名も無きヴァンドラの船
船で旅をすることになった時は
どうなる事かと思ったが、
今回は仕様上全く問題無さそうだな。
モナもホープもキャラットに
真剣に習っているし、
操作はまかせて俺は襲われたりした時
皆を守る事に集中しよう。
とりあえずアリスとシルビアに色々相談しなきゃ…ってあれ?
周りを見渡すフューゼ。
アリス達が甲板にいない……?
「アリスー?シルビアー?」
アリス達がいない事に気付き声を出すフューゼ。
「フューゼさん?どうされたんですか?」
フューゼの声に反応するキャラット。
「いや、アリスとシルビアが見当たらなくてな。」
「アリスさん達ならこの船の造りを確認すると仰って中に入っていきましたよ!」
そうだったのか……。
まぁ周りを見渡す限り他の船も見当たらないし
俺も中の確認を手伝うか。
フューゼが中に入ろうとドアを開けた。
「わぁっ!?」
その瞬間にアリスが飛び出し、フューゼに激突した。
そしてそのまま倒れ込み、アリスがフューゼに
覆いかぶさる形となった。
「いててて…ってフュゼ様!?ドアを開けようとしたら勝手に開いたからびっくりしたよー!」
「わ、悪いな。俺も手伝おうかと思ってな。」
これが噂の床ドンか……なかなかいいな。
「何をにやにやしてるのー?フュゼ様?…まぁいいけど名前呼ばれたから急いで来たんだけどー…シルビーは遠くの区間見に行ってくれてるから少し来るの遅いかも」
アリスがそう言っていると走り音が聞こえてきた。
そして息を切らしたシルビアが走ってくる。
「ヴァ……ヴァンドラ様…お呼びですか…って何してるんですか!!」
「え?いやこれは事故でだな……。」
「どんな事故ですか……。そんな顔じゃ説得力もありませんよ!アリスも早くどきなさい!」
くっつこうとするアリスを引き剥がすシルビア。
「……それでお呼びいたしましたか?ヴァンドラ様」
「あぁ、船内の確認してるんだろ?俺も手伝うよ。」
「いえ、このような事でヴァンドラ様のお手を煩わせる事はありません。すでにチェック終了しております」
「本当に仕事早いな……。でどうだった?」
「甲板と同じ階は調理場と大きな広間とあと寝泊り出来る個室がいくつもあったよー!」
「なるほどな……。なら後で部屋を割り振らないといけないな。」
「そうですね。ちなみに私は地下を見てきましたがかなり大きな物置が数部屋と牢のような部屋が多数……と言った形ですね」
「物置は便利そうだが牢屋まであるのはすごいな……。」
「ちなみに牢部屋の中央には船の総排水孔に通じる小さな穴があるので拷問を行った場合でも水ですぐに綺麗に出来そうです」
「そ、そうか。まぁ使う機会が無いことを祈っておくよ。」
3人に近寄るキャラット。
「フューゼさん、今よろしいですか?」
「ん?あぁ、どうした?」
「手動での航海練習も兼ねて航路近くの小さな村に寄港したいのですがよろしいでしょうか?」
「もちろん!キャラットには2人に操作法を教えてもらわないと今後困るしな。ちなみにそこの村に寄港しても安全なのか?」
「はい!名前もない小さな村ですがあたしも何度もお伺いして交友を持っておりますので!」
「よし!ならそこに向かおう!キャラット、モナとホープを頼んだぞ!」
「はい!恐らく明日の朝にはつきますのでフューゼさん達はゆっくりしていて下さい!」
こうしてモナとホープの
交代制での手動航海が始まり、
フューゼはアリス達と
船の構造の確認や部屋割りを考えることとなった。




