水魔法使いの弱点
「地面に衝突した衝撃で煙が舞い2人の様子が見えませんが凄い威力…!お互い無事ではないか!?」
煙の中立ち上がる影が1つ。
「1人立ち上がったようですがあれは……ヴァンドラ様だぁ!!」
煙が晴れ立っていたのはフューゼ。
プロンはうつ伏せから立ち上がろうと
しているものの顔を紅くしていた。
「な…なんで夜王様がこの魔力を…!」
「俺は少し特殊みたいでな。」
―観戦席―
「クク…クックック……!!ヴァンドラ…やりおったな…!」
不敵な笑みを浮かべるリヴィア。
「捕まってたようにみえたけどどう逃げたんだろ〜?」
「あれを見てわからんのか?」
プロンを指差すリヴィア。
「ん〜?よくわかんないけどなんとなく見た事あるような光景かなぁ?」
「オイラは全然わかんないッス。」
「……ヴァンドラ…。物理的に怪我をさせないことを優先させたとしても…大衆の面前でそれはダメじゃろ。……それとも私様を妬かせたいのか?」
戦神気付けをぐいっと飲み干すリヴィア。
「まぁ、許してやる代わりに私様を後で愛でてもらわんといかんなぁ?」
「よくわかんないけど私も愛でられた〜い!」
「兄さんは何したッスか…!?」
―闘技場―
「仕掛けたはずのプロン!動けない!!何をされんだぁ!!」
「くぅぅ…!!」
さすがにこんな事されるのは予想外ぴょん…!!
「…すまないな。」
動けないプロンに近寄るフューゼ。
「負けない…ぴょん!」
立ち上がるプロン。
「プロン!何とか立ち上がったが明らかに様子がおかしいぞ!!」
「プロンになんてことするぴょん…!夜王様…!!しかもこんな所で…!」
顔を紅くさせたまま怒るプロン。
「あの状況で傷付けずに逃げるにはあれしか思い浮かばなくてな。」
「殴ったり燃やすよりひどいぴょん…!」
プロンは水棲の種族じゃないから
なんとか立てたけど…。
水魔法使えるって知ってたら警戒したのに…!!
「そ…それは本当に悪かったな。だが、勝たせてもらうぞ。」
さらに近寄るフューゼ。
「…っぴょん!」
蹴りを繰り出すプロン。
「無理をするな。」
難無く躱し背後に回るフューゼ。
「しまっ…!」
「夜王解析!」
ガプリと首元に噛み付くフューゼ。
「くぅぁぁ!?」
「か、噛みつきだぁー!!ヴァンドラ様、プロンに噛み付いたぁー!!」
幸運の足……。
魔法を足で反射するスキル。
魔力を溜めることによって
跳躍力や破壊力を増すことも可能。
スキルの獲得に成功。
足に魔力を集中する事で発動可能。詠唱不要。
魔法を足で反射かぁ。
キャラットのスキルと似たようなものか?
これで炎を蹴って跳ね返したり
水魔法を足場にしたり蹴り飛ばしてたのか。
…それに魔力防壁でも
防ぎきれなかったあの重い蹴りは
ある程度魔力防壁を反射してたんだろうな。
…にしても魔法装甲はやっぱり
スキルじゃないかぁ。
カパッ…。
プロンを解放するフューゼ。
倒れるプロン。
「な…何したぴょん…!!」
水魔法を流し込まれた時より
遥かに強烈ぴょん……!
し…思考が…纏まらないぴょん……!!
「プロンのスキルを調べさせて貰った。」
「ス…スキル?絶対それだけじゃ…ない…ぴょん!」
びくんと身体を跳ねるプロン。
「…それは副作用見たいなものだ。」
「く…屈辱だぴょん…!!」
息を荒らげ身体をびくびくさせるプロン。
会場からどよめきが起き始める。
「み…みんな見てるのに嫌だぴょん…!」
「……俺の勝ちでいいな?」
「……それは…」
言い淀むプロンに対して牙を見せるフューゼ。
「…続けるか?」
「いいっ!いいぴょん!だから早く……救護室に……!」
ぴょん!っと小さく鳴き足をピンと伸ばすと脱力し、
ぐったりするプロン。
「俺の勝ちだ。」
「き、決まったぁ!!何が起こったかわからないがプロン、負けを認めました!2回戦、ヴァンドラ様VSプロン!ヴァンドラ様の勝利です!」
勝利の宣言を受け駆けつける医療班。
「ぴょ!?ま…まだ触らないで欲しいぴょん!」
「そ、そう言われましても…!」
身体を跳ねさせるプロンに困惑する医療班。
「わ…悪かったなプロン…。」
「あ…あとで話しをしたいぴょん!こ…こんなの…あんまりだぴょん…!」
「武闘大会が終わってからならいつでも話すぞ。」
そう言うと背を向け足早に試合場から去るフューゼ。
「や…やっぱりアレは不味かったか…!」
俯きながら試合場から帰ってきたフューゼ。
「フューゼ様?」
びくりと反応するフューゼ。
顔を上げるとニコニコしているシルビア。
「シ…シルビアか。勝ったぞ!」
…ニコニコしてるけど怒ってるぞ…!
黒いオーラが見えている…!!
「それはおめでとうございます。私が言いたい事わかりますよね?」
「ス…夜王解析でどうしても調べたかったんだよ!あのスキル!」
「その前です」
笑顔のまま1歩近寄るシルビア。
「ぐっ…!すまない。水の魔力の事だよな…?」
「そうですよ!フューゼ様!以前リヴィアとの戦闘時に自分の水の魔力を相手の水魔法の使い手に注ぐ意味を説明しましたよね!?」
ムッと怒るシルビア。
「き…傷付けたくなくてな。」
一瞬ぽかんとするシルビア。
「…フューゼ様は女心を勉強する必要がありますよ」
「うっ…!」
「…モナでも何となくわかるよ」
下から見上げるように声をかけるモナ。
「…すまない。」
「…まぁでもそんなに謝らないで下さい。私達はフューゼ様の覇道を支えますから。“そういう道”で統一を目指すのであればそう言っていただければ異論はありません。グリーディアやスノーフィス然り女性の王は少なくないですからね」
「そ、そういう道って…。今はそんなつもりはないから今後は気をつけるよ。ごめんな。」
「今は…ですか?」
ジト目で睨むシルビア。
「うっ…!」
うろたえるフューゼ。
それを見て笑うシルビア。
「冗談ですよ。以前冗談をもっと言って欲しいと言われていたことを思い出しまして、からかってみました」
「お…おう。」
シルビアの冗談わかりづらいな…!
「ただ、本当にそういう統一をされたいのなら事前に相談をしてくださいね?」
「それはいいのか!?」
「まぁ歴代のヴァンドラ様らしい行動といえばらしいですからね。私はあまりオススメしませんが」
「なん…だと?」
「まぁとりあえずリヴィアは気付いてるでしょうから後でリヴィアに怒られても私は助けません」
「そんな!」
モナを見るフューゼ。
「…ごめんねフューゼ」
目を逸らすモナ。
プロンに勝利したがシュンとするフューゼだった。




