鳴命石
ガルルグルを置いて進んでいた一同。
リヴィアが何かを見つける。
「ん……あれは…?」
「どうした?リヴィア。」
「……ヴァンドラよ、このヴェグルの異変理由がわかったかもしれないぞ」
「何!?教えてくれ!」
「あそこにある淡く光る白い魔鉱石は見えるか?」
リヴィアの指差す先に台座のようなものがあり、
その上に複数の白い石がのっていた。
「あぁ……。あれは?」
「鳴命石。その製法から世界的に禁じられている禁断の魔鉱石だ」
「鳴命石……!?なるほどそれで……!」
驚くシルビア。
「鳴命石……?どんな魔鉱石なんだ?」
「簡単にいえば魔物避けの魔鉱石じゃ」
「魔物避け?それで洞窟の生物が少ないのか。でも何でそれが禁じられているんだ?どんな製法なんだ?」
はぁ、と小さくため息をつくリヴィア。
「……小娘、やはり私様は説明は好かん。これ以上はめんどくさい。説明できるか?」
「え?はい。ヴァンドラ様、私から説明してもよろしいですか?」
「あぁ。頼む。」
「鳴命石、1つにつき1種族の魔物に対し効果のある魔物避けです。製法としては対象の魔物を生かしたまま髄液、血液を死なない程度に抜き、それを混ぜたものを大きめの鍋等にいれ、そこに混沌輝石を沈めます。そのまま半日ほど経つと第1段階の準備は完了です」
「……その段階でも結構すごいな。それでどうするんだ?」
「はい。その後混沌輝石が光り出したら生かしておいた魔物をそこに沈めます。ここまでにその魔物が息絶えていた場合初めからやり直しです。あとはその魔物が溶けるまで煮込み、そのまま数日煮込み続けると鍋には鳴命石が出来ている……。ということです」
「思ってた以上にひどい代物だな。だがどうしてそれが魔物避けになるんだろうな。」
「それはわかりません……。何故このような作り方を試したのか、そして何故効果があるのか……私の知識ではこれ以上は……」
しょんぼりとするシルビア。
「いや、わかりやすかったよ。ありがとうシルビア。」
フューゼがシルビアの頭を撫でる。
「ヴァンドラ様……!」
「流石じゃな小娘。鳴命石についてここまで説明出来る者もそう多くないぞ?」
にやりとするリヴィア。
「でも、何でそんなものがこんなところにあるの?」
首を傾げるアリス。
「まぁ、誰かがここで精製して置いたんじゃろうな。目的まではわからんが奥の魔石でも狙ったんじゃろう」
奥を見つめるリヴィア。
「しかし、かなりの手練だと思うぞ。ヴェグルの生物を鳴命石にするのは簡単な事じゃない」
「確かに行程をきくかぎり難しそうだな。」
「さらにクルネヴァも近くにおらんという事はクルネヴァも鳴命石にされてるということ……。この洞窟に大きな鍋を持ち込むとも考えられんから生きたまま小さくするスキルでも持っているのか……」
「クルネヴァって大きかったもんね。どうやったのかなー」
「方法はさておき、この先にその犯人がいる可能性が高いな。どうする?ヴァンドラ」
「……進もう。ここまで来たら奥まで行く。」
「そうか、ならば覚悟は決めねばならんな」
「大丈夫だ。ここからは俺が皆を守る。付いてきてくれ。」
……この先は危険だ。
鳴命石をここの生物で作れる人物…。
強いのは間違い無い。
敵対してきた場合は躊躇せず倒す。躊躇せずに…だ。