あ
「あ」
誰かが言った。
その声を聞いたすべての生き物が、「あ」と言った。
でも、わたしは言わなかった。
言えなかった。
わたしは生き物じゃないから。
じゃあ、わたしは誰かな?
当ててごらんよ。
今から、さ。
ヒント出すから、さ。
ヒント1
わたしは生き物じゃ、ない。
ヒント2
わたしは歩けない。
ヒント3
わたしはしゃべれない。
・・・分かった?
分かるはずないよね。
じゃあ、バージョンアップするよ?
ヒント1
わたしはいつも、外にいる。
ヒント2
わたしはいつも、見える。
ヒント3
わたしはいつも、足を見る。
・・・分かった?
分からないかもね。
じゃあ、バージョンアップするよ?
ヒント1
わたしはいつも、踏まれる。
ヒント2
わたしはとても、広い。
ヒント3
わたしはとても、かたい。
・・・分かった?
そろそろ分かるころだよね。
じゃあ、バージョンアップするよ?
・・・答え、言うよ?
答えは・・・
じ
め
ん
地面でした。
わたしは、地面でした。
分かった?
分かったよね?
分からなかった?
・・・えぇ?
分からなかったら・・・
お仕置き・・・だよ?
あーあ、残念だったね。
じゃあ、バージョンアップするよ?
お仕置き1
わたしをふまないでねぇ?
お仕置き2
わたしと友達になろうねぇ?
お仕置き3
わたしをお手入れしてねぇ?
・・・約束だよぉ?
約束、やぶったらぁ・・・
分かるよねぇ?
お仕置きだよぉ?
じゃあ、バージョンアップするよ?
お仕置き1
わたしに逆らわないでねぇ?
お仕置き2
世界中のわたしと、仲良くしてねぇ?
お仕置き3
世界中のわたしを、お手入れしてねぇ?
・・・分かった?
じゃあ・・・、答えられた人ぉ。
・・・えぇ?
答えられたのぉ?
・・・本当にぃ?
・・・そう。
じゃあ、バージョンアップするよ?
お礼1
わたしを踏んでも、いいよぉ?
お礼2
わたしと友達になっても、いいよぉ?
お礼3
スカートの時、目つむってあげよっかぁ?
うふふ・・・。
いいお礼でしょぉ?
他の人のスカートの中身、見えちゃって困るんだよねぇ。
答えられなかった人ぉ。
スカートはくのはやめた方がいいよぉ?
・・・気を付けてねぇ?
他のモノたちも、みぃんな、あなたを見てるよぉ?
うふふ・・・。
あぁ、楽しかったぁ。
こんなにしゃべったのは久しぶり。
あ、しゃべったんじゃなくて、話したんだぁ。
うふふ・・・。
間違えちゃった。
うふふ・・・。
うふふふふ・・・。
あぁ、もう話すのは終わりかなぁ。
もう一度・・・
人間になりたいなぁ。
ねぇ・・・あなた
変わってくれるぅ?
そして・・・・さぁ
あなたが今度は、地面になるのぉ。
ねぇ・・・?
面白そうじゃない・・・?
さぁ・・・変わってよぉ・・・。
わたしを人間にしてぇ・・・?
ねぇ・・・?
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
ほらぁ・・・みんな・・・みぃんな・・・
歓迎してるよぉ?
さぁ、おいでぇ?
そして・・・さぁ。
地面になってよぉ・・・?
痛いよぉ?
でもねぇ・・・
またわたしみたいに・・・
もどれるかもしれないからねぇ・・・?
でも、あなたのカラダは・・・
わたしのものだからねぇ・・・?
もう、返せないから・・・
ねえ・・・?
じゃあ、もらっとくねぇ。
あっ・・・。
やったぁ・・・。
あなたのカラダ・・・
もらったよぉ?
これからは地面に優しくしてあげてくださいね♪
それから、お仕置きはちゃーんと実行してくださいね?
じゃないとぉ……
バージョンアップするよ?