名無しの意地
「し…始雷…!?今マスクThe名無し…始雷の詠唱を行いました…!!」
ざわつく闘技場。
「興味深い…名無しの貴方が魔法を使うのですか?」
「あぁ…。もう手の内を隠す余裕はない…!」
滝のような汗を流すマスクThe名無し。
「見せていただきましょう。王の加護を受けない名無しの魔法を…。」
両手を広げるイードルス。
「…うぉぉ!!」
駆け出すマスクThe名無し。
「マスクThe名無し駆け出した!しかしこれは始雷から派生する技なのか…!?」
戸惑う実況のスイング。
加速し飛び上がるマスクThe名無し。
「これは…雷神ドロップか…!?マスクThe名無し、雷神ドロップを繰り出した!」
「…魔法ははったりでしたか…。残念です…。」
両手を降ろすイードルス。
「…くっ!」
俺は名無し…王の魔力を授かっていないのは事実…。
それでも…!!
「始雷一閃雷神の槍!!」
バチィ!
音が鳴り加速するマスクThe名無し。
ドロップキックがイードルスに炸裂する。
「なっ…!?」
直撃したかにみえたが影の手が
マスクThe名無しの蹴りを受け止めていた。
「…僅かとはいえ魔力が発現していますね。本当に素晴らしい。貴方には王の才があるのでは…?」
ジュウと音を立てる影の手。
僅かに足に纏っていた雷属性の魔法を吸収した。
「な…に…!?」
「貴方の魔力、頂きましたよ。ありがとうございました。」
がしりとマスクThe名無しを掴む影の手。
ガァン!
そのまま地面に叩きつける。
「が…はっ…。」
朦朧とするマスクThe名無し。
その身体を持ち上げるイードルス。
「降参し、私の研究にご協力頂けるのなら命は助けましょう。」
顔を近づけるイードルス。
「くそ…くらえだ…。」
ニッと口角をあげるマスクThe名無し。
「残念です。」
尖った影の手がマスクThe名無しを突き刺す。
そのまま地面に叩きつけた。
地に伏し動かないマスクThe名無し。
判定員が近寄り戦闘不能宣言を行う。
「判定員マスクThe名無しに戦闘不能宣言!イードルスの勝利です!!」
倒れたマスクThe名無しに近寄るイードルス。
マスクThe名無しを運ぼうと駆けつけた救護班に声をかける。
「この遺体は頂いてもよろしいですか?」
「な…何を言ってるんですか!それにまだマスクThe名無しは生きています!」
その言葉を聞きぴくりとし動きを止めるイードルス。
「まだ息があるとは驚きました…。貴方は本当に素晴らしい。まだ耳が聞こえているならぜひ、回復した暁には私の元へお越しください。貴方に力をお渡しする事を約束しましょう。」
踵を返して闘技場から去るイードルス。
こうして3回戦はイードルスの勝利で幕を閉じた。




