発明家アニル
試合開始と同時に低い姿勢で駆け出すシルビア。
「ひっ…!」
身をすくめるアニル。
「帝国の手先…手は抜きません」
ナイフの攻撃範囲にアニルを捉えるシルビア。
「やっ、やめろよ!ナイフはシャレになってねぇよ!謝るからさぁ!」
震え声のアニル。
「はぁっ!」
意に介さずナイフで斬り掛かる。
その時だった。
手……?
シルビアの眼前に直径60センチほどの白い掌が突如現れ、こちらに向け手を開いていた。
ガァン!
重い音が響く。
白い掌はナイフを受け止めた。
「え?あ、そっか!お前がいたな!」
笑顔になるアニル。
「やれ!スクラップハンド!針千本!!」
アニルが叫ぶと掌から無数の尖った突起がいくつも飛び出す。
咄嗟に後退し避けるシルビア。
「こいつはウチの自信作!敵意に反応して自動で反撃するんだぜ!?凄いだろ!ちょっと索敵範囲が狭いのが難点なんだけど」
カバンから飛び出した
機械仕掛けの掌を撫でるアニル。
「自動で反撃…面倒ですね」
「さっきの詫びだ!刺殺に撲殺焼殺…!何でも好きな死に方言ってみろ!ウチが魔法道具で叶えてやる!」
腰に手を当てるアニル。
「アニル!!ここでシルビアに挑発かぁ!?余程魔法道具に自信があるのでしょう!!」
スイングの声が響き、観客も沸き上がる。
「私が貴様に殺されるとでも?」
ギロリと睨むシルビア。
「ひぐっ!?そんなに凄むなよぉ…!人の善意は受け取るもんだぜ……?」
びくびくするアニル。
「調子が狂いますね…。でもそうですね、善意であるなら受け取りましょうか」
「おっ…!そうだよ!何でも言ってみろ!!ウチにできない事はない!」
「では腹上死でお願いします」
「は?」
「何でもいいのでしょう?腹上死でお願いします」
うおおおおぉ!?何が始まるんだ!!
一際大きな歓声があがる会場。
「ばっ…!腹上死って…!!ウチとか!?ここ、ここでかぁ!?」
顔を赤くしぷるぷるするアニル。
「何でもいいのではなかったのですか?もしかして出来ないのですか?」
「ウ…ウチに出来ないことなんて無いに決まってんだろ!!ま…待ってろ!!」
背のバックを降ろすアニル。
「ったくヴァンドラはやっぱり狂ってるぜ…」
小さく呟くとバックを漁り出したアニル。
馬鹿なのか罠なのかわかりませんが…
油断はしません
目を離しているアニルに駆け出すシルビア。
「オラっ!これでイかせてやんよ!…ってあれ?」
ヴィンヴィンと音を立て回転する謎の機械を
手に持ち振り返るアニル。
そこにシルビアの姿はない。
ゴトリ。
目の前にスクラップハンドが落ちる。
「あっ!?給魔線が斬られてる…!?」
上を見上げるアニル。
ナイフを構えながら落ちてくるシルビア。
「ひぅっ!?」
謎の機械で防ぐアニル。
無慈悲にもシルビアの刃は機械をまっぷたつにした。
「あぁ!!フトミミズ3号まで!!てめぇ!!」
「スクラップハンドとやらは処理致しました」
「お気に入りの愛棒までヤりやがって…!!許さねぇ!死に方はウチが勝手に決めてやる!」
「貴様に殺されるつもりは毛頭ありません」
「ぴぐぅ!?び…びびらねぇって言ってんだろ!!スクラップハンド!やれ!!」
斬り落とされたスクラップハンドが
ぴくりと動くと飛び上がり拳を握り
シルビアに襲いかかる。
「まだ動くのですか」
回避しつつ冷静なシルビア。
「ロケットパンチはロマン!組み込むだろぉがよ!!」
「よくわかりませんが…何度でも斬り伏せます」




