入場
「こちらになります。」
男が手を向けた先にドアが1つ。
「ここで待機すればいいのか?」
「はい。時間になりましたら呼びに参ります。」
がちゃりとドアを開けるフューゼ。
ごく普通の部屋が目の前に広がる。
「おぉ、普通の部屋だな。月光牡丹みたいに移動するのかと思ってたよ。」
「月光牡丹は特別な場所ですので…。また、闘技場の主役は出場者…戦士たちですので古くから簡素なつくりになっているのです。このような待機室ですが御容赦下さい。御用があればそこの思念鉱石でいつでもお呼びください。」
机の上の思念鉱石に手を向ける男。
「わかった。ありがとう。」
「いえいえ…。開会式は準備が整い次第行われますのでよろしくお願いいたします。」
「準備ですか?」
質問するシルビア。
「えぇ。準備と言っても他の参加者への今の説明と観戦者の整理のみですのでそこまでかからないかと。」
「そうですか…。では指示をお待ちしておきますね」
「ありがとうございます。では私は失礼いたします。」
一礼し部屋からさる男。
シルビアとモナを見るフューゼ。
「さてと遂に大会も始まるな。相手も強いだろう。怪我をするなとは言わないが必ず生きて戻れ。これだけは忘れるな。」
「はい。ヴァンドラ様」
「うん…!」
返事をする2人。
「よし、なら呼ばれるのを待とう。」
「モナ、私達はヴァンドラ国の代表として参加するのです。試合内容はもちろん振る舞いも弱く見えないよう気をつけないといけないですよ」
「うん…!」
メラメラと闘志を燃やすモナ。
「焚きつけるのはいいが弱く見えないようにって…どうする気だよ。」
「オドオドしたりしないようにということです!何もそこら辺の人達を倒せってわけじゃないです」
「そうなの…?」
不思議そうにシルビアを見上げ手に火を浮かべているモナ。
「んなっ!」
「ほら、シルビアがいつも喧嘩っぱやいからだぞ?ちゃんとモナに教えておかなきゃだな?」
笑うフューゼ。
「ぐっ…!モナ、こっちに来なさい」
モナを連れ部屋の椅子に腰掛けるシルビア。
笑いながら見送り瞑想を始めるフューゼ。
そして少し時間が経ちドアがコンコンコンと叩かれる。
「どうぞ。」
「失礼いたします。ヴァンドラ国御一行様、開会の儀で御座います。こちらへ。」
男がドアを開け、外に手を向ける。
「俺たちはどうすればいいんだ?」
「私が闘技場のドアを開けましたら中に入っていただければと思います。」
「その後は?」
「申し訳ございませんが開会の儀が終了するまでは闘技場内に残っていただければ幸いです。」
「なに?それだけか?」
「はい。トーナメント表も発表されますので確認後またこちらへお戻りください。」
「後は順番になったら呼ばれるってことか?」
「左様でございます。」
「よし、把握した。行くぞみんな!」
こうして男について歩くフューゼ、シルビア、モナ。
そして
ドアの前で止まる。
何やら歓声のようなものがうっすらと聞こえる。
「準備はよろしいですか?」
「あぁ。」
フューゼの返事を確認し男はドアを開けた。
ワァァァァァ!!
大きな歓声があがる。
「さぁ、早速ヴァンドラ国の入場です!!」




