ギルドランドへの不信
「ヴァンドラ様の投げ技が決まったぁーー!!あのランスロット様がまるで魔法で浮かされたように投げ飛ばされてしまったー!!」
スイングの声が響く。
しんとする闘技場。
タタタッ…!!
駆け寄る判定員。
沈黙……。
そして戦闘不能宣言。
「一撃…!しょ、勝者はヴァンドラ様!!優勢に見えたランスロット様を一撃で沈めました…!!」
ギルドランド最後の勝ち残り、そして副頭領であるランスロットの一撃での敗北に闘技場はどよめく。
倒れたランスロット、観客に背を向けフューゼは闘技場を後にした。
「…お疲れ様でした。フューゼ様」
片手を少しあげるシルビア。
「ありがとな。」
パン!
手を合わせハイタッチをする。
モナは近くで俯き何か言いたげに口をつぐんでいる。
「…大丈夫か?どうしたモナ。」
質問され困った様子のモナ。
少し間を置いて口を開く。
「…フューゼ…ちょっと……怖かった…」
「怖かった?」
「いきなりフューゼ倒れて…びっくりしたんだけど…その後ランスロットに斬りかかる時のフューゼ…怖かった……」
「あぁ…。あの時何だか…凄くムカムカというか…自分でもあそこまでなんでイラついたかわからないんだが…とにかくランスロットに腹が立ってな…。途中で臓物の雨と超回復を使ったら少し落ち着いたんだが…。ごめんな、モナ。」
モナの頭を撫でるフューゼ。
「フューゼ様、少しよろしいですか?」
「どうした?」
「何故かイラついたとの事ですが、心当たりはございますか?スキルか何かを使われたのでは?」
「うーん。夜王解析した時にスキル情報が何も無かったからスキルでは無いと思うなぁ。」
「スキルがない…?副頭領にまで登りつめてスキル無しとは余程実力が高いのか運がいいのか…」
「あっ!でも毒を盛られていたみたいなんだよな。モナにさっき言われた倒れた時ってのが毒のせいなんだよ。思えばその後にムカついてきたんだよな。毒を使うって事自体確かに嫌なんだけど試合中だから頭に血が上ったのかもしれないな…。」
「毒…!?大丈夫ですか!?」
毒と聞いた途端目を大きく開き詰め寄るシルビア。
「おぉ?大丈夫だよ。ありがとな。」
「よかった…。それにしてもこのような舞台で毒…ですか」
「主催国として後が無かったからかもなぁ。ヨノギ毒だかなんだか言ってたが毒でやられてて余裕がなかったからよく思い出せなくてな…。何だか甘い匂いがしてたがそんな毒知ってるか?」
「甘い匂い…?」
考え込むシルビア。
そして口を開く。
「…身体が動かなくなる…等の効果はありませんが精神汚染を伴う毒でしたら怪しいものが…」
「なに?教えてくれ。」
「黄泉の花…花弁からは甘い香りをだし花粉には毒があります。その毒の効果は不信感と凶暴性の増加…」
「不信感と凶暴性の増加…?花がなんでそんな毒を…?」
「一説には群生地で生き物に暴れさせることで花粉を撒き散らして繁殖しているのでは…と言われていますが…甘い匂いと症状からすると怪しいかもしれません…ですが…」
歯切れの悪いシルビア。
「どうした?」
「ここらギルドランド一帯には黄泉の花はありません。あの花は……元スクラダス領近くのダクス山深部の彼岸の園…。そこにのみ生息しているはずで…成分も危険なので花粉の流通も禁止されています……その、つまり…」
「なるほどな。納得した。試合中にランスロットの口からイードルスの名前が出たからな。」
「イードルス…!?という事はギルドランドは…!」
「帝国側の可能性があるな。シルビア、モナ。考慮して気をつけてくれ。」




