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白銀の翼  作者: 烏丸
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第9話 家族の絆

「おはよう ロイ。もう朝ですよ。」



「ん?おぅ…」



レオの自室を使って一晩アルベルト家に泊まった二人は朝を迎えた。


ロイが目覚めてすぐ 部屋の扉をノックする音が響く。



「レオ様 ロイ様 お食事の準備が出来ております。」



執事のサムソンが部屋の外から声をかける。

二人は返事を返すと すぐに食事部屋へと向かった。



「おぉ~!すげぇ!これが朝飯かよ!?」



大きなテーブルの上には 豪華な器が並べられ 彩り鮮やかな 高級料理が盛り付けられていた。

庶民的料理や狩りの獲物しか口にしたことがないロイにとっては まるで違う世界が広がっているように感じられた。



「お気に頂けたようで よかったです。さぁさぁ 冷めないうちに お召し上がりください。」



ロイの歓喜の表情に サムソンは満足気な様子だ。


食事が始まると レオは さすがの育ちの良さから 上品に料理を口に運んでいく。

一方のロイは まるで好きなお菓子に貪りつく子供のように 豪快に 次々とたいらげていた。

流石に その下品極まりないロイの食事に サムソンは苦笑いを浮かべていたのであった。



食事が終わり 部屋を出ようとした二人に 後ろから声がかかる。



「おい!クソ兄貴!また家を出て行く気かよ!?」



アルベルト家 三男のキラだ。

その表情には怒りの色が見える。



「すみません。私はもう白銀の翼の一員。戻らなければいけません。」



「随分勝手な話しだな!白銀の翼だかなんだか知らねぇが その前に お前はこのアルベルト家の長男だろうが!!

それでも出て行くって言うなら俺を倒してから出ていけ!」



キラの表情は真剣であった。

キラにとっては レオが父親を見捨てて行くように感じていたのだ。


その怒鳴り声を聞きつけ ライルが慌てて部屋の中に飛び込んで来る。



「またか キラ!いい加減にしろ!兄さんは この家を見捨てて行く訳ではない!兄さんには兄さんの生き方があるんだ!」



「…んなこと知らねぇよ!!こいつだけは許さねぇ!」


ライルの言葉にも聞く耳持たず キラはレオを睨み付ける。

その光景を見ていたロイは我慢出来ずに口を開いた。



「なんだよ お前?レオが この家を見捨ててるって言うなら わざわざ戻って来ないだろ!レオは親父さんが病気だって聞いた時 すげぇ悲しそうな顔してたんだぞ!きっと家を出たことを後悔してるはずだ!」



