参加者集結
闘技場に足を踏み入れるフューゼ、シルビア、モナ。
真っ直ぐと歩く。
「すごい歓声だな…!!」
「罵声も聞こえますが声量が尋常ではないですね…」
「2人の声…よく聞こえない…」
「さぁさぁ!!皆様ご注目!!ヴァンドラ国参戦だけでも驚いたが先頭におりますはまさかまさかの夜王ヴァンドラ・フューゼ様だぁ!!久方ぶりの他国の王直々参戦!昂らない者がいるでしょうか!?実力は未知数!しかしながら優勝候補で間違いないでしょう!!」
夜王の名が出た途端シンとなる闘技場。
一部からどよめきが漏れたかと思うと
ワァァァァァァ!!
オオオオォォ!!
今までと比べ物にならない歓声。
「おおぉぉ……。」
なんだかんだ言って…歓声を聞くと大会って感じがして燃えるな…!
―観戦席―
「聞いたか?今の歓声。流石私様のヴァンドラじゃあ」
満足気な表情のリヴィア。
「でたでた、リヴィアちゃんのフュゼ様好き好き病!」
悪戯っぽく笑うアリス。
「いつも我慢しとるからな。今くらいいいのじゃ」
「我慢出来てないッスよね…?」
―闘技場―
「ヴァンドラ様の右手にいるのは知る人ぞ知るエンプーサから進化した種族、イグニ!!そしてそのイグニの現当主であるイグニ・シルビアだぁ!あの服装から繰り出される絶技…みな目が釘付け間違いなしかぁ!?」
オオオオォォ!! もっと脱げ脱げー!!
男の歓声やヤジが響き渡る。
「…ヴァンドラ様、私の紹介服装で締めるのは酷いと思いませんか…」
「まぁ確かに目のやり場に困る服装だからな。」
「えっ…」
「あ、いやいい意味でな!いい意味で!」
―観戦席―
「あはは!シルビーえっちな服着てるからいじられてる!」
「アリスの姐さんもよっぽどッスけどね。」
「あー?ダメだよー?ホープくーん」
上目でくねりと身体をよじるアリス。
「クククッ!戦神気付けが効いておるのぉ」
―闘技場―
「そしてヴァンドラ国最後の参加者はヴァンドラ様の左手にいます、フュゼル・モナだ!!獣人族に見えるが嘘か誠か合成生物との噂だ…!その実力はいかに!!」
ワァァァ!! 合成生物…!?
歓声やざわつきが響く。
―観戦席―
「合成生物ってこと言っちゃうんスね。大丈夫ッスか?」
「さぁな。ヴァンドラや小娘が受付の時に話していたからいいんじゃないか?」
「そ!れ!よ!り!ヴァンドラみんな紹介されたから私達も乾杯だぁ!」
グラスを配るアリス。
「クククッ!好きじゃのぉ?気に入ったか?」
「オイラもまだまだいくッスよー!」
―闘技場―
「これにてヴァンドラ国の紹介は終了です!初手からまさかのヴァンドラ国参加でした…。しかしながら…まだまだ参加国は控えています!世界有数の独立派に続いて…共存派の筆頭!|海を制する国、聖都スノーフィスの参戦だぁぁ!」
オオオオォォ!!
「スノーフィス…来るのか。」
「…試合相手の場合は報告を防ぐため息の根を止めるべきかと」
「おいおい…。」
しかし誰も入場せず歓声も収まる。
「……えー、皆様失礼いたしました。聖都スノーフィスはいまだに連絡なく、参加者の姿も見えないようです。」
ざわつく場内。
「スノーフィスのことですから連絡もせずに不参加ということは考えづらいですが…何か不都合があったのでしょう。確認遅れ申し訳ございませんでした!」
おいおい!しっかりしろよ!
ブーイングの嵐。
「防衛憲兵長ハウナズオや憲兵ロベリア等名高き名持ちが参加予定でしたが残念です!」
「ハウナズオ…!?沈めたからか?」
「…その可能性は高いですがスノーフィス不参加であればリヴィアの事を試合中気にしなくてすみますね」
「あ、あぁ。」
「しかしご安心ください!!次の参加国も驚きの参加国!あの獣人族の隠れ里、秘境グロウルから戦士達が参戦だ!!」
ドアが開かれ3人の獣人族が現れ、歓声が上がる。
「1番前を歩きますは…その圧倒的スピード!獲物の反撃を許さず狩りをするという彼女をグロウルではこう呼ぶ…神速のティラコ!!」
ワァァァ!!
