形勢逆転
「チッ…!」
顔を歪めるシルビア。
ナイフで切断を試みるのは…愚策ですね。
あの糸の強度がクルネヴァ以上なら、
ナイフまで絡め取られ、下手すれば手まで使えなくなる…
動けないシルビアにマジックハンドが迫る。
「ひゃひゃひゃ!!ウチを怒らせたらこうなるんだよ!」
笑いながら指をさしているアニルを見つめるシルビア。
…今出来ることは追撃を防ぐこと…。
ナイフで本体を牽制しスクラップハンドは生地獄で落とす…!!
ブン!
いつもより大振りな動きでナイフを投げるシルビア。
「うぉわっ!!」
いつのまにか装備していた籠手で
ナイフを弾くアニル。
ナイフはアニルの足元に突き刺さる。
シルビアはすぐさまスクラップハンドに向け詠唱を始める。
「愚かなる者の…え?」
詠唱を中断するシルビア。
目線の先にあるスクラップハンドは
軌道を変えてシルビアを素通りしていく。
「びびったぁ……。へっ!!あんな距離の投合ナイフなんて当たるもんかよ…ってまずい!!」
アニルに向け向かうスクラップハンド。
ガァン!
アニルの足元をえぐり動きを止めた。
軽く吹き飛ばされ倒れるアニル。
「ってぇ…。くそっ…!!」
「なるほど、ナイフを追ってたのね。斬りつけた時に何かされた可能性が高いですね」
足元に手を向けるシルビア。
「愚かなる者を遮断せよ。地獄炎壁!」
シルビアはクルネヴァネットを焼き切ろうとするが、糸は切れない。
「炎耐性をさらにあげていますね…ですが今なら!」
燃え、変色している部分を斬るシルビア。
クルネヴァネットは斬れ、シルビアは自由になった。
「くっそ…マーキングが裏目にでるなんて…!」
立ち上がろうとするアニル。
「もう何もさせない…一気に決める…!」
すぐに体制を整え駆け出すシルビア。
「来るなら来やがれ…!!このラティルゴラゴのガントレットで粉砕してやる!」
籠手を見せつけるように話すアニル。
「ラティルゴラゴ…」
イードルスが絶滅させたと言っていた
ヴェグルのヌシ…。
ヴェグルに生息するクルネヴァの
魔法道具を使ってる以上帝国繋がりのこいつが、
ラティルゴラゴの素材を使った魔法道具を使ってくる可能性は十分高い…。
ラティルゴラゴの魔法道具となれば
ナイフじゃ歯が立たない…。
ここは魔法を撃ち込むべき…!
接近するのをやめ、アニルに手を向けるシルビア。
「あーん?来ねぇのかぁ?」
片眉をあげ、挑発するアニル。
「愚かなる者の心の臓よ」
ふわりとざわめくシルビアの髪。
「詠唱…?ちょっと待て!!接近戦するんじゃねぇのかよ!」
「最期の鼓動を献上せよ」
「待てって!ナイフで来いよ!何の為にウチはこれ装備したんだよ!」
慌てるアニル。
シルビアに向け手を開く
「…生地獄」
詠唱を終えると魔力の球体が浮かび上がる。
「詠唱したな!?へへっ……あ?…え?」
一瞬不敵な笑みを浮かべたがすぐに青ざめていくアニル。
「…なんだその魔力量…!予想外だ…待て、大丈夫なのかぁ?こ、これウチ…」
震え声で囁くアニル。
シルビアが手を大きく開くと魔力の球体が
高速でアニルに向け射出された。




