最高級の休息
「最高の食事だったよ!ありがとう。」
「ご満足頂けたようでなによりです」
にこりと微笑む月光牡丹の女性。
「もうお休みになられますか?」
「ん?あぁそうだな。今日は疲れたから休もうか。」
「ではお布団の準備をさせていただきます」
そう言うとお皿をさげはじめる女性達。
そしてパチンと指を鳴らすと机と椅子は消え、楕円形のふわふわしたものが人数分現れた。
「おぉ、見るからにふわふわしているな。」
「私様が1番じゃー!」
ふわふわしているものに飛び込むリヴィア。
ぱふんと音を立てそれに沈む。
「ちょっとリヴィア!何してるんですか!」
シルビアが注意をする。
「……。」
が、顔を埋めたまま反応しないリヴィア。
「聞いているんですか?」
「……。」
なお反応しないリヴィア。
とてとてとアリスが近付く。
「リヴィアちゃーん、おーい」
近くで声をかけ頬をつつくアリス。
「シルビーダメだよ。リヴィアちゃん眠っちゃってる」
「えぇ!?」
驚くシルビア。
「お疲れであれば無理もないですね」
にこりと微笑む女性。
「あの寝具はそんなにすごいのか?」
「当月光牡丹特性の製品でして、魔鉱石を何故か主食としてしまった変異ギルドスライム、通称混沌スライムの素材と天寿草から抽質したエキスを混ぜ込んだものを柔らかく肌触りのいいモチヘビの皮で包み、表面をわたうさぎの冬毛で仕上げた逸品でございます」
「おぉ…どの生物もわからないが凄そうだ。」
「どれも高級な素材ですが…混沌スライムと天寿草を何故混ぜたのですか?」
質問するシルビア。
「混沌スライムは触れたものの魔力に感化されやすい特徴があります。そこに天寿草のエキスを混ぜ込むと使用者にあった温度や匂いに変化し最上級の眠りへと誘います」
「…ヴァンドラ様、これは心地良さそうですね」
「そうだな。アリスとモナもよかっ…」
フューゼが振り向くと既に眠りについているアリスとモナ。
「あぁ!2人までヴァンドラ様より先に…!」
「シルビアいいんだ気にするな。」
にこりと笑うフューゼ。
「…ヴァンドラ様がそう仰るなら…」
そう言って寝ているアリスに近付くシルビア。
「全く…いくら気持ちがいいものだとしても早すぎるのよ…」
アリスの寝ている寝具を指で触るシルビア。
「あっ…」
そして手のひらで触るシルビア。
そのまま動かなくなってしまう。
「ん?シルビア?」
異変に気付き近付くフューゼ。
「ね、寝てる…。座ったまま触ってるだけなのに…。」
「よっぽどお疲れだったのでしょうね」
クスリと笑う女性。
「そうみたいだ。シルビア、自分の場所で寝るんだ。」
フューゼの呼び掛けに反応しないシルビア。
「…しょうがないな。」
お姫様抱っこの要領でシルビアを抱きかかえるフューゼ。
「ん……。はっ!!ヴァヴァヴァヴァンドラ様!?何を!?」
目が覚め顔を赤らめ焦るシルビア。
「あぁ、シルビアアリスの所で寝ちゃってたからな。運んでたんだよ。」
「もも、申し訳ございません…」
両手で顔を隠すシルビア。
「気にするな。今日頑張ってくれてたんだからな。」
そして空いている寝具にシルビアを寝かせるフューゼ。
「申し訳ございませんでした。このよ…うなしっ………たい…は……」
そのまますぐ眠りにつくシルビア。
「おぉ…。これ凄いな本当に。でも起きられるのだろうか。」
「ご要望ございましたら起こしに伺いますよ」
「じゃあ朝日が昇りきった後に頼みたいんだが…。」
「承知致しました。その際に御食事もお持ち致しますか?」
「そうだな、よろしく頼むよ。」
「今晩夜伽は必要ですか?」
「ん…?あぁ、頼むよ。」
よとぎ……?よくわからないから頼んだが何だろう。
「承知致しました。わたくしでよろしいでしょうか?」
髪を降ろし服を脱ごうとする女性。
「ちょちょ、ちょっと待て!何してるんだ!」
焦るフューゼ。
「え…?夜伽を御希望では?」
「よとぎって夜伽か!すまない、必要ない!」
「…お気に召しませんでしたか?」
「そ、そうじゃない!ただそんな事したらシルビア達が怖いからな!」
…最悪死人がでそうだ…。
ぽかんとする女性。
「ふふっ、ヴァンドラ様は噂とは程遠い方ですね」
口元に手を当て笑う女性。
「う…噂…?あぁ先代ヴァンドラの話かな。」
「失礼致しました。御無礼お許しくださいませ。ではごゆっくりお休み下さい」
青い光から退出する女性。
「…ふぅ。」
焦ったな…。国語辞書で蛍光ペン付けて遊んでた記憶がここで役に立つとは…。
「俺も寝るとするか。さっそくこの寝具試してみよう。」
寝具に寝転ぶフューゼ。
「おぉぉ…!これは…。」
あれだ…人をダメにするソファ…。あれの最強版…うん…語彙力低下するこれ。
あ…温かくなってきた。いい匂いもする…。これは……。
フューゼの意識はここで遠のいた。
一行が眠りについたその頃
ホープは船でガルルグルと共に地獄拷牢で遊んだりギルドスライムを味わっていた。