歓声に答えるように両手を振る猫耳の少女。
「その後ろ、両手に曲刀を携え歩く彼女こそグロウルの名高き戦士エテロ!!獲物を狩るとその牙を持ち帰るらしいが今回は何本の牙が彼女のコレクションに加わるのか!!」
歓声をものともせず歩く少女。
様々な牙で出来た首飾りや武器に牙の装飾をしている。
「ギルドランドの民であれば見かけた事や話した事がある人も多いのではないでしょうか!?我が国で人気のグロウルの使者が戦士として参戦だ!!その名は…プロン!」
笑顔で両手を振る長い耳の少女。
スゥッと息を吸い込むと大きな声で叫んだ。
「みんなー!応援よろしくぴょんー!」
ワァァァァァァ!! プロン様ー!!
大きな歓声があがる。
「…媚びるのは止めろ」
「エテロちんー、声援は大事だぴょん?応援されると力が湧いてくるぴょん!」
「コラ、2人とも集中しないとだめだぞ?仲良くするんだ」
「…チッ」
3人はフューゼ達と少し距離を置いた場所で止まった。
「次の参加国は仲良くしたい独立派ランキング1位と言ってもいいあの国だ!幻想都市グリーディア!!」
ドアが開かれ2人が現れる。
「グリーディア出るのか…!ってあいつは…!!」
「前を歩きますは…グリーディア1の弓取りとも言われ、魔法も使いこなすオールラウンダーエルフ!カイルだぁぁ!!甘いマスクで女性を魅了すること間違いなし!!」
キャアアアァ!
黄色い声援が飛ぶ。
片手を振り答えるカイル。
「続きますは詳細一切不明!華奢な体に不相応な大きな剣を担いで出場する彼女は…ロングソード!!どんな戦いを見せてくれるのか!」
―観戦席―
「あれっ!?ロングソードちゃん!出るんだ!」
「知り合いか?」
「フュゼ様を絶対に殺すー!って言ってる子なんだけど強いんだよ!フュゼ様怪我したんだから!」
「何?では潰さねばならんな」
硝子にバン!と手をうちつけるリヴィア。
「ちょちょ、ちょっと待つッス!ヴァンドラの兄さんがロングソードを倒した時オイラも見てたんスけどすごい水魔法使ってたッスよー!確か初めてヴァンドラの兄さんが水魔法を使ったのはその時って言ってたッスねー!」
「…なんじゃと?」
「ねっ!アリスの姐さん!リヴィアの姐さんに話してあげてくださいよ!」
「んふふっ、そうだねぇー」
―闘技場―
真っ直ぐとフューゼに向かい歩むロングソード。
「ヴァンドラ様…!」
ナイフに手をかけるシルビア。
「シルビア、大丈夫だ。」
それを止めるフューゼ。
「ロングソード!ヴァンドラ国陣営…いや夜王様に真っ直ぐと近づいていきます!!」
ワァァァ!!!
実況の煽りを受け歓声が大きくなる。
「…また会えたね…フューゼ」
「こんなに早く会うとは思わなかったよ。」
「ボクもだよ…。キミ達がくれた魔鉱石…混沌輝石…だったかな。それを素材に博士が創った子が強くてね。彼女のおかげでボクはある程度自由になったんだ」
「グリーディアの軍は辞めたのか?」
「いや…彼女の相手を出来るのはボクくらいだからね…。強くて楽しいし。それに新人教育もある」
「新人教育…マコは…元気?」
ロングソードに声をかけるモナ。
「ん…キミは斬るのが難しい子」
ぴくりとするモナ。
「マコも元気だよ…。まだまだ弱いけどね」
少し間を開けて再度口を開くロングソード。
「…少しは強くなったよ」
「そっか…」
安堵した表情のモナ。
「ボクは仲良しこよししに来たわけじゃないよ、フューゼ」
剣を向けるロングソード。
「おおっと!!ロングソードが夜王様に刃を向けている!!!声は聞こえないが何が起こっているのか!!」
歓声がまた大きくなる。
「ロングソード貴様…!」
「シルビア、大丈夫だと言っただろ。」
「今日こそキミを斬るよ。フューゼ。試合になればキミも斬ってみせる」
モナにも剣を向けるロングソード。
「かかってこいロングソード。やられないがな。」
「…流石だねフューゼ」
フッと笑うロングソード。
「な、何をやっているんですかロングソード大佐!」
慌てて止めに来るカイル。
「大佐…?この短期間で大佐とはすごいな。」
「お初にお目にかかります夜王様。どうかお許しを…。」
「あぁ、カイルだったか?大丈夫だぞ。」
