ベロウズが人差し指を立てると
地が揺れ空気が震えた。
何をする気だ……!!あいつは!!
そして高く掲げた人差し指の上に
強大な魔力の塊が現れる。
「そこにいたら危ないですよー?おわっほほ!!」
そう言うと腕を下に思い切り振るうベロウズ。
魔力の塊がゆっくりと落ちていく。
「シルビア!!アリス!!近くに来るんだ!!」
キャラットの周りに全員集めるフューゼ。
「フュゼ様!どうするの!?」
「一か八か魔力障壁を広げてみる!それで皆を守る!!」
「しかしヴァンドラ様!あの魔力量だと恐らくモナとホープが!!」
「ぐっ……!!どうすれば!」
どうしたらいい!?くそっ!!
考えてるうちにも
あの魔力はこっちに落ちてきてる!
くそ!!くそっ!!!
……皆を守るにはどうすればいい!?
「俺の魔力障壁であれを包めるか試す!!」
「ヴァンドラ様!?そのような事が出来るのですか!?」
「わからない……でも!これしか……」
言葉を詰まらせるフューゼの手に
自分の手を重ねるアリス。
「私はフュゼ様を信じてる。例えどうなってもフュゼ様と一緒なら怖くないよ」
ニコッと笑うアリス。
「アリス……。」
アリスやシルビアを見つめ
上を見直すフューゼ。
ここで皆を守れなくて王が務まるか!!
止めてやる!!
「うおおおおおおっ!!」
魔力障壁を広げるイメージをするフューゼ。
しかし展開される様子はない。
なんで出来ない!?
今まで魔力をイメージすれば
上手くいってただろ!!
フューゼは集中するが一切環境は変わらない。
落ち続ける魔力の塊。
そして眼前に迫る。
「くそっ!!すまない!!アリス!!シルビア!!皆!!」
覚悟を決めアリスとシルビアを抱き寄せるフューゼ。
しかし
ぽんっ!と間の抜けた音が鳴り魔力の塊は消えた。
……何が起きた?
状況も理解出来ず呆然とするフューゼ。
そこに響くおどけた笑い声。
「おわーっほほほ!!ひひっ!はは!ひゃほほほほ!!」
足でパンパンと音を鳴らすベロウズ。
「いやぁー傑作傑作!お間抜けな顔と絶望両方頂いちゃいました!!ほほほははっ!!」
「何を……言ってるんだ?」
「理解しなくていいですよー!にゃはは!!そんな事より!お前の魔力ならもっとまともに遊べたと思いましたがねぇ?足枷がおおすぎるんじゃないですかぁ?」
「足枷だと……?」
「そんなの守っても意味無いでしょう?どうせすぐに壊れちゃうのにさぁ?」
「黙れベロウズ……!!」
「おわっほほ!!とりあえずお前らは今壊すより後の方が面白そう!!それだけですよー!ではでは、またあいまっしょーう!!」
ベロウズが指を鳴らすと、
花火のような音と共に
煙を噴きながら上空に飛んでいき、
最後に弾けた。
血肉や臓物のような物がフューゼ達に降りかかる。
「皆助かった……のか。」
がくんと座り込むフューゼ。
「フュゼ様……!ありがとう……!」
そう言うアリスを見上げるフューゼ。
「……ごめんな、アリス…シルビア。怖かったよな。ごめん……ごめんな。」
そう言って強く2人を抱き寄せるフューゼ。
こうして夜王とボルシエオン帝国の司祭との
出会いは幕を閉じた。