一瞬ロイの剣幕に圧され キラは言葉に詰まる。


その時 レオがロイの肩に手を置いた。



「ありがとう ロイ。でもこれは 内の問題です。

キラ!それほど言うのなら相手になりましょう。」



「兄さん!!」


レオの意外な言葉に ライル ロイ サムソンは驚きの表情を浮かべる。

当のキラさえ 驚きを隠せないでいた。



「どうしたんです?やらないんですか?」



「やるよ!いい度胸じゃねぇか!!」



キラは威勢よく叫ぶと ズカズカと外へと向かっていった。

その後をレオは颯爽と追っていく。

残る三人も戸惑いながら 二人の後を追った。



アルベルト家の屋敷の裏には 家2 3軒分はあろうかという 広い魔法練習場が広がっていた。

ここでレオとキラの兄弟が対峙する。



「先に言っておきますが 決闘となると いくら家族といえど 手加減はしませんからね。」


レオの目 表情から今の言葉は本気だということがわかる。



「ハッ!そりゃこっちだってそうさ。手加減する気なんて これっぽっちもないぜ!」



キラはそう言い放ちながら 両手を体の前に動かし 魔力を溜め始める。

既に戦闘態勢万全と言ったところだ。


一方のレオは 動こうとはせず 仁王立ちのままであった。



「ライル。開始の合図を。」



レオはキラを真っ直ぐ見据えたまま ライルに指示を出す。

あまり納得のいっていないライルは 一瞬躊躇うが 諦めたかのように右手を高々と上げる。



「………始め!!!」


開始の合図と共に 勢いよく走り出したのはキラ。キラの両手の間には赤い光りが輝いている。




『ファイヤーボール』



キラが両手をレオに向けると そこから燃え盛る火球が放たれた。



魔導師にはそれぞれ適性属性という物が存在する。基本は その適性属性の魔法しか使えないことになるのだ。

しかし 中にはいくつもの適性属性を持つ魔導師もいる。


このことからレオは雷の魔導師だが 弟のキラは炎の魔導師のようだ。



放たれた火球は勢いよくレオに迫る。

火球が寸前まで迫った時 初めてレオが動いた。



『スパーク』



レオは自分の体だけを避け 周りに雷撃を対流させる。

すると 雷にぶつかった火球は跡形も無く消え去った。



「速い……」



二人の決闘を眺めていたライルは 驚嘆の声を漏らす。


本来魔法の発動は魔力を溜めて 魔法の形 威力 効果を形成してから 放出するものなのだ。

しかし今のレオの魔法は その形成部分があまりにも速かったのである。



「止めなくていいのか?」



ライルを横目にロイが口を開いた。



「こうと決めた兄さんには 何を言っても無駄さ。」



ライルは諦めたように そう呟く。

ロイにも身に覚えがあることなので納得したように頷いたのだった。



「もう終わりですか?」



魔法を呆気なく防がれ 呆然とするキラに レオが声をかける。



「そんくらいで調子に乗ってんじゃねぇよ!」


キラは再び魔力を溜め始める。

それに反応し 今度はレオも魔力を溜める。



『フレイム・バレット』



『ライトニング・スター』



二人の魔法がぶつかる。

キラの魔法は 激しい炎の弾丸が散弾の如く飛び交う。

一方のレオの魔法は 大きな星形の雷が飛ぶ。


激しくぶつかった両者の魔法は相殺し 辺りに強い衝撃波と爆煙が広がった。

強い魔力の衝突により 発生した衝撃波で サムソンは地面へと転がる。

しかし ロイとライルは微動だにすることなく 戦況を見守っていた。



「俺の魔法と相殺するとは 中々やるじゃねぇか クソ兄貴。だが まだまだ勝負はこれから……!!」


広がる爆煙の中 キラの視界に突然レオが飛び込む。



「いいえ 終わりです。」



レオの手には既に強大な魔力が込められていた。



『ライトニング・ブラスト』



レオの手からは強大な 太い光線状の雷撃が放たれる。

視界の悪い状態で 至近距離から放たれた為 キラには防ぐ術がない。


見事に直撃され キラの体は枯木の様に宙を舞う。

キラは既に意識が無く そのまま地面へと落ちていったのだった。



―☆―

キラが目を覚ますと そこは自室のベッドだった。



「キラ 大丈夫ですか?」



声のする方へ視線を移すと そこには椅子に腰掛けたレオの姿があった。



「兄貴…」



キラの意識が戻ったことを確認すると レオはニッコリ微笑む。

しかし キラは複雑な表情を浮かべていた。



「なんだよ?勝ったんだから さっさと出て行けばいいだろ。」



キラは不機嫌そうにそっぽを向く。

そんな姿を見て レオは少し困った顔をしながら口を開いた。



「少し話しをしたいと思いましてね。」



「……………」



「…たしかに私はまた この家を出て行きます。

だけどそれは アルベルト家を見捨てて行く訳ではありません。

私は この家も父上もライルもキラもサムソンも みんなを愛しています。」



沈黙するキラを他所に レオはゆっくりと 語り出す。



「ロイの言った通り 正直 あの時勝手に家を飛び出したことは後悔しています。

もっとみんなと話し合うべきだった…

そのことは謝ります。すみません。

だけど 白銀の翼に入ったことは後悔していません。むしろ入って 良かったと思いますよ。

メンバーみんなの温かさや 人々の役に立てている事は本当に嬉しいことです。

けど私は アルベルト家のみんなのことを忘れた日なんて一度もありませんよ。

また家を出て行くことを父上とライルとサムソンは許してくれました。あなたは どう思っていますか?キラ。」



レオの問いに キラは複雑な表情を浮かべながら レオの方へ振り向く。



「俺は……俺だってわかってたんだ。兄貴が強制的に次期当主として育てられてきたことを…

兄貴はそれが嫌だったことも…

だけど…だけど俺はそれがわからなかった!俺は次期当主として期待されている兄貴が羨ましかったんだよ!だから家から逃げ出した兄貴を許せなかった!」



キラは瞳に涙を溜めながら 悔しそうに布団のシーツを強く握り締めた。



「すみません…」



今のレオには ただ謝ることしか出来ないでいた。

キラは涙を拭いながら そんなレオに笑顔を向ける。



「もういいよ。俺も親父と一緒で 兄貴の気持ちを考えてなかった…ごめん…

なんかスッキリしたよ。ありがとう。」



「それはよかったです。もし このアルベルト家に何かあれば私はいつでも力になりますから いつでも呼んで下さい。」



キラの笑顔に レオも笑顔で答える。


これでアルベルト家は全員が和解し 強い絆で結ばれたのだった。



ロイとレオがアルベルト家の屋敷を後にし 白銀の翼のアジトへ戻った数日後…

アルベルト家当主 セルゲイ・アルベルトは静かに息を引き取った。

その死に顔は なんの未練も感じない安らかな表情をしていたという。


葬儀には各国の著名人 そして白銀の翼のメンバー全員が参列していた。


終始 レオの瞳から涙が無くなることはなかった。


アルベルト家の新当主にはセルゲイの遺言通り アルベルト家次男のライル・アルベルトが就き 優秀な補佐役として 三男のキラ・アルベルトが就いたのだった。


大魔導師セルゲイ・アルベルト ここに眠る。

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