「よ、よかった…。行きますよロングソード大佐…!」
ロングソードを引っ張ろうとするカイル。
「なぁ、ロングソード。大佐になったこと何で教えてくれなかった?」
「……フューゼに話すことでも無い。斬るべき相手だから」
「ギルドランドに来る事も教えてくれればよかったのに、思念鉱石で。」
「…同じ理由だ。伝える必要がない」
「思念鉱石!?夜王様とお知り合いなのですか!?ロングソード大佐!」
驚くカイル。
それには反応せず真っ直ぐとフューゼを見続けるロングソード。
少し間を置いて口を開く
「……たかった」
「ん?」
「キミを……驚かせたかった」
「なんだと?」
「い、行くよ。カイル」
フューゼに背を向け歩き出すロングソード。
「カイル。グリーディアは大佐にすぐ上がれるものなのか?」
「いえいえ…。本来は年月をかけ実績を積み重ねて賜るものなのですが…ロングソード大佐の実力が圧倒的でして特例となります。」
フューゼに一礼し慌ててついて行くカイル。
「待って下さいロングソード大佐…!あれ?にやけてます?」
「にやけてない…!キミ…斬るよ…!!」
「や、やめてくださいよ!」
「…ほんと短期間で変わったな。ロングソード。」
「そうだね…でも……強いよ」
「あぁ、わかってる。」
「ロングソード、夜王様から離れていく!!宣戦布告だったのでしょうかっ!!やはりこの大会、一筋縄じゃいかないようだぁ!!」
ウオオオオォォォ!!
盛り上がりを見せる会場。
「それでは次の参加国…。これも驚きの参加国…招待を出していた頭領にも驚きです!!…入場前に再警告ですが試合外での戦闘はいかなる理由があっても禁止です!!」
ざわつく闘技場。
「…なんだ?どんな国なんだ…?」
「…多くは語りません。現在進行形で他国を侵略中…ボルシエオン帝国です…!!」
「ボルシエオン帝国!?」
シンとする闘技場。
ドアが開かれ2人、姿を現す。
「いやはや…私達も嫌われたものですね。」
「そりゃそうだろうよ!!だから来たくなかったんだウチは!!」
静まった闘技場に2人の声が響いた。
その後に怒号が響く。
「あいつ…!参加者だったのか!!」
「皆様、お気持ちはわかりますが紹介に入らせて頂きます!!今回はボルシエオン帝国代表として元スクラダス領の2名が参加となっております!!」
「仮面をつけた大男。名前はイードルス!!商人をやっているとのことだがどう戦うのか!!魔法道具を使いこなすのでしょうか!!」
両手を広げ歩くイードルス。
「皆様、是非ともご贔屓に。」
「その隣に歩きますは同じく商人のアニル!!事前情報はほぼありませんが恐らくは同じく魔法道具の使い手でしょう!!」
「あぁ!?ウチは商人じゃねぇ!開発者だ!!クソ仮面!!適当こきやがったな!!」
「おやおや…口が悪いですよ。」
「ちなみに事前に頂きました情報は3サイズしかありませんでした!!」
「ばっ!テメェ!!ふざけんなよクソ仮面!!」
イードルスに掴みかかろうとするアニル。
「おぉ、危ないですよ。…それに、先程から……口が、悪いですよ…?」
アニルに顔を近付けるイードルス。
「ひぐぅっ…!!わ、悪かったよぅ…!」
怯えたように離れるアニル。
「いい子ですね…。」
頭を撫でるイードルス。
「ひひっ!ウチにはそうやってずっと優しくしてろよな!!」
そして2人も闘技場内で待機する。
「本来は他数国も参加予定でしたが…。何故か連絡が来ない国が多く他国参加は以上となります!!」
またもざわつく場内。
「しかしながら!紹介する戦士はまだいます!お待たせ致しました!!我が国の勇猛なる戦士の入場です!!」
ドアが開き5人の姿が現れる。
その姿を見て闘技場の歓声も戻った。
「先頭、当ギルドランドの名物闘士!!大会優勝までは名付けを受けないと宣言し顔をマスクで隠すこの男!しかしながら名持ちを倒した事もある実力派!!今大会でまさかの優勝を見せてくれるのか!名無しの底力を見せろ!!マスクThe名無し!!」
「お次はこの方!ギルドランド1の愛国心を持ち、あげた武功は数しれず!!元副頭領にて現カラドボルグ隊隊長…!ダグダ・ツイスト!!」
ダグダ様ーー!!
ツイスト隊長ーー!!
