屈辱
「剣がないと何も出来ないと思うな!!」
掴みかかろうとするアロンダイト。
無言で見つめるロングソード。
「いっ…!!」
掴んだ瞬間痛みが走り手を離すアロンダイト。
その手からは血が出ていた。
「…流石に無理だよ。生身じゃ」
ペタンとしりもちをつくアロンダイト。
「ボクが殺したい相手は無闇に人を殺すなという」
ゆっくりとアロンダイトに近づくロングソード。
「ひっ…!!」
後ずさろうとするも、掌を地面に付けた瞬間
痛みが走り倒れるアロンダイト。
「でも情けをかけられて生かされる辛さをボクは知ってる」
さらに詰め寄るロングソード。
アロンダイトの前で止まる。
「安心して。ボクはキミをちゃんと殺してあげるから」
腕を振り上げるロングソード。
その目は暗くアロンダイトを見据える。
「や…やめ…」
ブン!
腕を振り下ろすロングソード。
アロンダイトは間一髪横に転がり
その腕は地面を抉った。
「…キミじゃボクに勝てないよ。無駄な事しないで斬られて」
表情1つ変えずに再度歩き出すロングソード。
「いやっ…いやっ…!!」
「動いてたら楽に斬ってあげられないよ」
腕を振り上げるロングソード。
「参りました!!負けました!!やめて!!」
大声で叫ぶアロンダイト。
両手を顔の前で交差させ、
ぶるぶると震えている。
「え?」
硬直するロングソード。
「しょ、勝負あり!!まさかの展開!!アロンダイト隊長降参です!!初戦でその姿を消すことになりました!!」
ざわつく闘技場。
振り上げた腕をだらんとたらすロングソード。
「キミは負けても生きる事を選ぶんだね。ギルドランドの隊長ってこんなレベルなの?がっかり」
アロンダイトに背を向け立ち去るロングソード。
ガチガチと歯を鳴らし震えるアロンダイト。
「アロンダイト隊長…!大丈夫ですか?」
救護班がアロンダイトに近寄り、その肩に触れる。
「っ!!触るな!!」
バシンと手を払うアロンダイト。
ロングソードがいない事を確認して
闘技場から足早に去ろうとする。
「アロンダイト隊長!!お怪我が!!」
「黙れっ!!斬り殺されたいか!!」
叫ぶアロンダイトにビクッとする救護班。
1度も振り返ることなく闘技場を後にしたアロンダイト。
こうして、第5試合はロングソードの勝利で幕を閉じた。




