不安定な魔力
「焔剣!!」
フューゼが剣を振るう度にクルネヴァが焼き斬れていく。
「……だいぶ片付いてきたようじゃな」
フューゼ、リヴィアの攻撃によりクルネヴァの壁はかなり削られていた。
「ちびモナ、大丈夫か?」
リヴィアが振り返り問いかけるが俯いて返事をしないモナ。
「モナ……?」
「このままじゃだめ……このままじゃ……」
ぶつぶつと呟くモナ。
「どうした…モナ?」
「このままじゃ…ダメなの!」
勢いよく顔を上げクルネヴァを睨む。
そして両手をクルネヴァに向ける。
「お願い!フューゼの魔力……!!モナに力を貸して……!!」
モナが思い切り叫ぶ。
「どうしたんじゃモナ……!?」
「お願い……!お願い!!」
「これは……!」
モナの魔力が上がっていく……。
何をしようとしとるんじゃ!?
「くぅぅぅ……!!」
モナの前に直径60センチ程の炎球が浮かび上がる。
「いけ…………っ!!」
モナが魔力を思い切り込める。
すると炎球はゆっくりとクルネヴァにむけ進み出した。
「ヴァンドラ!モナに寄れ!そして私様の後ろに!!」
「……わかった!」
モナの前に飛び出すリヴィア。
フューゼはモナを庇うように横についた。
「エクシス・クルァーベ!」
両手を横に伸ばすリヴィア。
水魔法が広がり、膜のようにフューゼ達を包み込む。
そしてモナの放った炎球はクルネヴァの前に到達すると一瞬収縮した。
そして
ゴガォォォン!!
轟音が響く。
収縮した炎が炸裂し、クルネヴァの壁を焼き飛ばした。
「……ちぃ!」
魔力を全く制御できとらん……!!
「何をしたんだ!?」
目を大きく開くフューゼ。
「……先程と一緒じゃ!魔力の暴走じゃ!!」
「モナは大丈夫か!?」
「フューゼ……リヴィア……ごめんなさい」
息を荒くし、俯くモナ。
……今回は倒れたりしないみたいじゃな。
少しは制御出来たということか……?
それにしても魔力の回復も早いな……。
「……モナよ、何を焦っておる。」
振り返りモナを見つめるリヴィア。
「ごめんなさい……。みんなに…置いていかれたくなくて……」
「だからといって使えもしない力を無理矢理使ってどうする?ここが頑丈で広いヴェグルだからよかったものの崩れたりあの魔法で私様達が死ぬ事も考えたか?」
「ごめん……なさい…」
力無く俯くモナ。
「リヴィア…モナも反省してるみたいだから…。」
「甘い……いや甘すぎるぞヴァンドラ。仮に私様達の誰かが死んでみろ。取り返しはつかんぞ」
「そうかもしれないが……。」
「それにそれで1番傷付くのはモナじゃ。仲間を手にかけるんだからな。意図せずに」
「いや……!そんなの……モナ……!!」
ボロボロと泣き出すモナ。
高く細い声で鳴きながらモナに寄り添うガルルグル。
「……しっかりとしろモナ。後悔したくないなら力に踊らされるな。力は使うもので使われるものでは無い」
「わかった…。ごめんなさい、リヴィア、フューゼ」
「ヴァンドラも甘くしていいところを間違えるな。私様の夫じゃろ」
「あぁ……悪かった。……って待て!夫はやめてくれ!」
「ふふっ」
「おっ、ちびモナも少しは元気になったか?」
「う、うん……。ありがとう」
「……まだまだ使いこなせてはおらんがかなりの威力じゃったぞ?なぁヴァンドラ」
「あぁ!そうだな。見ろモナ、壁がなくなってるぞ。」
フューゼがクルネヴァが居たところを指差す。
そこには壁はなく、道ができていた。
「ほんとだ……!ちゃんと使いこなせるように……頑張る…!」
「その意気じゃ!さぁ、出口に向かうぞ」
「…………。」
甘すぎる……か。モナのためと思っている事も
逆に苦しめる結果になるかもしれないな……。
リヴィアの叱咤激励によりモナは元気を取り戻し、
またフューゼも己が甘さを再認識していた。