歓声が大きく上がる。
「民衆からの人気が根強い彼ももちろん優勝候補です!!ちなみに、紹介遅れましたが今武道大会の進行はツイストの弟でありカラドボルグ隊副隊長の私、ダグダ・スイングがお送り致します!」
会場の熱気が高まる。
「そしてお次はカラドボルグ隊に負けず劣らず戦果をあげるティルフルグ隊を纏めているアロンダイト隊長だ!!彼女の技術は今大会を制するか!?」
剣を掲げるアロンダイト。
答える歓声。
「さぁ、そのアロンダイト隊長の後ろにいるのは数日前一命を取り留めたばかりだというのに辞退しなかった名誉の戦士!!ホルホ・ヘッツ!!」
「…生きてたか」
「そうみたいだな。よかったな、シルビア。」
「いえ、またも無礼を働けば消すだけです」
「最後はこのお方!!我等が副頭領にて頭領の兄!!ランスロット様です!!その強さは頭領に並ぶとも言われ今大会の優勝候補筆頭です!!」
歓声が大きくなる。
答えるように剣を掲げるランスロット。
歓声がより大きくなる。
「ランスロットもでるのか…!」
「間違いなく強敵でしょうね」
「以上が参加者となりま…「おうッ!待ちな!!」
一際大きな声が響く。
そしてドアから1人ずんずんと歩いてくる。
「なっ……!!そんな!まさか…!!聞いてないぞ…!」
慌てる進行のスイング。
「ま、ま、まさかの飛び入り…!!そんな事が有り得るのか!!」
姿が見えた途端様々な声が大きく響き出す。
「せ…先代頭領…!!トール・アーサーその人です!!戦神と恐れられいくつもの戦局を変えてきた伝説がその姿を現しました!!!例の事件で国を追われた英雄が大会に乱入だぁぁ!!!」
「…アーサー!!」
驚くランスロット。
「…貴様に我輩の名を呼ばれる筋合いはねェ。この武道大会で必ず斬り伏せてやる。」
「せ…先代!!」
目を見開くツイスト。
「おォ。ツイスト、久しいな。元気そうで何よりだ。」
「い、いえ先代こそ…!」
「…ランスロット、いいのかい?」
ランスロットに声をかけるアロンダイト。
「…いいのか…とは?」
「先代とはいえ現副頭領であるあんたを斬った男だ。参加を認めるのかい?」
「私は…」
「参加を認めよう!!!」
大きな声が上から響く。
「なっ、我等が頭領ガラハッド様です!!参加者達を見下ろしています!!」
一同が見上げるとそこにはフューゼ達を案内していた上半身裸の男がそこにいた。
「あ、あいつが頭領だったのか!?」
驚くフューゼ。
「実力者だとは思っていましたが…」
考え込むシルビア。
「確かに過去の事件は許される事では無い…。ただこの状況で戻ってきたんだ!何か考えがあるんだろう!」
ざわざわとする闘技場。
「何より…俺は戦神の試合が見てぇ!!お前達は見たくねぇのか!!」
うぉぉぉぉおおおおお!!!
大きく答える民衆。
「頭領…!!良いのですか!?先代頭領は副頭領を斬り伏せると…!!」
「アロンダイト、気持ちはわかるがここはギルドランドだ。事件の時は先代を追放したが本来この国では強さこそが正義なんだよ。…違うか?ランスロット。」
ランスロットを見るガラハッド。
「…そうだな。ガラハッド。私の手で決着をつけよう。」
オオオオォォ!!
ランスロットの発言に盛り上がりを見せる闘技場。
ちらりとフューゼを見るガラハッド。
「他にも聞きたいことがある奴もいるだろうが、優勝して直接聞きに来てくれ!俺からは以上だ!!」
立ち去るガラハッド。
「…面白くなってきたな?シルビア、モナ!」
「えぇ…全くです。優勝して締め上げてやりましょう」
「シルビア…フューゼに怒られるよ…」
「こ、これは波乱万丈な幕開けとなりました!!では参加者は計…16名!奇しくも偶数で綺麗にトーナメントが組めそうです!!」
「トーナメントを決定するのは毎度お馴染み月光牡丹代表のエレインに行ってもらいます!」
月光牡丹で出会った長髪の人族の女性がガラハッドと入れ替わりで出てきた。
「あ、あの人が代表だったのか…。それに名持ちだったんだな。」
「エレインのスキル、“神判”はランダムで割り振りを行うことが出来る武道大会には必須のスキルです!!」
「…意外と便利そうだな。なに食べるか決める時とかに使いたい…。夜王解析したいな。」
「食事の際は相談頂ければ私が決めますよ」
フューゼとシルビアがそんなやり取りをしている中、エレインがスキルを使った。
「神様の言う通り…。今回のトーナメントはこちらになります」




