副頭領
「ヴァンドラの兄さん!?」
「ホープ無事か!?」
「ヴァンドラ…?」
視線を向ける男。
「…誰だお前。何してる。」
腕に炎を纏わせ睨みつけるフューゼ。
「兄さん、落ち着いてください!」
慌てるホープ。
ちらりと目線を向けるもすぐに男へと向き直るフューゼ。
「夜王ヴァンドラ様…ですか。お初にお目にかかります。」
少し抜いていた剣をキン!と収める男。
「名持ちか?」
「失礼。名乗りが遅れました。私はランスロット、ここギルドランドの副頭領をさせて頂いております。」
「副頭領…?」
「えぇ。ヴァンドラの皆様に御挨拶をとお伺い致しました。」
「ホープ…本当か?」
「オイラに話しかけて来た時も副頭領って言ってたッスよ!」
「いつからいる?」
「1時間くらい前ッスかね?もちろん襲われたりはしてないッスよ!」
「そうか……。」
腕の炎を落ち着かせモナを降ろすフューゼ。
チラリとモナをみると少し不安げな表情で足にしがみついていた。
「悪いな。警戒させてもらった。」
「当然の対応だと存じておりますのでお気になさらず。」
…悪い奴にはみえないがモナの反応が気になるな…。
「ヴァンドラ様。2日前すれ違った船を覚えていますか?」
「2日前……。中型船とすれ違った時か?」
「その時に中型船に乗っていたのが私です。」
あの危うく衝突して沈めそうになった船にギルドランドの副頭領が乗っていたとは…。
危なかったな…。
「そうか…。あの時はこちらが悪かったからな。すまない。怪我はなかったか?」
目を丸くするランスロット。
「あ、いえ…。怪我はありません…。」
「どうした?」
「……失礼ながら謝罪…ましてや心配されるとは思いもせず…。風の噂で代替わりしたと聞きましたがヴァンドラ様…随分と変わられたのですね。」
「よく言われるよ」
苦笑するフューゼ。
「大変失礼致しました。質問よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「どのようにしてあの大型船であの速度をだしたのですか?魔鉱石の力では不可能なように感じましたがスキルなどですか?」
リヴィアの事はなるだけ伏せておきたいからな…。
「ヴァンドラの秘術だ。教えることはできない。」
「ヴァンドラに高度な操舵技術が…!?初めて聞きました…。」
「詳細は何も答えられないがな。」
「いずれお伺いしたいものですね。」
「…それでランスロットはこの後どうするんだ?」
「挨拶も済ませたので帰還致します。」
「そうか。今時間はあるか?」
「時間ならありますが…。」
「よし。ならこれを食べて帰るといい。」
フューゼが小袋からクイーンハートを取り出す。
「こ、これはクイーンハート…!?」
「あぁ。昨日クイーンを狩ったからな。食べられるか?」
「もちろんです。ギルドランドではクイーンハートは強さの象徴。そしてあの歯応えにも強さを感じざるを得ません…!!」
「ホープにわけようとおもって持ってきたんだが一緒に食べてもいいだろ?」
「もちろんッスよ!」
「そんな…!本当に頂いてよろしいのですか?」
「あぁ。焼き加減とかは詳しくないが…。」
「それなら私に調理させて頂けないでしょうか?」
「なに?だがこの船のゲストだろ?」
「勝手に押し入った身です。クイーンハートまで頂くとなれば調理くらいはさせて下さい。」
ニコリと笑うランスロット。
「…そうか。ホープ、悪いがランスロットを厨房まで案内してくれ。」
「了解ッスー!」
ランスロットを案内するホープ。
しばらくし調理されたクイーンハートを持ってくる2人。
その硬さに驚くホープや意地でも全て噛み切ろうとするランスロットに笑顔をこぼしながらフューゼ達は食事を共にした。




