次なる試練
「どうした!アリス!シルビア!」
「フュ、フュゼ様ー!」
走って逃げてくるアリス。
「何があったんだ?」
「あ、あれ……」
アリスが指を差す。
そこには8つの赤い光が浮いていた。
「何だあれ?魔鉱石か?」
「ち、違うのフュゼ様……あれは…」
その時シルビアがフューゼ達の元へ
走ってきた。
「シルビア!大丈夫か!?」
「はい。大丈夫で…っ!!」
バタンと倒れるシルビア。
「シルビア!?」
「くっ……!!この……!」
必死にナイフで足元を切りつけるシルビア。
その様子を見てフューゼが走り寄る。
「これは……!?」
白い何かがシルビアの足に絡みついてる……?
その瞬間だった。
シルビアが急に暗闇へと引き摺られていく。
「くぅ……!!ヴァンドラ様…!!」
手を伸ばすシルビア。
「シルビア!!」
その手を掴むフューゼ。
「ぐおおっ……!!」
何だこの力……!!何かがシルビアを引っ張ってる!
このままじゃシルビアが危険だ……!!
シルビアの足の方へ片手を向けるフューゼ。
「燃えろ!!」
シルビアの足元に炎の壁を作り出し、
白い何かを焼き切った。
そのままシルビアを抱き上げるフューゼ。
「シルビア、大丈夫か!?」
「ご迷惑おかけ致しました……。すみません」
「気にするな。何があった?」
「はい。実は……」
「クルネヴァじゃな」
リヴィアが割り込む。
「リヴィア……!」
「クルネヴァ……?何だそれ?」
「大きな虫型の魔物じゃな。極端に長い脚と3節の体からなり尻から粘着性の糸を出す」
糸を出す虫……?3節らしいが蜘蛛みたいなものか?
「シルビア、そのクルネヴァが居たのか?」
「この目で見たのは初めてなのですが…先祖返りの記憶と照合すると間違いないかと…」
「……強いのか?」
「資料上の知識しか持ち合わせておりませんが…強いと思われます…」
「ヴェグル洞窟では上から数えた方が早い部類じゃな。そこにおるガルルグル等は奴にとってはただの餌じゃ」
シルビアの足に巻き付く糸を見て怯えている
ガルルグル。
「大丈夫だよ……。モナに任せて」
ガルルグルをぽんぽんと撫でると前へと
進み出すモナ。
「モナ!?どうする気だ!?」
「モナ1人で倒すよ」
「……本気か?相手はガルルグルと比べ物にならんぞ」
モナを見つめるリヴィア。
「本気。逃げたらモナは……変われない…」
無言で見つめるリヴィア。
唐突にモナの手を握る。
「ひぁっ…!」
「震えておるぞ?ちびモナ」
からかうように笑うリヴィア。
「ふ…ふるえてない…」
「怖いか?」
モナの瞳を覗き込むリヴィア。
「怖く……ない」
「怖い…という感情は悪いことではない。こんな環境で強い生物と対峙して突っ込むのは勇猛ではなくただの無謀じゃ」
「むぼう……」
リヴィアを見つめるモナ。
キチチチチチ……
何かが擦れ合うような不快な音が響く。
「…っ!」
その瞬間洞窟の奥に振り向くモナ。
赤い光は変わることなくこちらに向いている。
「……話し合っている時間はないな。モナ、奴は見えるか?」
「……赤い光なら…」
「そうか。小娘を捕らえた奴の糸には気を付けろ。ヴァンドラの魔力だからこそ造作なく切れたがガルルグルを捕食する奴の糸は耐熱性があるぞ。生半可な炎属性魔法で逃げ出せると思うな」
「わかった…」
洞窟の奥を見据えるモナ。
「それともう1つ。あの赤い光に惑わされると死ぬぞ。ちびモナ」
「ありがとう……リヴィア…」
くるりとモナに背を向けフューゼ達の方へ
戻るリヴィア。
「リヴィア……!貴方何てことを!」
「リヴィア!モナを1人で戦わせる気か!?」
「小娘、ヴァンドラ。モナの決意は本物じゃ」
「だからと言って実戦経験の少ないモナをこんな環境でクルネヴァと戦わせるなんて!本当に死にますよ!」
「死の覚悟も出来ぬ者が強くなれる訳が無いだろう。そして死線をくぐり抜けた者のみが強者となれる。」
シルビアを真っ直ぐ見るリヴィア。
「シルビア、お前もそれをわかっているだろう?なんせ私様に挑むくらいには強いのだから」
「くっ…………しかし…」
「信じてやれ。そして見届けろ。」
モナの方へ振り返るリヴィア。
「シルビア……信じよう。」
「ヴァンドラ様……!」
「俺達がモナを信じないでどうする。」
「………………わかりました」
シルビアもモナを見つめる。
モナを信じる……。信じてる。
だけどもしもの時は俺がモナを助ける……。
助けるんだ。




