始雷一閃
開戦と同時に前にステップするホルホ。
「やはり光迅剣できたか。」
迎撃の構えを見せるランスロット。
「光迅剣!」
剣を突き出すホルホ。
剣先を見据え躱すランスロット。
「あぁーっと!!ホルホ!光迅剣で強襲だぁ!これはホルホの得意な形です!」
…踏み込みが浅い。
これは恐らくフェイント…。
目線をホルホに向けるランスロット。
後ろにステップしながら懐に手を入れるホルホ。
「貴方だから…ということもありますが、僕は戦いに手を隠さず慢心もしない!初めから全力でいくと決めたのだ…!」
ナイフを取り出し投げるホルホ。
「投げナイフ…!?」
弾こうとするランスロット。
「ホルホ、ナイフを投げたー!!彼の戦法としては珍しいがこれは…!?」
「それは僕の敬意を表す新たな得物です。…“剣に宿りし我が魂、彼奴を貫く刃となれ!雷塵榴刃”!!」
カッ!と音がし龍の形の雷がナイフへ向かう。
爆ぜるナイフ。
「ふっ……!!」
勢いをつけ剣を振るうランスロット。
剣圧で飛び散る刃を弾き飛ばす。
「ら…雷塵榴刃だぁ!大技を仕掛けるホルホ!しかしランスロット様はそれを弾いた!!」
オオオオオオーーー!!
盛り上がる闘技場。
「まだですよ…!」
「っ!」
一気に距離を詰めていたホルホ。
「連光閃!!」
鋭く正中線を狙う攻撃。
ランスロットは剣を縦に構え防ぐ。
「おぉ…!!」
剣を振り上げるランスロット。
それを見てナイフを投げつけながら後ろへ跳ぶホルホ。
「何度もその技を撃たせるわけにはいきません!」
ビュッ!
跳躍し距離を詰めるランスロット。
「“剣に宿る我が魂、彼奴を貫く刃となれ!雷塵榴刃”」
詠唱を唱えながら手をナイフの方向からランスロットに向け直すホルホ。
「なにっ…!?」
雷龍がランスロットに向け放たれた。
「な、なんとホルホ!雷塵榴刃を相手に向けて撃ちだしたぁ!!」
空中で躱すことの出来ないランスロット。
雷龍が当たり弾ける。
「あ、当たったぁーー!!これは完全にホルホのペースです!予想外の展開です!!」
どよめきは起きているものの会場の熱はあがる。
…強いじゃないかホルホ!!
「ホルホ勝っちゃうんじゃないか?」
「確かに今は彼のペースですがヴァンドラ様、見てください」
シルビアが指差す方向には吹き飛ばされたランスロット。
「まさか雷塵榴刃を私に向け撃ち出すとは…驚きました…。」
様々な場所から出血しているもののランスロットは立ち上がった。
「流石ですね。副頭領殿。」
剣を構えるホルホ。
…咄嗟に剣を投げていなければやられていたでしょう。
直撃するのはもちろん、剣で防いでもその場で自分の剣が弾けてしまう…。
雷塵榴刃をこのように扱うとは…。
「剣も無くなってしまいましたね。どうしますか?」
「貴方の道具を借りますよ。」
ホルホが投げたナイフを拾うランスロット。
右手で握り顔の前で寝かせるように持ち、左手をホルホに向け広げ構える。
「私も貴方に戦士の礼儀を持って全力を尽くします。“我が魂に力を、我が剣に鋭さを…百雷の力を宿せ…始雷”!!」
バチバチバチ…!!
ランスロットの持ったナイフに稲妻が走る。
「こ…これは始雷です!この構えから様々な攻撃に派生する必殺の構え!!」
…正直僕の身体も限界がきている。
雷塵榴刃を2度も撃った。
ここは迎撃する…!
狙いは1つ、正面からくる“一閃”だ…。
「ホルホ!剣を構え動きません!迎え撃つつもりか!?」
「いざ……参る!」
バチィ!!
音を立てランスロットの姿が消える。
「速い…!」
横に跳びながら剣先を向けるホルホ。
「始雷一閃黒雷」
ドゴォン!
落雷のような音が響く。
ナイフのグリップは下から突き上げるようにホルホの鳩尾を捉えていた。
ホルホはその場に崩れ落ちた。
「き、決まったぁー!!始雷から繰り出されたのは一閃!ホルホを一撃で沈めました!!」
ワァァァ!!
大きく盛り上がる闘技場。
雷塵榴刃だけではない…。
最後の瞬間、彼は一閃に対し返し技を仕掛けようとしていた。
私の経験が浅い頃だったら…いや、彼が怪我をしていなければ…どうなっていたかわかりません。
「貴方の実力を見誤っていた事を謝罪します…ホルホ・ヘッツ。貴方は強い…!」
「勝者は副頭領ランスロット様!!1試合目からレベルの高い試合でした!!」
歓声と拍手に背を向けてランスロットは会場を後にし、ホルホは医療班に運ばれていった。




