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今年中には完結を目指しています。実は最終話は出来上がってしまっています。
「綾乃様。今の生徒会と学園の状態はよくご存知だと思います。率直に申し上げますわ。まだ宮脇様の婚約者という立場上いずれゴタゴタに巻き込まれてしまうと思われます。宜しければ避難を兼ねて海外留学しませんか?」
来るべき日に向けて画策していた私は、こるから起こる学園一大スキャンダルから婚約者の彼女たちを守るべく動き出した。
まずは神宮寺綾乃様。
「わたくしは逃げも隠れもしませんわ。幼い頃からのお付き合いですもの。康孝様の行く末を見届けたいと思います」
やはり綾乃様は素敵だ。
康孝様に対して愛情はないんだろう。けれど婚約者としての責任感故か…。
でも綾乃様は、これからの未来を見ていって欲しい。
だから、とっておきの情報を開示する。
「綾乃様。今フランスで起業して、その業績に注目されている若き実業家をご存知ありませんか?」
私の問いかけに怪訝な表情を隠そうともせず逆に質問される。
「生憎不勉強なため存じ上げませんが、それが何か…?」
「その方の名前は櫻井和友様とおっしゃいます。綾乃様…もちろんご存知ですわね?」
その名前を耳にした途端、綾乃様は泣き笑いのような表情を浮かべいた。そのうち、美しい双眸からハラハラと涙が零れ落ちだした。
「そう…和友様が…フランスに…」
しばらくハラハラと涙を零されていたが…今までの厳しい表情から穏やかな表情に変わっていた。
「初恋の君ですわね?康孝様と婚約される前の…。お互いに思いあっておられたのに神宮寺家の意向で…。
こういう状況ですもの。櫻井様を認めざるをえなくなると思いますわ。康孝様が後継者ではなくなったならば…。
以前、綾乃様は康孝様の弟君でもいいようにおっしゃっていましたが、神宮寺家としても一度土がついた縁談より成長株の方をとると思いますわ。いいえ、私がとらせます」
力強く言い切る。
「でも…一度反対されたし、和友様とはもう何年もお会いしてません。まだあの頃と同じ気持ちでいてくださっているか…」
綾乃様…恋する乙女の戸惑いですね。
いつもは凛とした美しさの綾乃様が、今は可愛い女の子になっています。
「では和友様の気持ちを確かめに行きましょう。思い切って今の綾乃様の気持ちを伝えてみましょう」
和友様の気持ちはリサーチ済みです。
それは綾乃様には秘密です。
まだ不安みたいだったけれど私の一言で前向きになってくれた。
「駄目でも粘って粘って粘り勝ちするんですよ」
笑ってくれた。
駄目なことはないんだからね。
ずっと和友様が恋人も作らず仕事に没頭していたこと。
綾乃様を忘れられなかったこと。
神宮寺家に和友様の会社のことなど報告済み。
あとは綾乃様の決意だけだった。
これで綾乃様は初恋の君と幸せになれるだろう。
今まで努力してきた綾乃様には幸せになって欲しいと思う。




