見切りと慢心
「グルルルァ!」
開幕と同時に吠え、体勢を低くし消えるティラコ。
シルビアの後ろから現れ、爪を振り下ろす。
ちらりと後ろを見るシルビア。
「残念ながら、私には届きませんよ」
ギィン!
シルビアは視線と逆にナイフを突き出しティラコの爪を止めた。
「止められた…!」
ティラコに視線を戻すシルビア。
「何度やっても無駄ですよ」
「…!!いつまで表裏2択を防げるか…試すといい!!」
「開幕から同時に目にも止まらぬ怒涛の攻撃!!しかしながらシルビアはその全てを見切っているようです!!」
幾度となく繰り返されるティラコの攻撃。
しかしその全ては防がれ、ティラコは体力を消耗していた。
「何故…全て見切られる…!!」
「私にそのフェイントが通じない事は理解頂けましたか?」
「グルル…」
フェイントが見切られるのであれば大技を撃ち込む…!
「母なる水よ、陸を制す鰭となれ。エクシス・シュヴェール」
両足のくるぶしに水で出来た鰭を纏うティラコ。
「いくぞ…!!」
バシュ!!
高速で移動し大きく円を書くようにシルビアの周りをぐるぐると移動するティラコ。
ガリガリと爪で地面を抉る。
「ティラコ!!高速でシルビアを取り囲んだ!あまりの速度に水の軌跡がまるで壁のように見えます!!ここからどのような攻撃が繰り広げられるのでしょうか!!」
「……」
あの爪でいつでも角度を変えられるように…もしくはあの速度で円滑に曲がれるようにしているのでしょうか。
緩急をつけた…もしくは高速での接近から次の手があるとみて間違いないでしょうね。
「受けてたちましょう。…愚かなるものに一時の安堵と永遠の絶望を与えよ、地獄人影」
詠唱を済ませたシルビアを炎が包む。
「対してシルビアは炎で身を包んだ!!遠距離攻撃が繰り出されるのか、それとも防御の魔法なのか!!大技の応酬が起きる予感に観客席の熱気も高まっています!!」
「何をしてくる…!?」
様子を伺うティラコ。
時間が経つにつれ2重、3重と炎が増えていく。
「…!!防御を固める気か!!させない!」
ギャリリ!!バシュ!!
角度を変え炎に突っ込むティラコ。
「さぁ、動いたのはティラコだぁぁ!!」
ワァァァァ!!
盛り上がる闘技場。
「全ての源よ、顕現せよ!エクシス!」
正面に水球を浮かべ、突っ込む。
その身に水を纏うティラコ。
「グルルルルルァァァ!!!」
1つ、また1つと炎を突破していくティラコ。
目の前には一際大きな炎。
「エクシス・山猫の裂爪!!」
ザァン!
炎を切り裂く爪。
中には驚いた表情のシルビア。
「……!!」
「私を舐めすぎた事があなたの敗因。エクシス・山猫の裂爪!」
ザシュッ!!
水を纏った鋭利な爪がシルビアを引き裂いた。




