少年の道
「王様と……ッスか…。」
「あぁ、そうだ。連絡にはこれを使ってくれ。」
思念鉱石を渡すフューゼ。
「思念鉱石……ッスね…。」
「そうだ。使えるか?」
「使ったことあるんで大丈夫ッス……。」
フューゼから思念鉱石を受け取る
エルフの少年。
少年が目を瞑ると思念鉱石が輝いた。
そして少し経つと少年は思念鉱石を振った。
「送ったッス……。返事が来るまで借りててもいいッスか?」
「もちろん構わないが……。すぐに返事来るものなのか?」
「王様は思念鉱石の返事かなり早いッスから…。」
少年が話していると思念鉱石が
強く輝き出した。
「さっそく来たッス……。読み取るんで待ってて欲しいッス。」
少年がまた目を瞑る。
……本当に早いんだな。レベッカは暇なのか?
「……ったッス。」
「ん?」
「やったッス!!行くこと自体は許可が出たッス!!」
拳を握りしめ喜ぶ少年。
「おぉ、よかったな!…ただ行くこと自体ってのは?」
「もう一つお願いしてみたッスけど…それについてはヴァンドラの兄さんと話したいって王様が言ってるッス。」
「……よくわからないがレベッカと話せばいいのか?」
「そうッスね!とりあえずこれはお返しするッス。」
そういって思念鉱石を手渡す少年。
……魔力を込めて…伝えたい事をのせる…。
レベッカ、弟の事を預かる事に
関しては大丈夫なのか?
しっかりと気に掛けるが
命の危険があるぞ……って事と……。
なにかお願いがあるらしいがなんの事だ?
こんな感じか?これで伝わるか?
フューゼが考えてる間強く光り続ける思念鉱石。
よし、これで振ればいいのか?
思念鉱石を振るフューゼ。
すると思念鉱石は一瞬強く光り、光は消えた。
「送れてるのかこれ?」
「大丈夫だと思うッスよ!」
すると光り出すフューゼの思念鉱石。
「あ、来たみたいッス!」
「早すぎだろ……。」
フューゼが思念鉱石に魔力を
込めると思念鉱石を通じて
レベッカの魔力が流れ込んできた。
─フューゼ、思念鉱石を
上手く使えたようで何よりだ。
しかし伝えたい事を魔力にのせるとき以外は
魔力を込めなくていいぞ。
雑念のようなものまで全て送られてしまうからな。
ではまずあたしの弟についてだが誰に似たのか
1度言い出すと手に負えない。
しかし覚悟は本気のようだから
連れて行ってくれないだろうか?
もちろん、命の危険は本人共々承知している。
そして、奴の願いとして
名付けをして欲しいと頼まれたのだが、
ヴァンドラとグリーディアの同盟の証として
奴への名付けはフューゼ、お前に託したい。
グリーディア王家の血統にヴァンドラの魔力が
注がれれば同盟の証としてもこの上ないだろう。
……あんな短時間でよくこんな長文送ってこれたな。
って言うか名付け!?
思念鉱石に再度魔力を込めるフューゼ。
レベッカ、君の弟に俺が名付けして大丈夫なのか?
仮に名付けするとしてグリーディアの王家に
共通する必ず付けないといけない名前みたいなものは
ないのか?
思念鉱石を振るフューゼ。
そしてすぐ光り出す思念鉱石。
─同盟、そして信頼の証として名付け
してもらいたい。
グリーディア王家に伝わる名前としては
“ブラーゼ”というものがある。
付けてくれるのであれば非常に喜ばしいが
グリーディア王家の名とすぐに気付かれると
思うので気を付けてくれ。
後は一緒にいる間だけでいいから
キャラットを守ってやってくれ。
ただしキャラットまでは渡さないぞ。
ブラーゼ…。
それがグリーディア王家の名前ならそれは付けてあげよう。
ただグリーディア王家の名前として有名なのか?
少年の身を守るためにはブラーゼの名は
あまり名乗らさせない方がいいかもな。
「……要件はわかった。」
「そ、それでどうッスか……?」
「俺から名付けさせて貰うことにしたよ。」
「本当ッスか!?嬉しすぎるッス!!」
跳ね回る少年。
「ヴァンドラ様!?どういう事ですか!?」
詰め寄るシルビア。
「同盟の証として名付けして欲しいってレベッカから連絡来たんだ。」
「同盟の証として……それならこの少年は完全にヴァンドラの所属になるということですか?」
「それは聞いてないが……仲間としては迎え入れる事になるな。」
「オイラは絶対にヴァンドラの兄さんの役に立ってみせるッス!」
「……では裏切ったら私があなたを殺しても構いませんか?」
「構わないッス。」
即答する少年。
そしてはぁと溜息をつくシルビア。
「……わかりました。ヴァンドラ様も言い出したら聞いてくださいませんしおまかせ致します」
「……ありがとうシルビア。」
「…っ!今度からは……相談してくれると嬉しいです」
「あぁ、その時は頼らせてもらうよ。」
少年に手を向けるフューゼ。
「じゃあ君に名を授けよう。」
「お、お願いするッス!!」
「…夜王ヴァンドラ・フューゼの名において君に“ブラーゼ・ホープ”の名を与える。」




