魔王と相見えるは
「相変わらず強いな…シルビア。お疲れ様。」
「ありがとうございます。フューゼ様」
「スピードも凄かったが…あの魔法もかっこよかったなぁー!」
目を輝かせるフューゼ。
「地獄人影ですか?確かにお見せしたことありませんでしたね」
「あぁ!今度教えてくれ!」
「ええ、もちろん。…ただ、難しく危険な魔法なので2人きりで訓練致しましょう」
「わかった!アリス達を危険に晒せないからな!」
「…そうですね。それより次の試合ですが…」
神妙な顔つきになるシルビア。
「次の試合…?」
「フューゼ様とモナ…ですよ」
「な!?…そうだったな、イードルスにモナは勝ったんだから俺と戦うことになるのか…。」
「戦う事自体はいいんだが…イードルスとの試合の後倒れてるからな…。」
「その事でございますが…。」
「うぉっ!?」
突然背後から声がし驚くフューゼ。
そこには救護班の名無し。
「驚かせてしまい申し訳ございません。モナ様の容態についての御報告になりますが…。」
「おぉ!モナは無事なのか!?」
「命に別状はありませんし意識も取り戻しました。しかしながら…」
「どうしたんだ?」
「魔力の消費が激しかった為、本日これ以上魔力を使うのは危険です。武闘大会は辞退する事を強く…強く推奨致します。」
「…そうか。」
ギルドランドの救護班は相当優秀だと聞いている。
…その救護班が戦うべきでないと言うなら…。
「わかった、モナの「まって」」
フューゼの声を遮る声。
驚く一同。
名無しが振り返ると真後ろにモナが立っていた。
「モナ…!?無事なのか!?」
「大丈夫…それよりフューゼ…モナはちゃんと覚悟して参加してる。負けちゃったら仕方ないけど…こんな形で終わりたくない」
強い眼差しを向けるモナ。
「気持ちはわかる。だが、この大会にそこまでリスクを負って参加する必要があるのか?」
「あるよ」
「っ!」
即答…か。
モナにしては強い語気。
そこまで参加したいのか…。
「モナはこの大会でいろいろ学んでる。エテロもイードルスもモナを成長させてくれた」
「モナ…。」
「この先、フューゼの邪魔をする人と戦うためにはもっと成長しないといけない」
「成長したいのもわかった。だが次の相手わかってるのか?」
「フューゼ」
「これも即答か…。そうだ。俺だ。いつでも戦える相手だぞ?」
「こんな状況で戦える事…そんなにないと思う。それに…今もっと成長できそうなの」
「モナ…」
「だからお願い。フューゼ」
1度も目をそらさないモナ。
「…制御出来ない魔法は使うな。それを約束できるか?」
「…!!うん…!する!約束…!」
「わかった…。救護班の方々、ありがとうございました。モナを回復してくれて。」
「い、いえ、滅相もございません!…モナ様は参加されるのですね?」
「うん…!」
「わかりました。私共が出来るのは応援と治療だけです。お2人とも頑張って下さい。猛る戦神の加護あれ…!!」
短剣を胸に掲げる名無し。
「ありがとう。じゃあシルビア、行ってくるよ。」
「はい…頑張って下さい」
「モナも辞退しないからには負けないからな!」
ニカっと笑うと入場していくフューゼ。
モナの覚悟はわかった。
無理はさせられないが、変に手を抜く事はモナを傷つけるな…。
続いて入場しようとするモナ。
「モナも…無理しては行けませんよ」
シルビアの言葉に反応しくるりと振り返るモナ。
「ちがうよシルビア。モナも勝つきまんまんなんだから…!頑張ってっていってほしいな」
にこりと笑むモナ。
「…!失礼しました。頑張って下さいモナ。フューゼ様は強いですよ」
「ふふ…フューゼは強い…いっつもモナ達を助けてくれるからよくしってる…!でも、モナだって負けないから…!!」
シルビアに背を向けるモナ。
「いってきます…シルビア」




