VSクルネヴァ
キチチチチチ……
赤い光の方向から不快な音が鳴り続ける。
暗くて怖い……。
でも集中しなくちゃ……!あの糸は危ない……。
シュッ!!
微かな音がしたかと思うと
糸が勢い良くモナに向け放たれた。
「くぅっ……!」
間一髪躱すモナ。
「モナ!危ない!!」
「え……?」
糸を躱したモナが目線を糸から洞窟の奥へと
戻すと黒く長い脚がモナに襲いかかってきていた。
「あぅ……!」
咄嗟に両手で防ごうとしたが
脚から地面に叩きつけられるモナ。
「モナ!!」
シュッ!さらに倒れたモナの足に糸が絡みついた。
駆け寄ろうとするフューゼ。
片手を伸ばしリヴィアが止める。
「地獄炎壁!」
モナが手を伸ばすと地面から炎の壁が吹き出し
糸を焼き切った。
「モナ……!糸を切れたのか……!!」
少し安堵するフューゼ。
「地獄炎壁を簡易詠唱で……。さらにあの糸を焼き切る程の威力とは……」
驚くシルビア。
「モナも成長しているということじゃ。さぁ油断するな!モナ!」
「うん……!地獄鞭!」
モナの手に地獄鞭が握られる。
「地獄鞭までも簡易詠唱……!!」
モナ……成長速度が早い……。いや、早過ぎる…。
ブン!
暗闇からモナを突き刺すように脚が伸びてきた。
「……ゃあ!」
地獄鞭で迎撃するモナ。
パァン!
と破裂音が鳴りクルネヴァの脚に直撃する。
ジジジジジジっ!!
何かを擦り合わせるような音がする。
赤い光が大きく動き続ける。
「効いてる……?」
ここで攻めなきゃ……!
暗くて見えないなら明るくすれば……!
「地獄炎壁!」
モナが洞窟の奥に手を向ける。
奥の壁から炎の壁が吹き上がり周りを照らす。
キシャァァァァア!!ギチチチチチチ……!
炎に照らされてクルネヴァが姿を現す。
威嚇する様に脚を大きく掲げ赤く光る眼で
モナを見据え鋭利な牙を露出させる。
「でかい……!!」
予想通り蜘蛛には似ているが脚の長さが異常だ…!
曲げている状態でも3mはあるんじゃないのか!?
よくみると前の2本は先端が尖っているし
刺されたらひとたまりもないぞ……!!
それにあの牙……。この距離でもハッキリ見える…。
相当でかいぞ……。
「もえて…!」
地獄鞭を振り回すモナ。
ギチチチ!!
クルネヴァも長い脚で応戦する。
ジジジジジっ……!!
嫌がるような素振りを見せるクルネヴァ。
「攻める……!!」
モナが踏み込んだその時クルネヴァが
2本の脚で襲いかかる。
咄嗟に弾こうとするが1本しか捌く事が出来ず
吹き飛ばされるモナ。
「くぁぁ……!!」
「ぐっ……!」
フューゼが駆け寄ろうとするが
リヴィアの腕に阻まれる。
「信じられんのか?ヴァンドラ」
「信じてる……信じてるが……!」
「信じる。ということは苦痛を伴うんじゃ。危険な状況でも奴なら大丈夫、そう信じるのは容易いことではない。特に自分より弱い者なら特にな」
「弱いって……。」
「事実じゃ。お前よりモナは強いのか?強くないだろう。ましてや今まで単に守るべき存在だった者を信じ抜くのは苦痛に等しいだろう」
「リヴィア……。」
「モナが選んだのは守られる道じゃないんじゃ。モナにとってもここは己の力のみで越えねばいかんのじゃ」




