力量
顔を抑えのたうち回るマスクThe名無し。
闘技場はどよめいていた。
そんなことを気にもかけず
顔剥ぎ袋に手を入れるイードルス。
「手応えがありました。取り出してみましょう。」
中からマスクが取り出された。
片手でマスクを掴みあげるイードルス。
「おや、マスクの中に別の感触が…。顔も剥いでしまいましたか。」
そういうとマスクを上下に振るイードルス。
中からずるりと何かが現れ
地面にべちゃりと音を立て落ちた。
「……皮膚ではない…?」
そこに落ちていたのは別のマスク。
イードルスがマスクThe名無しに
視線を戻すとそこには誰もいなかった。
「消えた…?どこ「っしゃらっ!!」」
ガァン!!
勢いよく後頭部にドロップキックを決めた
マスクThe名無し。
イードルスは地面に叩きつけられた。
「き、決めたぁー!!マスクThe名無し!!雷神ドロップを後頭部にお見舞だぁーー!!」
オオオオオォォォォー!!
一気に盛り上がる闘技場。
立ち上がり手を挙げ観衆に応えるマスクThe名無し。
「いやはや…。本当に素晴らしいですね…。」
ぬるりと立ち上がるイードルス。
「まだ立つか…!」
ニヤリと口角をあげるものの汗が頬を伝うマスクThe名無し。
「マスクを複数重ねているとは…恐れ入りました。」
「名持ちに勝つ為にできる事は何でも試す!これが名無しの戦い方だ!!」
ビシッとイードルスを指差すマスクThe名無し。
「貴方の力は名無しの常識を超えている…。非常に興味深いです…非常に…。」
ゆらりと両手を開き構えるイードルス。
「…っ!?」
何だ!?気配が変わった…!?
この悪寒は何を告げている…!!
即座に構えるマスクThe名無し。
「いきますよ。」
影の手を展開し地面を叩きつけるイードルス。
反動を使い凄まじい速度でマスクThe名無しに接近する。
「早い…!だがっ!!」
突っ込んできたイードルスの身体を掴み
大きく反るマスクThe名無し。
勢いそのまま地面に投げつけた。
「勢いを殺さずカウンターで投げたぁ!!これは決まったか!?」
しかしながらまたもぬるりと立ち上がるイードルス。
「この反応速度…やはり素晴らしい。」
ガン!
またも地面を叩きつけ向かってくるイードルス。
「何度だって投げてやろう!」
イードルスを捉えようとするマスクThe名無し。
ぐん!
その瞬間影の手が地面に突き刺さり
大きく弧を描くように移動するイードルス。
「なにっ!?」
頭上から勢いをつけた蹴りを繰り出すイードルス。
何とか腕を使い頭への攻撃を防いだマスクThe名無しであったが、バギリという鈍い音が響いた。
「ぐぉぉぉ…!」
「耐久性は並…。魔法道具を使わなくてよかったです。」
右腕を抑えるマスクThe名無しに近付くイードルス。
「失礼しますよ。」
抑えた腕をグッと掴むイードルス。
「ぐぁぁあ!!」
叫び声をあげるマスクThe名無し。
「やはり折れていますね。この脆ささえ何とかなればさらに強くなれますね。」
「ふざけているのか…!!」
「いえいえ滅相もございません。本当に名無しとしては比類ない実力です。あぁ…貴方をもっと知りたいですね。」
両手を広げ近付くイードルス。
「あぁ…中身も見たい…力の根源を探りたい…!!」
影の手の指先が鋭く尖る。
「くっ!?」
素早く身を翻し距離をとるマスクThe名無し。
…本能が告げている…!奴は危険だ…!!
紫に変色した右腕を庇いながら片膝をつき
クラウチングスタートの構えを取るマスクThe名無し。
「“我が魂に力を、我が剣に鋭さを…百雷の力を宿せ…始雷……!!!」




