制す魔力、地獄箱
「私を燃やし尽くす…。貴方の魔力であれば可能かもしれませんね。」
両手を広げるイードルス。
一切気にする様子もなく両手を前に出すモナ。
「お願い。フューゼの魔力。イードルスを消し去る力を…」
モナの前に炎球が現れ膨張していく。
「な、なんということでしょう!先程まで臓器を吐き、メスを身体にいれられ追い込まれていた少女が展開したのは膨れていく大きな炎球…!それに実況席からですらとてつもない魔力を感じます!!観客の皆様、巻き込まれないようお気をつけください!!」
慌てた様子のスイング。
その声を聞き逃げ出す観客もいるが、その膨大な魔力にある者は目を奪われ、ある者は身がすくみ、その場から動けない者が大半だった。
「先程の地獄鞭もそうですが、無詠唱で魔法を操るとは…底が知れませんね。」
「燃やす…燃やす…でも…意識はしっかり…。リヴィアに言われた事…!」
小さく呟き続けるモナ。
大きくなった炎球が直径30センチ程まで収縮していく。
「魔力を収縮させている…?」
ヴァンドラ様の濃い魔力を回収できるとなるとあれは避けずに受けるべきですね。
あぁ…あのような魔力を回収できるとはなんと幸運なのでしょうか…!
「いけ…!!」
両手を突き出すモナ。
「炎球が放たれたぁ!!しかし、イードルス避ける様子がありません!!真っ向から受ける気なのでしょうか!?」
「速度は並…。爆発でもするのでしょうか?あぁ…なんと素晴らしい…!近付くだけで魔力をひしひしと感じます!」
炎球に手を伸ばそうとするイードルス。
「愚かなる者を業火で後悔させよ。地獄箱」
ゴウッッ!!
モナの詠唱により炎壁に囲まれるイードルス。
「イードルス!炎の壁…いや箱に包まれてしまいました!!唯一正面が空いているが…あぁ!イードルスやはり動きません!炎球が塞いでしまったぁぁ!!これではもう中の様子はわかりません!」
「これは…。またなんと素晴らしい魔力…。」
地獄箱に見とれていたイードルスに正面から炎球が迫る。
それに気付き炎球を影の手で触れようとするイードルス。
ジュワッ!
「…っ!この魔力濃度は…!!」
触れた瞬間蒸発したように燃え消えた影の手。
「私とした事が、目の前の良質な材料に心踊り過ぎたようですね。これ程の魔力を見誤るとは。」
イードルスの眼前まで迫る炎球。
その瞬間に地獄箱が完全に閉じる。
「あぁ、この魔力をこの身で味わう事ができるとは…本当に素晴らしい…。」
目の前で一瞬さらに収縮し直径5センチ程になる炎球。
バァァン!
ゴオオオオオオオォォォ!!
イードルスを包んだ地獄箱が一瞬で膨張した。
轟音を立て燃え盛る地獄。
「笑止」
手を握り込むモナ。
大きく膨れ燃え盛る地獄箱が収縮していく。




