蝕む毒剣
「がっ……!」
なんだ…!?力が入らない…!!息もしづらい…!
「熱に弱く気化すると無害になるコノギフグの毒…。私の雷魔法で発生する熱やヴァンドラ様の炎で効果が無くなるかと思っていましたが、弱まりはすれど魔鉱の力で気化しても蝕むようにできているようですね。」
「毒……だと…!?」
あの甘い匂いが毒だったのか…!?
思えば変色した剣…あれがそもそも毒なのか…!
「ヴァンドラ様に確実に勝つ為…。手段は選びません。」
「お前…は…!!」
ランスロットを睨むフューゼ。
「なぜ効かないのか…ですか?私にもよくわかりませんが、イードルスが言うには抗体があるとの事です。」
「イードル…ス!」
ここであいつの名前がでるのか…!!
ギルドランドは帝国と繋がっている…?それとも…!
「ヴァンドラ様の討伐…。私の名前はさらに広まるでしょう。…アーサーも私を認めてくれるはずだ。」
剣をかまえ近付いていくランスロット。
―実況席―
それを見て考え込む男がいた。
「あの剣の色…ヴァンドラ様の状態……まさかとは思うがランスロット様…毒を…!?」
実況席のスイングがぶつぶつと独り言を呟く。
「ギルドランドが劣勢なのはわかる…がよりにもよって他国の王に使うのか…!?武の敗北を宣言してるようなものじゃないか…!!」
頭を抱えるスイング。
「……いや、今はそんな事を考える時間じゃない。考えろ…。ヴァンドラ様は恐らく剣の直撃は受けてない…。だとすると毒が気化してるのか…?熱で気化…症状からするとイカリヘビ…いや、症状軽いがコノギフグ毒か…?だとすれば熱で効果が無くなるはず…。何かしらで効果を弱めるに留めているのか?だと仮定するとまずい…!!誰かいるか!?」
「どうかなさいましたか?」
スイングに声をかける名無し。
「…防毒薬のストックはどのくらいあるかわかるか?」
「防毒薬…?数はわかりませんが余裕はあるかと…。」
不思議そうな顔をする名無し。
「空砲に薬裂弾込めてきてくれ。急ぎで。」
「薬裂弾…!?かなりの防毒薬を使う事になりますが…。」
「構わない。責任は俺がとる。説明も後だ!急いでくれ!」
「は…はい!」
駆け出す名無し。
「もしコノギフグの場合解毒薬が存在しない…。一か八か本人を燃やすくらいしか…。しかし弱まっている、もしくはイカリヘビ毒だと仮定すれば解毒は出来なくとも防毒薬で中毒を防げる可能性がある…!気化した毒を観客が吸ってしまう前に…!!」
数分経ち、名無しが帰ってくる。
「準備出来ました!スイング様!」
「よし、撃て!そして誰に追及されようともこの試合が終わるまでは待たせてくれ!」
「頭領でもですか?」
「頭領でもだ!頼んだぞ!」
「た、頼まれました!!」
―闘技場―
くそっ!ランスロットが近付いてきてる…!
意味あるかわからないが…これしかない!!
ごぽぽっ…
フューゼの体内から音がする。
臓物の雨…!!
フューゼが臓物の雨を発動し、内蔵を吐き出す。
「…吐血?いや、肉…!?そんな効果まであるのですか…?ご安心下さい。これ以上苦しめませんよ。」
振り下ろされる剣。
ギィン!!
魔力防壁に弾かれる。
「…なるほど。これで雷縛りを…。では…!」
バチィ!
雷を纏うランスロットの剣。
…超回復でマシになってきたな。
魔力防壁で防げない毒は厄介だな…!!
ありがとうモリナマコ…!!
「八雷黒点!!」
剣を再度振り下ろすランスロット。
しかしフューゼは回避する。
「なっ!?」
「やってくれたなランスロット…!短期決戦といこうじゃないか…!!」




