思わぬ衝突
「…まずいことになったな。」
フューゼ一行を前に武器を構える人族達。
「ヴァンドラのクソ共…!ガルルグルを引き連れ侵略にきたか!」
ガルルガルの群れを引き連れギルドランドに入ろうとしたフューゼ達を見てギルドランドの民は臨戦態勢に入っていた。
「侵略なんてそんなことしないぞ。」
「ヴァンドラなんぞ信用ならん!」
「それだけのガルルグルを引き連れどの口が言うか!」
「どうやってガルルグルを懐柔したんだ!」
人々がフューゼに詰め寄る。
「…めんどうですね」
ナイフを取り出そうとするシルビア。
「お、おい余計こじれるからやめてくれシルビア!」
ハッとしたあとにしょんぼりするシルビア。
「も、申し訳ございません…」
その時だった。
「おいおい、なんの騒ぎだ?」
上陸時フューゼ達の案内をしてくれた男が群衆の後ろから現れた。
「と…!いや、ヴァンドラのヤツらが攻め込んできたんですよ。」
一瞬驚いた表情を見せた人族が状況を説明する。
「あーなるほどな。俺が話しを聞いてくるから解散しろ解散。」
「し、しかし!」
「大丈夫だ。それにヴァンドラのあいつらは今回の大会参加者だ。」
ざわざわする群衆。
「とりあえず解散だ。文句あるやつは大会にでるといい。今日までなら参加間に合うぞ。」
男の一言で群衆は様々な表情をみせながら解散した。
…あの集団をコントロールするなんてやはり只者じゃないな…。
「悪いな。皆血気盛んで。」
「いや、いいんだがお前は一体何者なんだ…?」
「カカカッ!俺のことはいいじゃないか!それよりこのガルルグルは…?」
答えないか…。身を明かすのは嫌なのか?
「ガルルグルか…突然モナに懐いてな。」
「モナ?」
「あぁ。」
モナをちらりとみるフューゼ。
「モナだよ…」
自分を指さしながら男を見上げるモナ。
「突然懐いた…それにこんな餓鬼にガルルグルが…。ヴァンドラはやっぱり読めねぇなー!」
大笑いする男。
「ただガルルグルはヴェグル洞窟の魔物だ。俺も洞窟外で出会ったのは初めてだ。」
「俺も先程知ったがガルルグルは洞窟からでない習性らしいな。」
「あぁ。だからギルドランドにとって異常事態だってことはわかるか?」
フューゼを真っ直ぐ見つめる男。
「わかるぞ。」
「そいつぁよかった。それでさらに言えばガルルグルは俺らギルドランドからすれば討伐対象でしかない。」
「…排除したいってことか?」
グルルと低く唸るガルルグル。
モナがそれを制止する。
ちらりとその様子をみる男。
「お前らはそいつらをどうしたいんだ?」
「連れて帰る予定だ。」
「…わかった。なら先程の事情を踏まえてガルルグルはギルドランドに入れないで欲しい。誤討伐を防ぐためにもお前らの船においてほしい。」
「…モナいいか?」
モナに振り返るフューゼ。
頷くモナ。
「わかってくれるか。付け加えるようで悪いが先程のギルドランドの民も許して貰えないか?人族でヴァンドラに思うところがあるヤツらも居ただろうが異常事態で戦闘狂の血が騒いじまったんだ。もちろん大会にでるヤツや後から挑んでくるヤツはぶちのめそうが構わない。」
「……船に連れていけばガルルグルには手を出さないってことでいいか?」
「ヴァンドラ船内のガルルグルには手を出すなと伝えておく。」
「わかった。皆、1度船に戻るぞ。ギルドランドの奴らは決闘を申し込まれたりしない限りはこちらからは手を出すなよ。」
「今代のヴァンドラは話しがわかるな!」
「なに?」
「いやいや、ありがとな」
そう言うと握手を求める男。
「馴れ馴れしいですよ」
「シルビア、いいから。」
握手を受けるフューゼ。
…ん?何か手に感触が…。
フューゼが手のひらを確認すると月明かりに照らされる花の絵が描かれたカードが1枚。
「お詫びといっちゃなんだが滞在中はそこの宿“ 月光牡丹”を使えるようにしておく。」
「…月光牡丹?」
「あぁ。気にいると思うぜ。大きな建物だからわかると思うが道がわからなければお前達に付けている名無しに聞くといい。」
広い宿か…。
どんな所だろう。
「わかった。ちなみにこのカードはなんだ?」
「それは受け付けで見せれば大丈夫だ。まぁゆっくりしてくれ。」
ニカッと笑うとギルドランドの中へと戻っていく男。
「お前達の試合楽しみにしてるぜ。」
そのまま片手を上げ歩き去っていった。
「何者なんだろうね?あの人」
首を傾げるアリス。
「…まぁいずれわかるじゃろ」
「そうだな。今気にしてもしょうがない。聞いてたと思うが宿を手配してくれたらしい。とりあえずガルルグルを船に連れていくぞ。」
フューゼ一行はガルルグルの群れを連れ海流船へ向かった。