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抜け出せない、
抜け出さなくていい。
ずっとここにいろ。
貴方は私のもの。
[toxic xxx is real luv……?]
始まりなんて知らない、要らない。
今があるから関係ない。
何もないかのような殺伐した空気だけど、燃える匂いが漂う。
互いに互いを挑発する目つきに捕らわれ、どちらともなく唇を寄せる。
「堕ちな」
女っぽさを棄てた私は吐き出した。
煙草のような苦さはない、貴方の甘い苺飴の味が舌にねっとりとつく。
気持ち悪い。
いっそ性別が逆転したらいいのに。ぴったりハマるはずのピースもこれだから不協和音。
貴方は女性的すぎる。
誘惑するのは貴方の役目、それを受け入れて押し倒すのは私の役目。
だけど噛みつくようなキスをさり気なくリードするのは貴方だ。
私だって溺れてる、貴方と同じように。それがとてつもなく気味悪い。
さいあく。声に出さずに口パクで伝えると、貴方は笑った。
勝ち誇ったような余裕のある目。
それが腹立たしくて、私はすんなりと上からどいた。
そして貴方の鞄から零れた苺飴を口にいれる。
萎えた、そう告げれば、わざと作った残念そうな顔で苦笑する。
「やだ、寸止め?生殺し?」
そう言って押し倒される。立場逆転。
「ムードの欠片もない」
鼻で笑って体を退かす。始めから貴方は本気じゃない、だから簡単に身を引いた。
貴方が喉の奥で笑う表情に苛ついて、喉元に噛みついた。
勝ったと思うなよ。そういう意味を込めて睨み付ける。
そんな私を引き離し、荒々しく口付けた貴方は眉を潜めた。
「甘っ」
「アンタの飴」
「そっか、でも好きだよ」
似てるでしょ?なんて、言われなくてもわかってる。
貴方の香水の甘ったるい匂いに似ているんだ。
高いシャツに顔をうずめれば、貴方の匂いに包まれる。
良い匂い、とはお世辞にも言い難いけれど、それに慣れてしまって許せるのは溺れてる証拠。
「じゃあ私もアンタの匂いだ」
「既にね」
それなら私は何で貴方を繋ぎ留めよう。
安っぽいアクセサリーや、情事の痕なんて女らしいことしたくない。
私だけの檻に閉じ込める。
アンタと私は同じ目だ。
そう口角を上げると、貴方はすっと目を細めた。
「そう、既にね」
その言葉に安堵する。ちゃんと貴方は私に繋がれてる。逃げ出すことは出来ない、と。
だけどそんな表情見せたら、相手が調子に乗るから余裕なように見せる。
もう一度噛みつくようなキスをする。そこから綺麗な首筋に舌を這わせれば、細やかに震えた。
吐き出された色めいた息に、私はニヤリと笑う。
「堕ちてるよ、アンタは既に」
「知ってる」
羽根をもぎ取られて、首を綺麗な首輪で繋がれた哀れな鳥みたいに。
「限界?」
「限界」
即答するから可笑しくて。そんなに余裕の無い人だっただろうか。
「じゃ、やめようか」
薄ら笑いに薄ら笑いで返す貴方。
「お前も、だろ?」
「ふうん、良く分かってんじゃん」
まあね。得意気な表情に、少しだけ嬉しくなって。
鎖骨に歯を立てて、合図。
やっぱりそこらの女みたいに、爪の痕と鬱血の痕を残す。
だけどやっぱり違うのは、始終余裕な目、挑発的な目。私も貴方も。遊んでいるような表情。
私はアンタのもの、
じゃなくて
アンタは私のもの。
「うん、俺はお前のもの」
貴方は嬉しそうに笑うんだ。
(u r my psychological ciggy)